第4回 Scooter Cafféの猫













ウォータールー駅の裏に
ヴィンテージのベスパをテーマにした、小さなカフェがある。
ベスパだけに、モッズな雰囲気の男の子たちや、
50sスタイルのおしゃれな女の子たち、
それに有名なシアターが近くにあるせいか、
演出家や俳優たちも、たまり場にしているらしく、
いつも常連でにぎわっている。





下北沢にでもありそうな、そんなちょっとアングラなカフェで
いつも丸くなって眠っている猫がいる。
おしゃべりしている女の子たちの横で、
打ち合わせをしているグループの横で、
全然気にするそぶりも見せず、ただただぐっすり。
女の子なんだけれど、名前は「ボブ」っていうの。







どちらかというと、誰かと同席している方が好き。
まるっと空いているテーブルより、
誰かがいるテーブルの、空いた席にやってきて、
話し声を近くで聞きながら、うとうとしているのだから。








だけど、あんまりかまって欲しくもない。
となりに座っていた時に、
耳のうしろをちょっとだけなぜてみたけれど、
緑の目で、あさっての方を向いて、
「ほうっておいてくれる?」という顔をしていた。








みんな自由に時間を過ごしている、その場所の雰囲気が好きなので、
友達と待ち合わせたり、書き物をしたりしに行くのだけれど、
ボブが自分のテーブルに現れるかどうかは、彼女の気分次第。
こちらも気にしているそぶりを見せずに、
あえてふかふかの椅子を、これみよがしに空けておく、というのが、
もっぱらわたしの作戦なのだけれど。



132 Lower Marsh Waterloo London SE1 7AE
tel. 020 7620 1421






1979年、札幌生まれ。写真家&ライター。 ファッション誌やライフスタイル誌で、撮影執筆を手がける。 2005年より英国在住。猫とお笑いと旅が好き。 http://www.sayakahirakawa.com/