家族4人で1年に出すごみの量がわずかガラス瓶1本分(=1ℓ)という驚異の「ごみゼロ生活」を紹介する『ゼロ・ウェイスト・ホーム』。生活のシーンごとに実践的な取り組みが紹介されていて、興味のあるところや身近なところから少しずつ始めることができます。「日本でもできるの?」という疑問にお答えすべく、翻訳を手掛けた服部雄一郎氏による実践リポートをお届けしていきます!

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第3回 検証! わが家のごみ


◆いちばんゼロにしたいのは?

いよいよ今回は、“快適でうつくしいゼロ・ウェイスト生活”に向かって前進すべく、わが家のごみの中身を徹底検証してみたいと思います。

まず、いちばんゼロにしたい「燃えるごみ」について見てみます。環境省の統計によると、日本では今、一般家庭から出されるごみの約8割が「燃えるごみ」、つまり焼却処理されています。残りの約2割が資源物で、埋め立てに回る「燃えないごみ」は1パーセント程度に過ぎません。「燃えるごみ」は量が多いだけでなく、臭いなど衛生面の不快指数も高く、燃焼時にはダイオキシンなどの有害物質の発生源となります。燃えるごみをゼロに近づけることができれば、ごみ出しの手間も減り、暮らしの快適度も大幅にアップするに違いありません!


◆わが家の「燃えるごみ」の正体

わが家の住む高知県香美市では、「燃えるごみ」はこんな有料指定袋に入れます。

収集は週2回。わが家は既に生ごみ処理をしているため、燃えるごみの量は一般家庭に比べるとかなり少なめ。いちばん小さいサイズの指定袋でも大きすぎるくらいです。ただし、ふたりの子どもの夜のオムツが取れず、安眠優先&洗濯軽減のために紙オムツを使っているため、毎日2枚の紙オムツが出ます。結果、3~5日で指定袋がいっぱいになり、週1~2回のごみ出しが欠かせない状況となっています(妻は布ナプキン使用のため、生理用品のごみはほとんど出ません)。

さて、紙オムツ以外には一体何が入っているのか、勇気をふるってごみ箱を逆さまにし、すべての中身を洗いざらいチェックしてみました。出てきたのは、以下の品々です。


(左上から時計回りに)
宅急便の伝票などのカーボン紙、シール類(主に宅急便の集荷の控え)、ヨーグルト容器の内蓋などの銀紙、レシート、ガムテープ、シールの台紙(こちらもメインは宅急便の伝票の台紙)、


(右上から時計回りに)
ヨーグルトの容器、豆乳の容器、油揚げの油でギトギトのビニール、菓子パンの敷き紙、パンの袋についてくるタイ、輪ゴム、乾燥剤や脱酸素剤(食材棚の整理をしたため)


さらに(同じような写真ばかりで恐縮です)、


(右上から時計回りに)
綿棒、絆創膏、ティッシュ、絆創膏の包装(子どもが絆創膏が大好きなのです…)、短くなった鉛筆、マッチ(ろうそくや業務用ガスコンロの着火に使います)

さて、「燃えるごみゼロ」を目指すからには、これらの“大半”を撃退する必要があるわけですが、「あれ、これなら割にいい線行けるかな!?」なんて思ってしまった自分は楽観的に過ぎるでしょうか?


ちなみに香美市では、「雑がみ(ミックスペーパー)」、つまり、新聞雑誌段ボール以外の紙(=菓子箱やプリント、ハガキなどの雑多な紙類)の分別資源化が実施されていません。都市部では既に分別資源化が一般的になっていますが、ここ香美市の分別の手引きでは、これらの紙は「燃えるごみに入れるべし」となっています。でも、本来リサイクルできる紙を「燃えるごみ」に入れるというのは心理的にものすごく抵抗があり、わが家は別途、雑がみの直接持ち込みを受け付けてくれる資源化業者さんを探し出し、段ボールに溜めおいた雑がみを2、3か月に一度、回収現場に持ち込んでいます。こうすることで紙の「燃えるごみ行き」は阻止できていますが、本当は市がきちんと分別回収してくれるのが一番です。そのうち、市にも要望を伝えていき、システムの改善が図れたら理想的だなと思っています。「雑がみ」の分別資源化があれば、こんな雑多な紙類(子どもがグチャグチャにしたものも含む)もほとんど資源化に回せます。


◆作戦タイム

アクションを起こすときは、まず「量の多いもの」から手をつけるのが鉄則。成果が見えやすく、流れが加速します。ということで、真っ先に手をつけるべきは、以下の2品目に決定しました。

1.紙オムツ

ああ、安眠よ! ああ、手軽さよ! 紙オムツに別れを告げるのは本当に辛い決断です。でも、もちろん不可能ということはありません。わずか40年ほど前までは紙オムツなんて今のように普及していなかったわけですし、今だって布オムツを選んで使っている人はたくさんいます。布オムツの洗濯は少し気が重いけれど、それによってゼロ・ウェイストに大きく近づけるのはうれしいし、さらに、ごみ箱の中に紙オムツが常時入っているストレスから解放されるのはわりに大きなメリットです。

2.豆乳やヨーグルトのパック

わが家の近辺では、残念ながらリターナブル瓶入りのヨーグルトや、リサイクル可能な紙パック入りの豆乳は手に入りません(豆乳の紙パックは内側に銀箔が貼られているものが多く、これらは普通の牛乳パックと違ってリサイクルできません)。とすれば、道はただひとつ。ヨーグルトは、種菌を買って手作りする(それほど難しくありません)。豆乳は、さすがに大豆から手作りするのは大変なので、牛乳に代える。実は、香美市では近辺の牧場の良質な山地酪農牛乳が手に入ります。長らく牛乳の常飲を避けてきたわが家ですが、こんなに健康的な牛乳だったら、話は別! 牛乳へのシフトは、地産地消の意味からも気分がよく、むしろ心地よい変化をもたらしてくれました。

これら2つの“大物”がなくなれば、残るのはかなり雑多なものばかりです。それぞれ対処法を考えてみました。


・マッチやコルクなど→ベア・ジョンソンに倣ってコンポストに入れる(たしかに、木ですから!)。
・油揚げのビニール→近くに量り売りで買える豆腐屋でもあればよいのですが……油揚げはどうしてもあきらめきれないので、パスタのゆで汁などにつけて油分をざっと取って乾かし、「容器包装プラスチック」に分別することにします(そのくらいの手間をかけても油揚げは食べたいということ)。
・ティッシュ・綿棒・絆創膏→排除したいところですが、子どもに「使うな」というのはハードルが高いので、とりあえずの措置として「無節操に使わない」ことを目標とします。そして、ティッシュはコンポストに入れます(無漂白のものであれば何の問題もないそうです)。
・仕事がらみのもの(宅急便の伝票関連、ガムテープなど)→ベア・ジョンソンなら「リフューズ」するところでしょうが、これは今のわが家の現状では動かしづらい部分です(宅配便を使わずには今の通信販売の仕事ができないため)。量もそれほどではないので、問題は感じつつも、とりあえず保留とします。
・乾燥剤・脱酸素剤・保冷剤→避けられるものは避けるが、仕事用の製菓材料についてくるものなどは当面は甘受する。石灰の乾燥材などは乾燥して再利用する。保冷剤は再利用してくれる店には返却する(よろこんでくれるケーキ屋さんもあります)。

その他、上の写真には入っていませんが、よく出るごみとして、
・そうじで集めた埃くずや洗濯機にたまる糸くず→ベア・ジョンソンに倣ってコンポストに入れる(たしかに、土に埋めれば何の問題もありません)。
・肉や魚のトレイの敷き紙(不織布のようなもの)→臭うごみの筆頭格。今後は肉屋と魚屋に容器を持参して、パック入りの買い物は極力避けることにします(=スーパーのパック済みの肉や魚は買わない)。
・突発的に発生する子どものガラクタや、壊れたもの、汚れて使えなくなったもの→いちばん悩ましい部分です。次項参照。


◆目指すゴール

わが家のごみのおおよその現状が把握できた今、「ゼロ・ウェイストへの道」で自分が何を目指したいのかが、よりはっきりと見えてきました。

まず大前提ですが、現在の社会では、残念ながらごみを「本当に完全にゼロ」にすることはできません。仮にベア・ジョンソンのように「年間1ℓ」という驚異のラインまでごみを減らすことができたとしても、「1ℓ」は「1ℓ」、決してゼロではないのです。

最終的に何らかのごみが残ってしまうことが分かっているにも関わらず、なぜごみをゼロに近づけることを目指すのか? それは環境負荷をできるだけ減らし、暮らしをよりシンプルで快適なものにしたいから。そして、ごみに翻弄される日々から卒業したいから。いちばん端的には、「汚いごみ」と「ごみ出し」から解放されたいというのが大きいです。「この程度はがまんしなければ」と思われている地点の遥か先、「ここまでできるんだ」という解放的な境地を覗いてみたいと思うのです。

言い換えれば、わが家にとってひとつ重要なラインとなるのは、「ごみ箱から汚いごみが消えること」です。なぜなら、たとえごみがどんなにゼロに近づいても、もしそこに汚い紙オムツが1枚、臭い魚の敷き紙がたった1枚入り込んでいたら、ごみ出しを急がないわけにいかないから。しかもここ香美市では指定袋でごみ出しをするため、袋がまだいっぱいにならないうちにごみ出しをするのは、損しているようで癪に障ります。

汚いごみ、腐るごみ、臭うごみ。これらを完全に排除できれば、ごみ出しから完全に自由になれます。ベア・ジョンソンのように、保存瓶にごみを詰めて、いつまでも保管しておくことだってできます。「家の中に、不潔でない少量のごみしか存在しない。そして長期間まったくごみ出しをしなくても支障がない。」 これを、今のわが家が目指したいひとつの具体的なゴールにしたいと思います。


◆特殊なごみにはどう向き合うか

取り組みを進めるにあたって、特に大きな関門となることが予想される以下の2種類のごみについて、基本的なスタンスを決めておきたいと思います。

1.過去の遺物

まずはこちら、「過去の遺物」。つまり、既に持っているものが壊れたり、不要になったりする場合に発生するごみです。たとえば、つい先日、何年もフル活用してきた子ども用のプラスチックハンガーが2つ割れました(子どもが割りました)。

すぐに壊れてごみになるプラスチックハンガーは、今後はもう買いません。リサイクルできる金属製の丈夫なものを選びます。今あるプラスチックハンガーをすぐに新しい金属製のハンガーに総入れ替えするのも一案ですが、自分としては「既に持っているものを大切に使う」ことも大事にしたいと思います(それもひとつの立派な「エコ」の形です)。だから、わが家にはこれからもしばらくの間、「壊れたらごみになるもの/要らなくなったらごみになるもの」が存在し続けることになります。それらはある時点でごみに姿を変えますが、二度と買い足さないので(=徐々に別の素材や代用品を見つけていく)、それ以上ごみが増える心配はありません。

今すぐ「目先のゼロ」を実現したい誘惑に駆られつつも、やはり自分はこの「長期的なゼロの可能性」こそを見据えて、前に進んでいきたいと思います。過去の遺物によるごみの発生を今の時点で排除することはせず、「ゼロ対象」とは別枠で前向きに対処を考えていきたいと思います。なぜなら、自分がいちばん欲しいのは、未来に向けて「ここまでごみをゼロに近づけられる」というたしかな手応えであって、今この瞬間にいろいろ捨ててまで数字上のゼロを達成することではないからです。

2.子どものごみ

もうひとつは、「子どものごみ」です。子どもが山ほどしまい込んでいる、そして、これからも引き続き家の中にどんどん侵入してくるであろう、実に様々なガラクタ類。

これは本当にジレンマです。親にとっては排除したいモノばかりですが、やはりそこは子どもの人権も大切にしなければなりません。いや、ベア・ジョンソンが書いているとおり、子ども部屋のシンプル化やリユース化は進めるつもりだし、資源の無駄遣いにノーと言える心を教えていきたい気持ちもあります(ガラクタ類が本当に子どもの暮らしの豊かさにつながっているとは限らないですし)。でも、子どもにとってはそれ以上に大切なことだってあるし、何を優先するかはなかなか複雑で、一筋縄にはいきません(この辺はまた後日取り上げてみたいと思います)。後ろ髪を引かれる部分はありましたが、ここはまず自分の中で「大人だけならここまでごみをゼロに近づけられる」という手応えを得ることを第一の目標とし、できる範囲の工夫や努力はしつつ(たとえば、無節操におもちゃを増やさない、なるべく自然素材で環境負荷の低いものを選ぶ、など)、子どものごみも当面は「ゼロ対象」とは別枠で扱っていこうと思います。


※今日、保育園の壁に貼ってあったチラシで、壊れたおもちゃを直してくれる「おもちゃ病院」なるものが高知を含む全国各地に存在することを知りました。子どものごみをゼロにはできないまでも、きっといろいろ有意義な地平は存在するに違いないという希望のようなものも感じました。


さて、とりあえずのゴールとルールも定まって、いよいよ本格始動です。せっかく実践するのだから、気分が盛り上がらなくてはつまらない! というわけで、ごみ箱をベア・ジョンソンのようにガラス瓶に代えてみました。

1か月後、このガラス瓶に一体どのくらいのごみが溜まったか? そして、この間に過去の遺物や子どものごみはどのくらい発生したのか? 次回はその結果をご報告したいと思います。


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服部雄一郎(はっとり・ゆういちろう)

1976年生まれ。東京大学総合文化研究科修士課程修了(翻訳論)。葉山町役場のごみ担当職員としてゼロ・ウェイスト政策に携わり、UCバークレー公共政策大学院に留学。廃棄物NGOのスタッフとして南インドに滞在する。2014年高知に移住し、食まわりの活動「ロータスグラノーラ」主宰。自身の暮らしにもゼロ・ウェイストを取り入れ、その模様をWEB連載「翻訳者服部雄一郎のゼロ・ウェイストへの道」(アノニマ・スタジオ公式サイト)や、ブログ「サステイナブルに暮らしたい」(sustainably.jp)で発信する。最新の訳書に『プラスチック・フリー生活』(NHK出版)。


ゼロ・ウェイスト・ホーム
ーごみを出さないシンプルな暮らし―

著:ベア・ジョンソン
訳:服部雄一郎

本体価格1700円(税別)

家族4 人が1 年間に出すごみの量がガラス瓶1 本分(= 1 リットル)という、驚異の「ゼロ・ウェイスト(ごみを出さない)」生活を続けている著者。そのクリエイティブな工夫を紹介する、実践ガイドの日本語版です。「ごみの分別先進国」と言われる日本でもシンプルな生活や生き方が話題となっている昨今、環境問題やリサイクルに意識的な方のみならず、大きな注目を集めているテーマです。モノを減らせばごみも減り、環境的・経済的にも大きなメリットが生まれる。本当の豊かさとは?快適な生き方とは?「断捨離」「ミニマリズム」のさらに一歩先を行く、持続可能でシンプルな暮らし方の提案のみならず、人生で大切なことや見つめ直すべきことに気づかせてくれる一冊。先進的で洗練された暮らしぶりも必見です。