家族4人で1年に出すごみの量がわずかガラス瓶1本分(=1ℓ)という驚異の「ごみゼロ生活」を紹介する
『ゼロ・ウェイスト・ホーム』。
生活のシーンごとに実践的な取り組みが紹介されていて、
興味のあるところや身近なところから少しずつ始めることができます。
「日本でもできるの?」という疑問にお答えすべく、
翻訳を手掛けた服部雄一郎氏による実践リポートを
お届けしていきます!

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第1回 はじめに


◆「ゼロ・ウェイスト・ホーム」=「ごみを出さない暮らし」
ジョンソン家の1年間のごみはたったこれだけ!

はじめまして、服部雄一郎です。9月の新刊、ベア・ジョンソン著『ゼロ・ウェイスト・ホーム』の翻訳者です。

作者のベア・ジョンソンはサンフランシスコ近郊に住むフランス人女性です。アメリカ人の旦那さんとふたりの男の子の4人家族で、1年間に出すごみの量はわずか1リットル。その限りなく“ごみゼロ”に近いライフスタイルが世界的な注目を浴びています。

その暮らしぶりは、優雅かつシンプル。よくイメージされる“我慢の連続”のような節約生活とはかけ離れています。本書『ゼロ・ウェイスト・ホーム』は、そんな「たのしくうつくしいごみゼロ生活」の魅力とノウハウを余すところなく伝えてくれます。アメリカ西海岸ならではの新しいエコライフの世界。こんまりや断捨離やミニマリズムに湧く日本のみなさんにも、きっと新たな視点でたのしんでいただけるのでは、と思っています。


優雅でシンプルなジョンソン家
◆翻って、わが家のごみ

なぜ僕がこの「ごみゼロ」の本を訳すことになったかと言うと、それは僕が「ごみの人」だからです。今は高知の田舎に移住して2年になりますが、もともとは神奈川県の葉山町役場でごみ減量担当をしていました。そこで「ゼロ・ウェイスト」という考え方に魅せられ、ゼロ・ウェイストが広く政策に取り入れられているカリフォルニアに留学し、ゼロ・ウェイストを進めるNGOのアメリカ事務所でインターンをしたり、卒業後は契約スタッフとして南インド事務所で働いたり。

そんな人間なので、もちろん、葉山時代からそれなりに意識的な「ごみ生活」をしてきました。生ごみ処理もしているし、分別もバッチリ。無駄なごみはなるべく出さないし、3人の子どもも基本的に布オムツで育ててきました。「ごみの少ない生活」の快適さを十分に実感してきたつもりです。

それなのに!(当たり前かもしれませんが)やはりごみはいろいろ出るのです。めいっぱい遊んで「紙もテープも紐もビニールもすべて丸めてポイ」の子どもたち。すぐに壊れるおもちゃやガラクタ。“資源物”とは言え、毎週ウンザリするほどたくさんの容器包装プラスチック(洗って乾かすだけで一苦労)。さらに「ごみのことばかり考えていられないでしょ~」とのたまうマイペースな妻(それなりに協力的ではありますけどね)。

そして、人生には紆余曲折もあります。

中でも、葉山でのごみ担当職員時代、「生ごみ処理は簡単です! マンションのベランダでも気軽にできますよ~」とマイク片手に啓発講座をしていた自分が、そのわずか数年後、京都のマンションに住んだ1年半の間、さまざまな理由でついに生ごみ処理をできずに終わったことは、自分自身大ショックでした。

また、布オムツ生活も順風満帆で、“布オムツの上手な洗い方”を自らブログで紹介するほどだったのに、よりによって「もっとエコな暮らし」を志向して移住した高知で、空き家の改修やコンポストトイレのセットアップに追われ、ついに続行できずにギブアップ。今は華々しき紙オムツ生活です。特に長男は障害があるため、10歳を迎えた今も夜のオムツが取れません。赤ちゃんとちがって排尿量も多いため、布オムツではいかんとも防御しきれず……。「さすがにそろそろ卒業できるかな」という淡い期待とともに、今日もビッグサイズの紙オムツがごみ袋に投げ込まれていきます。


◆目指せ!ゼロ・ウェイスト・ホーム

「本当のゼロ・ウェイスト」は、やっぱり“遠い理想”だなぁ、もっと行政が取り組みを変えてくれないと――。そんなふうに半分諦めかけていた自分の目に飛び込んできたのが、この『ゼロ・ウェイスト・ホーム』の原書でした。

「本当にゼロ・ウェイストの暮らしをしている家族がいるんだ!」とビックリしました。しかも留学先だったバークレーのすぐ近くに住む家族です。運命的なものを感じ、面識もないのに「翻訳させてください」と作者にメールを送り、絶好のタイミングでアノニマ・スタジオの編集の方に出会い――今に至ります。

無事に翻訳作業も終わり、次はもちろん“自分が試す番”。気軽にできる工夫は既にいろいろ取り入れてきましたが、もっと本気で取り組むとなると、それ相応の覚悟が必要です。編集の浅井さんからも「……やりますよね!?」と言われ、後にも引けず。本が刊行されたことで、妻も「そりゃ、やってみなきゃね」と賛成してくれました。

さて、どうなるか!? 今日からはじまる連載で、そのチャレンジの模様をご紹介していきます。一体どんな世界が待ち受けているのか? 自分たち家族の今の暮らしの中で、果たしてどこまで行き着けるのか??? せっかく訪れたこの機会、力いっぱい、たのしみながら取り組んでみようと思います。乞うご期待!



もくじ   第2回 世界に広がる“ゼロ・ウェイストの暮らし” >>


暮らしのなかにゼロ・ウェイストの工夫を取りいれている方、『ゼロ・ウェイスト・ホーム』を読んで取り組みを始めた方などの体験談を募集しています。こちらまでご連絡ください。

服部雄一郎
1976年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を経て、東京大学総合文化研究科修士課程修了(翻訳論)。20代の終わり、障害を持つ長男の誕生を機に、六本木の高層オフィスから当時住んでいた葉山町の地元の役場に転職、ごみ担当に配属され、ゼロ・ウェイスト政策に携わる機会を得る。その後、フルブライト奨学金を得てUCバークレー公共政策大学院に子連れ留学。ゼロ・ウェイスト関連の国際NGOのスタッフとして南インドに滞在。2014年、高知に拠点を移し、よりサステイナブルで自由な生き方の実践をスタートする。妻とともに食まわりの活動「ロータスグラノーラ」主宰。地方移住の本音をつづる連載サイト「移住のなかみ」にも執筆中。

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