<<連載もくじ

はじめに

 自分の子どもが大きくなってきて、子どもの教育について考える機会が増えてきた。妻からは「まず自分が遊ぶことが中心で『おれについて来い』としか言わないから、それを『子育て』と呼んだらアカンよ!」と言われているが。自然あそびをする上で大切に思っていることを3点、お話したい。

①たくさん失敗させる

 例えば、子どもがザリガニ釣りをしていて、運良く釣れた。そして「ザリガニを飼いたい!」と言い出したら、どうするだろう?「どうせ死んじゃうし、持って帰らずにこの池で生かしてあげようよ」こういった回答や、実際にそう思っている方はわりと多いんじゃないかと思う。これは、もったいない!
 子どもはザリガニの飼育で、いろいろな失敗をするだろう。この飼育ケースにザリガニの数はどれくらいが適正なのか、どれくらいで水が濁ってくるのか、餌はなにが良いのか、どうやって水をかえればいいのか……いろいろ考えてやってみるといい。
 ザリガニといえど命を粗末にすることは良くないけれど、アメリカザリガニは飼育下では2年もすれば死んでしまう。下手したらもっと短いかもしれない。たとえ飼育途中に死んでしまったとしても、失敗を繰り返しながら、だんだんと上手に飼育出来るようになったらいいのではないか。
 子どもが「失敗」するということ。子どもに「失敗」をさせるということ。数少ない経験ながら「子育てで大事にしていること」のひとつだ。自然あそび、野外活動では文字通り「自然相手」だから、なかなか上手くはいかない。失敗を糧に、次にどうするか考え、そして行動に移せば良いのだ。

②見守る

 例えば、子どもの「火をおこしたい」「火遊びしたい」という欲求。ぼくは同居していた大正生まれの祖母に「火遊びしてたらオネショするよ」といさめられ育った(そうやって言われた同年代の方も多いのではないか?)。
 しかし、いまや、子どもたちの前からだけでなく、家から「火」というものが消えつつある。子どもたちとキャンプをしていると、ずっと火のそばに居て、薪をくべたり、団扇で扇いでみたり、時には石を放り込んでみたり、子どもたちの「火」への興味は尽きない。こういった機会があるのなら、手とり足とり教えなくとも、周りが見守るだけでそれで十分だと思う。多少の火傷や擦り傷くらいは作るかもしれないが。
「見守りつつ手を出し過ぎない」。子どもにとって「危険」と「楽しさ」は表裏一体のこと。それを親が制限してしまっている場面が多くないだろうか。
 子どもたちの周りの人間関係もずいぶんと変化した。私たちの世代であれば、少し年上のお兄ちゃん、お姉ちゃんが「ちょっと危ないこと」を教えてくれた。良いことも悪いことも。こういう年上の子どもと遊ぶ機会が減っている。
 また、こういう年上のお兄ちゃんと遊んでいてダメなことをしていると、必ず近所のこわいおっさんがやってきて叱ってくれたものだった。こういうおっさんも少なくなった。
 本音を言うと、子どもたちは子どもだけで遊べばいい。もっと冒険的要素を取り入れ遊べばいい。だが、子どもたちだけでの冒険ができる場が減っているのが現状だ。
 父と子が遊ぶ時ぐらいは(一緒に外遊びする機会があるお母さんもたまには)、少しばかり冒険的な要素を取り入れ、見守りつつも失敗を許容してあげてほしい。自然の中ではできるだけ親が口を出さない、手を出さない、そして大いに失敗してほしい。

③自分で考える

 自然の中で遊んでいると、作られた道以外の部分が魅力的に感じることがある。そういった時に大いに道を踏み外して歩いてみてはどうだろう?野や山、川や海のフィールドに出る、ということは「自分で考え好きなように行動する」と同義、または「自分の行動に責任を持つ」と同義。これが基本だ。
 今の子どもたちは「自分の好きなようにして良い」というのが分からない。柵があると(ヒョイとまたげる程度の柵でも)「入っちゃいけなんだよ」となる。
 子どもはこういった判断を常にしている。そして私たち大人が子どものそういった判断を常に賞賛していないだろうか。「危ないことはしない、近づかない」という教育、「大人がダメと言ったらダメ」という教育が徹底されているように思う。決してこういった教育を真っ向から否定するつもりはない。しかし「自然の中に身を置く、野外に出かけていく」ということは、「自分で考え行動する」こと。自然の中での遊びは、大人たちの判断を待つことから、子どもたち自身が自分で判断することへの変化のキッカケになり得る。大げさに言うと「生きていく力を身につける」、そのキッカケを得るということだ。そんなことも野外での活動で、自然の中の遊びから感じ取ってもらえれば、と思っている。


竹本大輔(たけもと・だいすけ)

1973年生まれ。大阪市阿倍野区西田辺町で生まれ育つ。幼少の頃は「三度の飯よりも昆虫好き」。山に川に海に出かけては、捕虫網を振り回している子ども。小5の時に、友だちとふたりで出かけた山中での初めての野宿に感動、それ以来キャンプは生活の一部になる。大学生の時は、YMCAでキャンプリーダーとして子どもたちとのキャンプに明け暮れ、現在は自分の家族や友人とキャンプという、今も昔も変わらない趣味。現在は愛知県名古屋市在住。妻と子ども3人(小5女の子、小2男の子、2歳女の子)の5人家族。「付き合ってあげよっか」というノリで私の趣味に付き合ってくれる理解ある家族。
 仕事は、冷温水機能のついたウォーターサーバーと天然水ボトルを宅配する会社。ブランド名は「アクアセレクト」。三重県の伊勢神宮ゆかりの天然水を届けている。ウォーターサーバーの宅配を通じて「田舎と都会を結ぶ架け橋」をスローガンに、都市部のお客様を採水地である田舎部へお連れするということも年間を通し行っている。その中でたくさんのご家族と天然水の採水地を訪れ、「自然に親しむということとはどういうことなんだろう」と別の視点からも考えるように。
 春は野草観察、山菜採り、家庭菜園。梅雨になれば梅干し、梅酒つくり、そしてカブトムシ捕り。夏には、夜の川に潜りウナギ捕り。海に出てはカヤックやヨット。秋には木の実を探し歩き、登山を楽しむ。冬には雪山登山やスキー。まだまだ子どもが一緒に楽しめないものもあるが、一年を通してアウトドアライフを楽しんでいる。


<<連載もくじ