アノニマ・スタジオWebサイトTOP > 五味太郎×國分功一郎トークイベント「絵本と哲学の話をしよう」@銀座蔦屋書店2018年9月28日 イベントレポート 3/4

五味太郎×國分功一郎トークイベント
「絵本と哲学の話をしよう」イベントレポート 3/4




2018年9月28日に、銀座蔦屋書店さんで五味太郎×國分功一郎「絵本と哲学の話をしよう」が開催されました。
たくさんの方々にお集りいただき、1時間以上にわたって絵本と哲学、音と言葉などさまざまにお話いただきました。 当日の模様を、全4回にわたってお届けいたします。



■ナンセンスっていう「センス」


國分さん

たとえば長新太さんの絵本って、やっぱりみんな「ナンセンス」って言うと思うんですよ。だけどやっぱり五味さんの本って、ナンセンスとは違うんですよね。

五味さん

うん。

國分さん

かといって「わかる/わからない」の向こう側にあるし、「どういう意味なの?」と言われると意味はなくて、「さる・るるる」なんだけど、でもナンセンスとは違っていて、何かそこの感覚、唯物論的に遊んでるというか……

五味さん

長新太さん、僕も大好きな人で、いろいろお話もしたけど、(そこが)彼も苦しいとこで、あえて「ナンセンス」って言わなくて良かったんじゃないかな。

國分さん

そうですね。

五味さん

夜歩いてると、空にぽこっとトンカツが浮かぶ、っていうことを、ナンセンスと言っちゃうと……

國分さん

センスの領域、意味の領域に入っちゃうんですよね。<「意味じゃない」っていう意味>の領域に入っちゃう。

五味さん

うん。ちょっと哲学っぽかった、今の(笑)
「意味の領域に入っちゃう」。

國分さん

そうなんです。

五味さん

「ナンセンス」っていうセンス(意味)だよね。

國分さん

そうなんです。

五味さん

それをぐるぐる回っちゃうんで、俺はナンセンスって言っちゃうと、なんかつまらない。「おとぎ話」と言ってしまうと、(所詮)「おとぎ話だよね」ってなっちゃう感じ。
神様の話だよね、神様がすべてを作ったんだよね、って言っちゃうと、終わっちゃう。作ったのかもしれないし、違うかもしれないっていう複雑なところが、俺にとっては一番楽しいところかもしれない。このまんまの世界に俺は居たい。このまんまの世界って結構ナンセンスだぜ。なんかこう、今この場に立ち合ってくれている人も……(客席をみて)あそこにいるハヤカワくん、彼の存在がもうナンセンスだから。

國分さん

(笑)
どういうふうに捉えていいかわからないですけど、ナンセンスなんですか。

五味さん

うん。ずーっと知ってるんだけど、全然知らないんだ、あいつのこと。それはもうナンセンスの領域だよね。
そういうのは、別に長さんのこと揶揄するわけじゃないけど、わざわざファンタジーの枠に入れなくても、銀座蔦屋にハヤカワくんがいるんだもん。おんなじ。

國分さん

おんなじですか……

五味さん

ちょっとわかんなかった?

國分さん

いや、わかったような、わからないような……

五味さん

もう普通の暮らしにナンセンス続出だから。ナンセンスの中に、センスが「ぽっ」とある。

國分さん

それはそうですね。

五味さん

それを行ったり来たりが、人生じゃないの、という感じがあるかな。

國分さん

五味さんの作品って、いわゆるセンス、内容があって意味があって教訓があって、っていうのではもちろんないんだけど、今言ったように「ナンセンス」というセンスでもなくて、という、どこに位置づけるのかがすごく難しいんですよ。

五味さん

教訓なんていうものは、「出ちゃう」ものなんだよね。

國分さん

うん、うん。

五味さん

こう、テーブル見てるじゃない。この丸いテーブル。
「こんなテーブルみたいに生きたいなあ」っていうのが教訓。

國分さん

こう、まっすぐに。

五味さん

そうそう、まっすぐに。

國分さん

立派に物をのせて、こうガッと持ちこたえて……

五味さん

うん、そこまでは言い過ぎなんだけど(笑)

國分さん

あ、すいません(笑)

五味さん

「テーマ(主題)をだそう」なんて言ったら、すべてに絶対あるわけ。
「原っぱに、木が凛々しく立ってます」、と言ってみても、別に木は凛々しく立ってるつもりないと思うんだよ。木はたまたま立ってる。それを見て人間の感情が(自分と物の間を)行ったり来たりするのを、伝え合ったり、「俺も俺も」と思ったり、「いや、違いますよね」と議論したり、そういうなんとも言えない、生き生きした感じが、すべてだなあと思うわけね。その中で、気がついたら死んじゃった、みたいなことで十分だと思うんだけど。
そのときに、あまりにも足かせみたいなもの、自戒やタブー、ルールみたいなものが多すぎちゃうと、生きてる甲斐がないよね、という感じがするんでしょうね。


■「ちょっと考えようぜ」っていうくらいの世界に


國分さん

すごく個人的なことですみませんが、お話を聞いていて、自分がなんで五味さんの本が好きなのかわかった感じがします。ちょっと「まじめ」な話です(笑)
僕はジル・ドゥルーズの哲学をやってるんですけど、彼は「俺は物の表面だけ見るぞ」「表面に意味が発生するのだ」ということを言っているんです。だから今のお話を聞いていて、ただ木は立っている、でもその表面に何か、凛々しさとかが、出てきてしまう。「でも木だけを見るぞ、なんとかして」、という……

五味さん

意味付けだよね、その場合。意味付けが、個性でしょ。

國分さん

はい。

五味さん

100人いたら100人が凛々しいと思うわけじゃない。見ない人もいるし、ピントが合わない人もいるし。
共通項として、あるいは答えとして、そこに凛々しく木が立っている、ということはありえないから。

國分さん

そうですね。

五味さん

たとえばパスカルの言った、「人間は考える葦である」ってあるじゃない。そのときに、偉そうな顔して「葦である」、「。(マル)!」って言っちゃう(からよくない)んで、「なーんちゃって」ってつけてくれたらよかったんだよね。

國分さん

(笑)
あれ、「なーんちゃって」って意味なんですよ。当時よく言われてたことらしくて。

五味さん

そうそう、それが日本に翻訳されたときに……
ほら、シェイクスピアでもあるじゃない、「死すべきか、生きるべきか、それが問題だ。」なんて。本当はそのあとに「どうしようかな〜」が付いてるんだよね。
日本語訳って、何か知らないけど「。(マル)」って偉そうに言い切ることが多い。あと「哲学」っていうのも失敗だよね。

國分さん

「哲学」って翻訳でよかったのかは疑問ですね。

五味さん

「ちょっと考えようぜ」ってくらいの世界だよね。いや、それ以前に誰しも考えちゃってるよね、っていうくらいに、気楽なものにしない限り、死んじゃうよね。

國分さん

いやいや……

五味さん

「いやいや」じゃないよ。

國分さん

いや、なんかすごい「シャキーン」と来た感じがありまして、よかったです(笑)

五味さん

やっぱり、きりがないんだよね。「本がするべきこと」なんて言い方じゃ大げさだけれども、本という形にすると、一応しまるのね。(バラバラの)紙のままだと、なんかだらけてるけど。本にすると、相当いい。

國分さん

ほんとやっぱり、「ほんと(本と)」って駄洒落じゃないですけど(笑)
本当に五味さんは「本」という形が本当に、すごく……

五味さん

うん、これはいい手だなあと思ってるんだよね。

國分さん

ちょっと微妙なことをお聞きしたいんですが、またこれ(『ヒトニツイテ』)についてなんですけど、これ最初はこの小さい版ですが、今なんか大きくなって出てますよね。

五味さん

そういうのは、あるところまでいったら、「もう好きにやんなさい」って感じにしてる。ある段階までは結構キープしているけれども、その本は「あんまり出さないで」という本だから、「好きにしなさい」。

國分さん

あ、そうでした。

五味さん

でもその本、ちょっと運命的で、あちこちで会社がつぶれたりいろいろあった。哲学書なんかでも、結構あるよね。古いのを、もう一回別のところで出したり、違う底本になってずいぶんニュアンス変わっちゃったり。でもそれもまた本の運命だと思うんだよね。

國分さん

そうですね。

五味さん

でも絵本てやっぱり「絵」だから、そんなに翻訳変わらないんだよね、別に。絵は翻訳できないし、しなくていいから。何語で出ようと、結構(翻訳に)耐えるんだよね。

國分さん

不思議ですよね。言葉は翻訳しなきゃならないのに、どうして絵は翻訳しなくていいのか。よく考えると不思議ですよね。

五味さん

うん。いや、そう言われても(笑)
(後ろのスライドの國分さんの著書を見る)

國分さん

なんで突然僕を見るんですか(笑)

五味さん

いやいや、突然出てきたから(笑)

國分さん

あの、そろそろ……

五味さん

「帰んなさい」?

國分さん

いや、違うんですよ。一応会場から質問を受け付けるってことになってるんです。

五味さん

こういうとき、みんなあんまり質問しないよ。

國分さん

そうですね……

五味さん

こういうところでしゃべるの恥ずかしいし……さあ!質問のある方はどうぞ(笑)

國分さん

はい、質問タイムです。

五味さん

授業してるんじゃないんだ、俺は。……これ、「あとでテストありますよ」とか言っとかないとだったかな(笑)

國分さん

(笑)
質問のある方がいらっしゃれば……あ!じゃあどうぞ。





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五味 太郎

1945 年、東京生まれ。工業デザインの世界から絵本の創作活動にはいり、ユニークな作品を数多く発表。子どもからおとなまで、世界中に幅広いファンを持つ。著作は 350冊をこえ、多くの絵本が世界各国で翻訳されている。 代表作に『きんぎょがにげた』『みんなうんち』『言葉図鑑』『さる・るるる』などがある。近刊に、カッターをつかった工作セット『 CUT AND CUT!キッターであそぼう!』、セットに含まれるカッターのアイデアブック『カッターであそぼう!』(ともにアノニマ・スタジオ)がある。


國分 功一郎

1974 年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。専攻は哲学。主な著書に『中動態の世界──意志と責任の考古学』(医学書院、第16回小林秀雄賞受賞)、『暇と退屈の倫理学』(太田出版、第二回じんぶん大賞受賞)『来るべき民主主義』(冬舎新書)、『ドゥルーズの哲学原理』(岩波書店)、『スピノザの方法』(みすず書房)他多数。好きな五味さんの絵本は『さる・るるる』、『ヒト ニ ツイテ』、『かくしたのだあれ』、『たべたの だあれ』など。



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