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川あそび

Q. 川でなにして遊ぶ?
A. ①水遊び ②生き物観察 ③岩から飛び込む、の3つがおすすめ
①水遊び
 泳ぐこと、もしくは水遊びすること、ただ単に水に浮かんでいること、全部子どもは大好き。ここは思いっきりお父さんとともに楽しんでほしい。ぜひお父さんが率先してあの冷たい川の中へ!

②生き物観察
 泳げる河川ということは、都市部近郊では中上流部に近いはず。このあたりは都市近郊の用水路や河川下流では見ることが出来ない生き物がたくさん観察できる。ざっと思い出すだけでも、鮎、オイカワ、カジカなどの魚類、カジカガエルをはじめとした山地性のカエルとそのオタマジャクシ、イモリやサンショウウオなど含めた両生類全般、さらにそれらを草むらから狙うヘビ。昆虫類も豊富だ。トンボやヤンマは飛んでもいるし、川の中にはそのヤゴがいる。川虫と呼ばれるヘビトンボの幼虫は岩にへばり付き、こいつはオイカワを釣るのに絶好の餌になる。アメンボ類なんかもなかなか都会では見られない。片っ端から捕虫網やタモ網で捕獲して観察してみてほしい。

③岩から飛び込む
 小学校高学年くらいになると絶対にやりたくなる、岩から淵や滝壺への飛び込み。これだけは地元の子どもに聞いて安全優先で飛び込んでほしい。飛び込んだ瞬間に鼻から水が入り、広げていた両手の内側は水を打って真っ赤になる、そんな過酷な遊びだが、ぼくはこの歳になってもやめられない。「あーあの岩から飛び込みたい!」と自分がなってしまうから、子どもたちを誘って川へ出かけている。

Q. どんな川で遊ぶといいの?
A. 護岸工事がされておらず、瀬と淵が連続している、水深差がある川が面白い
 天然の川岸が残っているところは生き物の宝庫。6月〜7月にはカワニナ(巻き貝)を食べ育ったゲンジボタルの乱舞が見られるかもしれない。ヤマカガシがカジカガエルを丸呑みにしている様子を見ることが出来るかもしれない。できるだけ自然の姿のまま残された川で遊ぶことをお勧めしたい。そして、瀬と淵が入り混じり水深の高低差が幅広いと、これまた生き物が多くなり違った姿を見せてくれる。例えば鮎。浅瀬では必死で苔を食んでいる様子が見られるが、水深のある淵だと悠々と時には群れて泳ぐ様子を見ることが出来る。また子どもたちが泳ぐにしても瀬ばかりだと少々物足りないだろう。ただ、水を怖がる子がいたとしたら、瀬はちょうどいい。そんな渓相入り混じった豊かな川を選ぶことができると、楽しみも増える。

おまけコラム○よい川は地元の人に聞くのが一番(深み、増水具合、言い伝えなど)
 川というのは、いつも同じ様子であったことがない。川底の様子も、水の流れも、すべてだ。例えば前日に雨が降ったとする。見た目には増水している訳ではない。これが怖い。水はいつもより数段冷たくなり、水面ではわからなかった底流の流れの速さが足元をすくう。こういった普段との違いは、その地に住んで毎日眺めていないとわからないもの。どこで泳げばいいの?どこで魚捕りをすればいいの?などは、地元の方に聞くのが一番。また鉱山跡の地域では鉱毒の問題について聞くこともある。「あの滝壺には牛鬼伝説がある」など、伝説が残っていたりもする。こういった言い伝えや伝説は後世に残すべき教訓が含まれていることが多いので、合わせて教えてもらっておくと安心だ。


Q. 川遊びの持ち物は?
A. ①ライフジャケット ②濡れても良い滑りにくい靴 ③タモ網、この3点は必須
①ライフジャケット
 どんな浅い川でもライフジャケットは着用してほしい。未就園児の子どもなら尚更、できればお父さん、お母さんも、だ。川原で遊んでいたはずが、知らない間に流されていた、浅い「瀬」と言われる場所でうつ伏せになって溺れた、などという事故が後を絶たない。ライフジャケットは安物でも良い。必ず着用を。
②濡れても良い滑りにくい靴
 また靴も必須だ。川底には石もあるし苔も生えている。ビーチサンダルでは心許ない。人気の合成樹脂製サンダルも、足元が浮力を得てしまい危ない。私は沢登り用のシューズを必ず履くようにしている。
③タモ網
 「あると楽しい」装備だ。わが家には必須!川をのぞくとたくさんの魚や水に棲む昆虫を見ることが出来る。こういったものを採集して観察できると、泳ぎがまだ苦手な子どもたちも喜ぶだろう。
④その他
 ポケットに入る簡単な図鑑なども持っておきたい。木陰がなければ帽子、水中観察用のシュノーケル一式や箱メガネ、生き物を入れるバケツ、さらに生き物を持ち帰るプラスティックの飼育ケースか、発泡スチロール製のクーラーボックス(使い捨てタイプ、密閉性が高く水が漏れにくい)、浮き輪や水鉄砲などもあると楽しい。家族(ごはんや休憩のときに、でも)がひと息つける、ござ、クーラボックスなども忘れずに。

Q. 生き物の見つけ方は?
A. 川岸の植物の下、石の下、岩かげを探す
 川岸の植物の下をタモ網でガサガサと探ってみよう。イモリやハヤ(オイカワ)、カジカなどの小魚がたくさん入るはずだ。また川底にあるある程度の大きさの石をひっくり返してみよう。この時下流にタモ網を添えることを忘れずに。カジカが出てきたり、川虫(ヘビトンボの幼虫など)がへばり付いていたりして楽しい。そして岩陰。もちろん水中メガネを付けて潜水する必要があるが、こういった岩陰に大きなハヤや、もしかしたらアマゴやイワナを見ることが出来るかも。ぼくは一度だけウナギの顔を見たことがある。これは本当にドキッとする。
 出来たら、生き物を持って帰って飼う。ほとんどの子どもは捕った生き物を「持って帰りたい!」と主張するのではないかと思う。ぜひお父さんが率先して子どもの気持ちを汲み取ってあげてほしい。飼育に必要なものは、安価なプラスチック製の飼育ケースと、安価なろ過装置、飼育ケースの底に敷く砂利などで十分。種別の飼育方法については図鑑もあるし、インターネット検索でも可能だ。高価な熱帯魚を買い、高価な飼育装置を購入せずとも、身近な川や池の生き物は、その餌の食べ方ひとつとってみても、子どもならずとも大人でも新鮮な驚きに満ちあふれている。その生き物の生態を知り、愛おしむ気持ちを育み、生命の尊さに思いをはせてほしい。

Q. 川遊びの注意点は?
A. ①絶対に目を離さない ②身体を冷やさない ③大人から入る
①絶対に目を離さない
 川での事故の大半は「ここなら大丈夫だろう」と大人が目を離した隙に起こっている。例えばトイレに行きたいという子どもには必ず付き添う。川原で遊んでいる子どもからも目を離さない。「大丈夫だろう」という場所でこそ、注意を払ってほしい。
②身体を冷やさない
 大人も子どもも身体を冷やさないことが重要。川の水は予想以上に冷たく、どんどん体力を奪っていく。20分泳いだら5分休憩など、とにかく休憩をこまめに取る。
③大人から入る
 まず大人が流れや水の冷たさを身を持って知ることが大事。それから、子どもと一緒に遊んであげてほしい。さらに未就園児などは水を怖がる場合も多いと思う。ウチの一番上の娘も2歳くらいのとき、ギャンギャン泣きわめいて、水に入れなかった。それが小5となった今では率先して川に入り、さらにある程度泳ぎもする。だから無理に水に入れる必要はない。泣き叫ぶ様子を写真や動画に撮っておいて(少し悪趣味だが)、「こんな時期もあったね」と笑い話にしてもいい。

おまけコラム○全国にある「河童(かっぱ)伝説」
アクアセレクトの採水地の奥伊勢地方や東紀州地方にも同じように「河童伝説」がある。この辺りでは「河童はきゅうり好きだから、きゅうりを食べて川に入ると、河童に足を引っ張られる」というものなのだが、きゅうりやナスなどの「身体を冷やす食べ物」を食べて川に入ると足がつったり泳げなくなるという、戒めなのだと理解している。絶対に身体を冷やし続けてはいけない。

Q. 子どもが溺れた場合どうするか?
A. 出来る限り陸上(川岸)から助ける方法を考えよう
 まずはロープなどの長いもの、またはペットボトル等の浮力のあるもの(最悪木片などでもよい)を投げて捕まらせる、などの方法が考えられる。
 私自身が、過去に日本赤十字社の「水上安全救助員」資格を習得した際のこと。この講習ではいろいろな泳法である程度の距離を泳がされる。それも真正面を向いてのクロール、腕を使わずに巻き足だけでの立ち泳ぎ、要救助者のあごを引いて横泳ぎをして救助する泳法で、だ。息も絶え絶えになり、水中の溺者を救助する方法を学ぶのだが、最後に教官が一言。「泳いで溺れている人を助けに行くのも、引き返してくるのも、並大抵の泳力ではめちゃくちゃ難しいということがわかったでしょう?」だからこそ、子どもを危険な状況に至らせない、準備と行動が必要だということを、自分自身も肝に命じている。

 私の子どものころは「川や池で遊ぶのは危険」「近づいちゃいけない」という学校での指導があり、そして立て看板があり、という時代だった。今もそういう風潮であることは否めない。しかし仕事(天然水の宅配アクアセレクト)で知り合った採水地、三重県多気郡大台町の方々は、皆「昔はよく川で遊ぶ子どもがおったのに、今では少なくなったなぁ」とおっしゃる。また熊野市神川町というこれまた秘境中の秘境なのだが、そこで出会う人はみな「大ちゃん、昨日はうなぎ捕れたか?あそこの●●淵に、尺のアメノがおったぞ。潜ってこい」と、いつも川や魚の話題で挨拶をしてくれる。
 やはり水に親しんできた地域は、水質が良いし、地域ぐるみで保全も推進している。水質を保全してきた地域だからこそ、水に親しみ、川文化ともいうべき遊びや、伝承が息づいている、とも言える。どんな水質の川であれ、小さいうちから水、川に親しむということこそが、水質や自然環境に目を向けさせる、ということと同じ意味を持つ気がしてならない。
 ぜひこの夏、近所の河川でよいので、お父さんが率先して子どもと川に入って遊んでほしい。川遊びの初心者でいい。子どもの安全のための準備を忘れずに、初心者目線、子ども目線で、大いに楽しんでもらえることを願っている。


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