家族4人で1年に出すごみの量がわずかガラス瓶1本分(=1ℓ)という驚異の「ごみゼロ生活」を紹介する
『ゼロ・ウェイスト・ホーム』。
生活のシーンごとに実践的な取り組みが紹介されていて、
興味のあるところや身近なところから少しずつ始めることができます。
「日本でもできるの?」という疑問にお答えすべく、
翻訳を手掛けた服部雄一郎氏による実践リポートを
お届けしていきます!

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最終回 ゼロ・ウェイストのすすめ~まとめと展望



◆10か月を終えてみて

いよいよ本連載も最終回。10か月前からゼロ・ウェイスト生活を本格的に心がけるようになって、様々な試行錯誤と収穫がありました。最後のまとめとして、この10か月間のチャレンジの結果を振り返ってみたいと思います。

1. 燃えるごみの量

最初から驚くほど減りました。あっけないほど簡単に、ごみ出しがほとんど必要なくなるくらいまで減りました。

こちらに書いたとおり、今回の連載期間中は、「過去の遺物」や「子どものごみ」はひとまず除外し、主として「日常の燃えるごみ」に向き合ってみました。結果、わが家の普段の燃えるごみは、毎月2リットルのガラス瓶に収まるくらいの量(350g~550g)をキープしました。そこに収まりきらない「過去の遺物」や「子どものごみ」を合わせても、燃えるごみのいちばん小さな指定袋はなかなかいっぱいにならず、燃えるごみのごみ出しはせいぜい3~4か月に1度で済むようになりました。10か月前までは紙オムツを常用し、毎週2回必ずごみ出しをしていたことを思うと、驚くほどの変化です。



ごみ箱代わりのガラス瓶。ただし、これは燃えるごみ専用。
紙類・缶類・ビン類・プラスチック・不燃ごみなど、ほかの品目も別途保管する必要があるため、家の裏が「理想的にすっきり」とまでは行っていません。それらもできるだけ減らしていけたら、もっとラクになるな、と思っています。




2. メリット

ごみ出しの手間の激減は、とてつもなく大きなメリットでした。ごみ箱の悪臭や不潔感とも無縁になり、家の中から「汚いごみ箱」が減ったことで、精神衛生も大いに向上しました。

メリットを実感するのは、ごみ出しの日だけではありません。「余計なごみをなるべく受け取らない」「なるべくごみを作り出さない」を心がけるようになったことで、逆に今までどれだけ“ごみにかかずり合っていたか”を実感しました。買い物から帰ってきて、数えきれないパッケージやビニール袋を瞬時に処理しなければならない手間。ネット通販のかさばる緩衝材がごみ箱に入りきらないストレス。すぐに壊れるポンコツ商品や子どものおもちゃのイライラ。使い捨て商品のストックがなくなって慌てて買い物に奔走する……etc.

これらの「ごみに捧げていた時間」が、完璧とは言わずとも激減したことは、暮らしを快適にしてくれました。ごみを減らすことは、環境にとって必要なばかりでなく、個人の快適さ向上にも不可欠であると、実感させられました。

3.むずかしさ

既に大きなメリットを実感できているとは言え、ベア・ジョンソンを始めとする欧米の本格的なゼロ・ウェイスター(※「ゼロ・ウェイストに取り組む人」の意)に比べれば、わが家は「まだまだ」なのも事実です。彼らのごみ量が「1年に1ℓ」というレベルなのに対し、わが家は「1カ月に2ℓ」(=過去の遺物や子どものおもちゃなどを合わせるとさらに多い)、さらに容器包装プラスチックも欧米のようにシャットアウトできているわけではありません。「もっと完璧に減らしたいな…」というのは本音です。

ただ、この10か月間試行錯誤を重ねてみて、今の日本では、これ以上の減量を目指すのはなかなかハードルが高いということも実感しました。量り売りがあまりに少なく、パッケージを避けることがむずかしい中、「さらにもう一歩」と頑張ってみて、夫婦喧嘩までしました。

10か月を経た今は、この「もうひと頑張り」はもう少し社会が変わってからに先送りして、無理をせずに「自分ひとりでできること」にフォーカスしようと思います。日本が欧米ほど先進的でないのは恨めしい部分もありますが、「量り売りで買う」だけがゼロ・ウェイストではないことを忘れてはいけません。量り売り以外にも、家庭内でできるゼロ・ウェイストの工夫も山ほどあるのです。まずはそちらにたのしく取り組むだけでも暮らしは大きく変わります。

4. 気づかされたこと

途中、ジョンソン家ほど徹底的にごみを減らせているわけではない中で、「ゼロ・ウェイスト」を名乗るのが少し恥ずかしくなった時期もありました。「あれ、やっぱりゼロじゃないんだね」って言われそうだなぁ(自分でもそう思うし)……と、何だか自分が間違ったことをしているような錯覚に陥ったこともありました。

でも、ゼロ・ウェイストとは、「結果としてのごみゼロ」ではなく、「ごみゼロを目指すプロセス」のことですから、本当は何も恥じる必要はないのです。

事実、わが家は今、たぶん日本の中ではトップレベルにごみが少ない家だと思いますが、「ゼロ・ウェイスト!」と一念発起しなかったら、きっとここまでごみを減らすことはできなかったはずです。「ゼロ」を思ったからこそ、減らせたごみ――それこそがゼロ・ウェイストの証しなのだと、思えたことで吹っ切れました。そんなゼロ・ウェイストの本質をより明確に理解できた今、これまで以上に自然体でゼロ・ウェイストの暮らしをたのしんでいけそうです。

◆ゼロ・ウェイストでよりハッピーに

「勝ち組」とかいう不思議な言葉がいまだに耳に入ってくる昨今ですが、個人的には「家事をたのしめたら人生勝ったも同然」と思っています。毎日やらなければならない家事をたのしめたら、それは確実にハッピーな人生への近道です。“充実した仕事”や“大切な趣味”を探すより、よほど手軽です。

料理をたのしんでいる人は多いし、掃除や洗濯、片づけや庭の手入れをたのしむ秘訣もあちこちで紹介されています。そんな中、「ごみ」は、これまで「節約」や「心がけ」といった、やや地味な視点から語られがちだったように思いますが、ゼロ・ウェイストはそこに新たなたのしさとダイナミズムを提起してくれる存在ではないかという気がします。

「ここまで工夫できるんだ」というおもしろさ。

「ここまでごみを減らせる」という驚き。

「ここまで暮らしが変わる」という手応え。

ベア・ジョンソンが書いているとおり、ゼロ・ウェイストは単なる「ごみ減らし」にとどまりません。ごみを減らす中で、モノを減らし、自分にとって何が本当に必要で、何が本当に価値あるものなのかを見つめなおしていく。そのプロセスはライフスタイルの変革そのものであり、つまるところ、ゼロ・ウェイストは、よりハッピーな人生をたのしむためのきわめて実践的な装置ともなりえるのです。

うれしいことに、昨年の『ゼロ・ウェイスト・ホーム』刊行以来、日本にもいくつものゼロ・ウェイスト・ブログが誕生しています。この連載を見て、「私もはじめます/もっとやってみます」といううれしい感想をアノニマ・スタジオに寄せてくださった方も何人もいらっしゃいます。インスタグラムでも、「#ゼロウェイスト」(※中黒なし)とタグ付けされたうつくしい写真がどんどん投稿されています。Facebookで「ゼロ・ウェイスト」や「zero waste」と検索すれば、国内にもいくつものゼロ・ウェイスト関連のグループを見つけることができます(新しいメンバーの参加が歓迎されているものもいくつもあるので、興味のある方はぜひ参加してみてください)。

日本は量り売りが非常に少なく、欧米のように気軽にゼロ・ウェイスト生活に取り組むことがむずかしいかもしれませんが、そんな日本においても、ゼロ・ウェイストの輪は少しずつ、確実に広まりつつあります。本連載をお読みいただいたみなさんの中からも、ひとりでも多くの方が、ゼロ・ウェイストというツールを通して、“より快適でたのしい人生”への近道を見つけてくださったら、これ以上うれしいことはありません。できる範囲でゼロ・ウェイストに取り組む人がもっともっと増えて、最終的には社会も少しずつ変化して量り売りも増えてくる、そんな明るい未来を思い浮かべつつ、10回の連載を終わりたいと思います。


わが家の週1回のカフェも、今年中にゼロ・ウェイスト・アカデミーの
「ゼロ・ウェイスト認証」を取れるようにがんばります。


こんな山の中、真ん中に見えるのがわが家です。



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暮らしのなかにゼロ・ウェイストの工夫を取りいれている方、『ゼロ・ウェイスト・ホーム』を読んで取り組みを始めた方などの体験談を募集しています。こちらまでご連絡ください。


服部雄一郎
1976年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を経て、東京大学総合文化研究科修士課程修了(翻訳論)。20代の終わり、障害を持つ長男の誕生を機に、六本木の高層オフィスから当時住んでいた葉山町の地元の役場に転職、ごみ担当に配属され、ゼロ・ウェイスト政策に携わる機会を得る。その後、フルブライト奨学金を得てUCバークレー公共政策大学院に子連れ留学。ゼロ・ウェイスト関連の国際NGOのスタッフとして南インドに滞在。2014年、高知に拠点を移し、よりサステイナブルで自由な生き方の実践をスタートする。妻とともに食まわりの活動「ロータスグラノーラ」主宰。地方移住の本音をつづる連載サイト「移住のなかみ」にも執筆中。

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