家族4人で1年に出すごみの量がわずかガラス瓶1本分(=1ℓ)という驚異の「ごみゼロ生活」を紹介する
『ゼロ・ウェイスト・ホーム』。
生活のシーンごとに実践的な取り組みが紹介されていて、
興味のあるところや身近なところから少しずつ始めることができます。
「日本でもできるの?」という疑問にお答えすべく、
翻訳を手掛けた服部雄一郎氏による実践リポートを
お届けしていきます!

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第9回 ゼロ・ウェイスト・ビジネスの可能性



◆わが家の仕事のごみレベル

せっかくゼロ・ウェイストを暮らしに取り入れるなら、仕事だってゼロ・ウェイストを目指したいもの。『ゼロ・ウェイスト・ホーム』の第6章「仕事部屋・ダイレクトメール」には、ジョンソン家の書斎の徹底的なゼロ・ウェイスト化やペーパーレス化のノウハウが紹介されています。

さて、わが家はどうするか。わが家は今、高知の山のふもとに住み、週1回のカフェ、菓子や季節の産物の小包発送、畑、翻訳・文筆・NGOのサポート業務など、ちいさな仕事を組み合わせた暮らしをしています。まずはそれぞれの仕事の“ごみレベル”を測ってみようということになりました。


・週1回のカフェ
→ごみレベル:低

料理やデザートを用意して、直接お皿にサーブしてお客さんに食べてもらい、使い終わったお皿を洗えばよいので、ごみはほぼゼロ。幸い、食べ残す方もほとんどなく、あっても鶏に食べてもらうか、コンポストに入れるので、特に問題なし。ただし、材料の入手は残念ながら完全パッケージフリーには程遠いので、製菓材料を中心とするパッケージごみが出ます。「せめてリサイクル」ということで、容器包装プラスチックなどに鋭意分別しています。


ある日のカフェのメニュー。野菜などは近所の生産者さんにパッケージフリーで卸していただけるものも多く、
地産地消はゼロ・ウェイスト的にも理にかなっているなぁと実感します。


・菓子や産物の発送
→ごみレベル:高

野菜類はパッケージフリーで生産者さんから直接仕入れさせていただけることも多いですが、製菓材料は近場ではよい材料がまったく揃わないため、ひたすらネット通販に依存しています。ネット通販を利用する際は、こちらで紹介したとおり、なるべく緩衝材を入れないでもらう工夫を欠かしませんが、とにかくあらゆる食材がパック済みでわが家にやってくることには変わりありません。さらに悩ましいのは、わが家から商品(特にお菓子)を小包にして送る際に、必ずパッケージして送らなければならない点です。そして、宅配便の伝票シールなど、発送事務によるごみも、わりにたくさん出ます。


お菓子類のプラスチックパッケージはゼロ・ウェイスト的には何とかしたいところ。
緩衝材はできる限りプラスチックは使わず、リサイクルしやすい古新聞を使うようにしています。


・畑
→ごみレベル:低

自給未満程度のちいさなちいさな畑です。畑の野菜はもちろんゼロ・ウェイストで収穫できます。おいしいし、新鮮だし、よろこびがある。言うことなし、です。支柱も、ホームセンターで緑色のプラスチック製のものを買ったりせず、家の裏の茂みから笹を刈ってきて、葉を落として支柱代わりに使います。支柱にしばる紐も、ビニール紐ではなく、コンポスト可能な麻ひもやジュートを。わが家にはありませんが、棕櫚の葉をほそく割いて紐代わりに使うこともできるようです。このように、近隣の自然の中にあるものを利用するパーマカルチャー的な営みは、とてもシンプルで心地よいです。


わが家の畑。笹を支柱代わりにすることで、ひとつプラスチックの使用を減らせます。
畑の道具って意外にプラスチック製が多いのです。


・翻訳・文筆・NGOのサポート業務
→ごみレベル:低

ほぼすべての作業をコンピュータ&ネット上で行うので、ごみはほとんど発生しません。強いて言えば、校正時のゲラやNGO関連の事務作業で時折使うことになる大量の紙、そして使用済みインクカートリッジなどが挙げられますが、頻度もそれほど多くないし、一応ほぼすべてをリサイクルに回せているので、現状の中では許容範囲内かな、と……。

こうして見ると、課題は「菓子や産物の発送」に尽きることがわかります。これを機に「全面ゼロ・ウェイスト化」を図ることは可能でしょうか?


◆ゼロ・ウェイスト小包!?

とにかくやってみなければ、と思いました。使い捨てパッケージを「リユース化」するには、たとえば繰り返し使えるガラス瓶にお菓子を詰めて発送してみては???

これはなかなかおもしろそうなアイディアに思えました。一歩進んで、メイソンジャーを使ったりすれば、単価はもちろん上がるけれど、単なるパッケージを超えた付加価値にもなります。ゼロ・ウェイストの基本アイテムでもあるメイソンジャーを駆使した「ゼロ・ウェイストお菓子便」――これはぜひやってみたいと気分も盛り上がりました。

けれども、いざ実行を目指す段になると、なかなかシンプルに踏み切ることはできませんでした。まず、せっかくメイソンジャーやガラス瓶を使ってプラスチック包装を締め出しても、メイソンジャーやガラス瓶はワレモノなので、新たに緩衝材が必要になってしまいます。段ボールや新聞紙など、なるべく環境負荷の低い緩衝材を工夫することはできますが、かなり神経を使う梱包作業になることは必至です。この点、昔りんごの緩衝材などによく使われていた「籾殻」なら、土に還るし、なかなか趣のある小包になるかも!? と一瞬浮き立ったのですが、それだって庭のないご家庭では燃えるごみになってしまうし、そもそもわが家はどれだけの量の籾殻を備蓄すればよいのか! いや、籾殻以前に、すべてのお菓子を瓶に詰めて発送するとなると、数百~数千本の瓶を在庫として抱える必要が出てきます。せっかくゼロ・ウェイスト・ホーム流のシンプル化で家がすっきりしてきているというのに!(第一そんな収納スペースはありません。)また、瓶のサイズや形に合わせてお菓子を作らなければならないというのも割に大きな制約です。中に入れるお菓子が壊れないように、そして鮮度がなるべく保てるように、と思うと、瓶の形状にぴったり合うお菓子を作る必要がありますが、そうなると自分のこれまでのお菓子づくりは根底から覆ることになります(それはそれでよいのかもしれませんが)。

そして、これだけのハードルを乗り越えてすべてのお菓子を瓶詰にして送り届けたとして、果たして送り届けた先でそれらの瓶はどのような運命をたどるのでしょう??? 無事に活用してもらえれば万々歳だけれど、特にリピーターのお客さんなど、毎月4個も5個もメイソンジャーが届いても困るだろうし、人によってはそのままごみ箱行き、ということだってあるかもしれません。瓶はプラスチックパックよりもずっと高いのに……。必要のない瓶は「デポジット」のようにお客さんから回収できればよいのですが、小包発送の場合はそれもむずかしい――。

グルグルと考えあぐねる中で痛感させられたのは、この「小包発送」という形自体に、実は無理があるのかも……という根本的な事実です。小包発送という「一方通行」の中では、のぞましい「循環の輪」は実現しえないのです。しかも、宅配便を利用することで、燃料も余計に使い、フードマイレージは上がって、地産地消率も下がる。もしかして、小包発送をする自分たちは、持続可能な未来の方向性に逆行しているのかもしれない。そんな自己嫌悪までもがうっすらと湧いてきました。


◆ジレンマの中で~ゼロ・ウェイストの本質とは?

いろいろ考えた末、悔しいけれど、今の時点の自分たちには「ゼロ・ウェイストお菓子便」の実現はむずかしいという結論になりました。この世に「無理」ということはないはずだし、たのしんで取り組めるなら、やらない手はない。でも、今の自分たちには、「ゼロ・ウェイストお菓子便」は“自由への扉”ではなく、“制約”に感じられてしまう気がして、当面はきっぱり断念することにしました。

せっかくゼロ・ウェイストの暮らしを目指そうというのに、肝心の“仕事のゼロ・ウェイスト”を棚上げするのは、正直かなり残念で、一瞬、自分たちが何のために小包発送をやっているのか、自信がゆらぐようなところもありました。きっとこれは、ゼロ・ウェイストに取り組もうとする人がよく直面する問題ではないかと思います。

つまり、「理想どおりにいかない中で、どうゼロ・ウェイストに向き合っていけばよいのか」という部分です。

わが家に関して言えば、お菓子や産物の小包発送はとても大切な活動です。ゼロ・ウェイストやエネルギーの観点からすれば“難あり”かもしれないけれど、別の部分では、持続可能な未来に向けてひとつのささやかな価値を生み出せているという気持ちはあるし、何もかもが匿名化しつつある現代社会の中で、ひとりひとりのお客様と直接つながることのできるかけがえのない機会でもあります。それらのプラスを、「ゼロ・ウェイストが達成できない」という一点のみにおいて打ち消す必要はないはずです。

気づいてしまった以上、「見ないフリ」をすることはできません。ただ、そんな中でも「前を向くこと」はできる。不完全さを嘆いて立ち止まるのではなく、できることをして一歩でも二歩でも先に進むことで、より生産的な道を進めるはずだと思い至りました。

実際、「ゼロ・ウェイストお菓子便」が無理でも、小包発送をゼロ・ウェイストに近づけるための工夫はいろいろあるのです。たとえば、わが家が実践している本当にささやかな工夫の数々を列挙してみると……

  • なるべく中古ダンボールを使い、手に入らない時のみ新品のダンボールを使う
  • 緩衝材や封筒など、使い回せるものは使いまわす
  • ラベルも簡素化し、なるべく裏紙に印刷する
  • 緩衝材には古新聞を使う
  • 関東などのイベント時には、ジャムの発送などに使った空き瓶をひとつ50円で回収する
  • 懇意の生産者さんからはパッケージフリーで材料を仕入れる
  • 近所の直売で買うときは、残念ながらほとんどの野菜はパッケージ済みだけれど、再利用してもらえそうなプラスチック容器があれば、いくつかまとめて「よかったら再利用してください」と返却してみる


直売で買ういちご。残念ながらすべてプラスチックパッケージ入りですが、きれいにまとめて
「もし再利用していただけるようなら…」と持参してみたら、すんなりと受け取っていただけています。
こんなプラスチックパッケージも、買えばひとつ数円、段ボールに至っては数十円。
生産者さんだって、無料で使えるものがあれば使いたいはずだと思うのです。

このとおり、完璧とは言わずとも、できることは意外にいろいろあるものです。これらの工夫、意識的な人なら何も言われなくても実践しているかもしれませんが、わが家に関して言えば、やはりこれらすべてを実践できているのは、「ゼロ・ウェイスト」という大きな目標があってこそ。結果として、完全なゼロ・ウェイストが達成できているわけではなくても、ゼロ・ウェイストを思うからこそ、大いに前進できているというのは紛れもない事実なのです。

あきらめずに、できることに取り組む大切さ。これはゼロ・ウェイストに取り組む多くの人が口を揃えて言うことですが、つい先日も、カリフォルニアのキャスリン・ケロッグさんのインスタグラムでこんなパワフルな言葉を目にしました。

“よく「近所に量り売りのお店がないから、ゼロ・ウェイストはできない!」という不満を耳にするけれど、これはあたかも「ゼロ・ウェイストは完全無欠にできなければ意味がない」と思っているかのよう。ゼロ・ウェイストというのは、完璧であるということとは違う。もう一度言うけれど、ゼロ・ウェイストというのは、完璧であるという意味ではない。それは、各自がそれぞれの状況の中で、できる場面で、できうる限りの努力をするということ。だれもがゼロ・ウェイストの船に飛び乗ることができる。”(@ going.zero.waste 2017年5月24日)

減点方式ではなく、加点方式でみんながゼロ・ウェイストに向き合うようになったら、きっと世の中はずいぶん変わってくるだろうな、と感じます。というのは、この心理的な壁はわりに普遍的だからです。象徴的なのは、上記のキャスリン・ケロッグさんのエピソード。1年間にメイソンジャー半分しかごみを出さないという、ジョンソン家に負けない“ほぼ完璧な”ゼロ・ウェイスト実践者であるケロッグさんですが、こちらの新聞記事によると、その実践が有名になってからというもの、いろいろとおかしな批判を受けることがあるそうです。曰く、「飛行機に乗っている」「車に乗っている」「トイレットペーパーを使っている」……。訪ねてきた親戚に、家の中にまだこんなにプラスチック製品が残っていると指摘されたこともあるとか。「人間てそんなものかなぁ」と驚きましたが、実際、自分も含めて、「ゼロ・ウェイスト」という言葉を聞いた瞬間に、頭が減点方式に切り替わってしまう人は少なくないのではないでしょうか。

完全なゼロを達成することだけがゼロ・ウェイストではないし、むしろ、ゼロを目指すベクトルの中にこそ、ゼロ・ウェイストは存在する。「ゼロ」という言葉の、そんな本質により意識的になりたいものだと思います。


◆日本初、ゼロ・ウェイストの認証制度もスタート

そんな中、1カ月ほど前、日本のゼロ・ウェイスト発祥の地である徳島県上勝町からすばらしいニュースが飛び込んできました。NPO法人ゼロ・ウェイスト・アカデミーが、事業所を対象とした「ゼロ・ウェイスト認証制度」を開始したのです。

詳細はこちらに掲載されているとおりですが、第一陣として既に上勝町内の6つのカフェやレストランが認証を受け、これから町外にも認証を拡大していきたいとのこと。わが家も、ぜひ認証を取りたいなぁと希望が湧いてきました(取れるかな……?)。やはり、「ゼロ・ウェイストはゼロを目指す心の中にある」などとは言っても、はっきりしたお墨付きは自信になりますし、わかりやすいカタチでゼロ・ウェイストの輪が広まっていくのはとてもよいことだと思います。

「ここまでできるんだ!」という高い目標もパワフルだけれど、目標を高くしすぎず、身近な課題をクリアして、たのしく前向きにゼロ・ウェイストに取り組むことも同じくらい大切です。わが家も、そんな心で、常に前進できる真の「ゼロ・ウェイスト事業所」でありたいと決意を新たにしました。




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暮らしのなかにゼロ・ウェイストの工夫を取りいれている方、『ゼロ・ウェイスト・ホーム』を読んで取り組みを始めた方などの体験談を募集しています。こちらまでご連絡ください。


服部雄一郎
1976年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を経て、東京大学総合文化研究科修士課程修了(翻訳論)。20代の終わり、障害を持つ長男の誕生を機に、六本木の高層オフィスから当時住んでいた葉山町の地元の役場に転職、ごみ担当に配属され、ゼロ・ウェイスト政策に携わる機会を得る。その後、フルブライト奨学金を得てUCバークレー公共政策大学院に子連れ留学。ゼロ・ウェイスト関連の国際NGOのスタッフとして南インドに滞在。2014年、高知に拠点を移し、よりサステイナブルで自由な生き方の実践をスタートする。妻とともに食まわりの活動「ロータスグラノーラ」主宰。地方移住の本音をつづる連載サイト「移住のなかみ」にも執筆中。

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