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かぞくのブリコラージュ~自分たちで暮らしを作る、日常の発明記~かぞくのブリコラージュ~自分たちで暮らしを作る、日常の発明記~

文・写真・題字/中村家


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その17
たねちゃんハウスⅡ for 娘 前編





いよいよ自分の部屋の必要性を感じている10歳の娘のため、部屋を作ることになりました。家の中にはちょうどいいスペースがなかなかないので、かつて作った、テラスの「循環型野外キッチン」と「ブリコラ農園」の間のスペースに小屋を建設することに。大量の廃材、リフォームで外した2階の窓、を材料に「廃材ヤダ~~!フツウの綺麗な部屋がいい~~!!」と主張する娘も納得する、廃材で作ったとは思えない小綺麗小屋を目指すことに…。かつて住んでいた三鷹の家に作った小さな小屋「たねちゃんハウス」にちなんで「たねちゃんハウスⅡ」と命名し、制作開始!果たして結果はいかに…。










たねちゃんハウスⅡまでの日々 前編
(2021年7月12日~8月24日まで)




7月12日

赤紫蘇がどちゃっと手に入ったので紫蘇ジュースを作ろうとキッチンに立っていると「あ?!紫蘇ジュース作んの?」と花種さん。なんでも「学校で紫蘇ジュース係になりたかったけど、人気すぎてなれなかった」から、作りたいとのこと。紫蘇ジュース係ってなんなのさ?という疑問湧き上がりつつ、人気ってのもなんかわかる気がする。ということで花種さんが作ってくれました。




7月13日

田んぼの見回りに行くと、ひまわりがモリモリと咲いていた。モリモリと。




7月14日

原稿締め切り。数年かけてかいていた日記を本にするために、自分の日記を読み続ける日々。なんていうか奇跡みたいだし、滑稽だし、痛いし、でも愛しい。自分たちのことだけど、なかなかこの家族おもしろいなあ、なんて思いながら。




7月15日

引き続き、山でのアルバム制作真っ只中で我が家居候中のちぇるさんが作るグラノーラが、ここ最近我が家で大ヒット。大量に焼いてくれてもすぐなくなる。




7月16日

花種さん、明日で一学期終了!終業式のあと、そのまま5年生(花種さんの学年)は学校でキャンプをするのです。キャンプのしおりを見せてもらったところ、詰め込むにもほどがあるよと言いたくなる分刻みスケジュール。プールのちドッジボールのち、翌日のパンの仕込み、さらに俳句作り…それキャンプっていうか???恐ろしい量の持参荷物には浴衣まであり。それキャンプっていうか???新しい帯をわたしの母(機織りです)が織ってくれたので着せてみたら、あらあら、夏のお嬢さん。




7月17日

学校に向かう後ろ姿、笑えるほど(大荷物…)。




7月18日

ブリコラ農園でインゲン豆が続々収穫できはじめた。近所の人にも、農家さんからも、インゲン豆が届いて続々インゲン…。午後分刻みキャンプで疲れ果てた花種さんが帰宅。めずらしく昼寝をしてたからほんとうに疲れたみたい。




7月19日

…夏休みだ!ものすごく暑くて蒸し蒸しする中「今すぐギューしないと、もういっしょうギューできなくなるよ?いいの?」と樹根から脅しをうけている…。夏休みだ!




7月20日

紫蘇ジュースにホーリーバジル(友達がつくったホーリーバジル!)を入れると、もう最高にさわやか。クーラーなしの我が家。熱がこもった体を通り抜ける爽やかさ。まさにホーリー。



7月21日

樹根、保育園で夏の祝祭。園庭で魚型のクッキー釣りをしたり、宝探しできれいな石を見つけたり、もらったものを小さなカゴに入れて持ち帰って満足気。クッキー、ちいさ~~~~~なカケラを分けてくれました。




7月22日

「家族と一年商店」の開店まであと1ヶ月をきっている…のに、今からやらなくちゃいけない作業量多…いのに夏休み…なので、どうやったら仕事と子どもたちとの夏休みが両立できるか考案中。やはり早朝しかナイよね。


7月23日

コロナも増え続けているらしいけどオリンピックもほんとにやるらしい。そして関連ニュースはちょっと信じられないってくらいの、耳塞ぎたくなるようなことばっかり。花種さんにせがまれて隣町のプールへ。去年毎日のように通った大好きな川、今年は立ち入り禁止になってしまった。とても悲しい。でも花種さんは「川よりプールがいい」んだってー。



7月24日

ちぇるさんアルバム制作が佳境。わたしたちも「家族と一年商店」のオープンに向けた準備が佳境。そんな中、どうにも気持ちが奮い立たないひょーさんが何やらゴニョゴニョ言っているので、腹が立ち言い合いに。ひょーさんは数年がかりで取り組んでいた、ある海外プロジェクトが去年コロナで延期に。さらに準備を重ねてこの夏開催予定だったけどこの状況。先日正式に開催が難しい、となり一旦プロジェクトが事態が中止になってしまった。何年もかけて、気持ちを向け準備してきたプロジェクトだったから、キョム感でいっぱいになるのは、そうでしょう…と思う。でもこんな不条理な状況だからこそ、小さくても自分たちで発信していけるような新しい仕事を生み出していきたいよって「家族と一年商店」もはじめるんだから。キョム感で動けない、って言っててもさ、と叱咤激励(の、つもりの言い合い)。



7月25日

近所のvikaが隣町の「MOMO ICE CREAM」でかき氷を出すというので食べに行った。ハスカップとスモモのシロップにスモモピクルスやクリームチーズがついていたり、どこにもないvikaだけのカッコいいかき氷。



7月26日

夕暮れの気配に子どもたちとちぇるさんと家の前の坂を登った先の橋まで走っていった。世界が薄桃色だった。



7月27日

早朝に仕事、わりにうまくいってる。花種さんと彼女の友達に「ワッフルを作ってあげるからできるまで出て行って」と部屋から追い出され実に3時間…(うちはキッチンとリビングがひとつづきなのでリビングにも入れず)。ワッフルできるまであっつい2階でちぇるさんと語らう。お互いの人生について。



7月28日

自宅取材があるので細かなところまで掃除。コンロの五徳とか。



7月29日

夏休みってこともあり、いよいよ花種さんの自室がナイ問題が切羽詰まった状況。友達と親の目から離れて遊びたい10歳、寝室で遊んだりするから困る。うちは広さはあるけど「部屋」がナイ。でもそんなこの家のどこかに彼女の部屋を作らねばならない…。いったいどこにどう作ろう?つぎのブリコラで作るのは「花種さんの部屋」だなとは思いつつ、いったいどこに作れば?



7月30日

アノニマ・スタジオの村上さんと打ち合わせ。インゲンまたまた大量収穫。



7月31日

あー7月が終わっちゃう。オリンピック、盛り上がってるんだろうか?ちぇるさんがキャロットケーキを作ってくれた。ちょうどvika家のうたちゃんもやってきて、みんなで食べた。



8月1日

8月になってしまった。「家族と一年商店」開店までカウントダウン始まってる感…。間に合ってない感…。という状況の中、千葉大多喜のMITOSAYAよりミトちゃんサヤちゃんがお泊まりに来た。2人だけで電車に乗って!真夏の大冒険!なのでこちとら、冒険のしおり作ってお出迎え。ボートにバーベキューに野外映画館にと盛りだくさん。



8月2日

昼過ぎにミトサヤちゃんをお見送り。次回10月にMITOSAYAで再会の約束。午後からは仕事。



8月3日

今月三重のひょーさん実家に帰郷する予定だったけど、こんな状況なので控えた方が良さそうだ…ね?と、じいじ達と電話で話す。仕方ない。関東から今行くことは近隣の人の目などもある中迷惑をかけてしまいそうなので。でも、困った。子どもたちは久々の帰郷を指折り数えているから。なんて伝えようかなあ。



8月4日

帰郷はできないことを伝えつつ、ひょーさんと話し合って決めた「代わりにこんな楽しいことをしようよ」案を子どもたちに提案。樹根はわりと早いタイミングで「いいよ」と言ってくれたけど、花種さんはソファに座ってツーツーといつまでも止まらない涙を流してた。参るね。仕方がないことってもちろんあると思うけど、仕方がないよとは思えないよね。テレビはないけどそれでもオリンピックのことは聞こえてくる。わたしたちはそんなギラギラした大きなもののために、生きてるわけじゃないよねって思う。



8月5日

春の終わりから、藤野でちぇるさんが作ってきたアルバム「omamori」が今日、ついに。配信スタート。この後、レコードも刷り上がる。どうしようもなく苦しい数ヶ月、うたと向き合って作ったアルバムは、どうしようもなく苦しい気持ちを抱えた人の心に寄り添ってくれるような優しいアルバム。うちの子どもたちは、もうほとんど歌える。この歌たちと共に、我が家の春~夏もあった。ジャンジャンブル(生姜)レコードからリリースしたので、ちぇるは生姜のケーキを焼いた。



8月6日

ちぇるさんは今日から京都~北海道と旅に出る。この2ヶ月はとても不思議な、まるで家族が増えたみたいな、でも家族ではない人とお互いのキツい時期を共に併走していたような日々だった。ちぇるさんの前でも幾度となくわたしとひょーさんは大喧嘩して、ちぇるさんはいろんなことを話ながら毎日のように涙していた。どんな日も子どもたちはわちゃわちゃと大人の周りを走り回って、みんなでご飯を食べて、おやつを食べた。旅立つちぇるさんに手紙を渡したら「素晴らしい2ヶ月をありがとう」というところを読んで「こちらこそだよ」とちぇるさんは言った。「ちぇる、また泣いてる~」と子どもたちは笑って、わたしたちはみんな笑ったよ。そんな2ヶ月だった。



8月7日

「家族と一年商店」もオープンに向け大詰め大詰め~~~!の中、樹根が発熱。



8月8日

引き続き樹根ダウンの中、大詰めは続く。「大和家」の前で購入した一個20円のネクタリンが美味しい。



8月9日

樹根回復。でも今度は花種さんが怪しい…。わたしの母があまりに心配するので抗原検査キットで検査する。みんな陰性だった。



8月10日

花種さん発熱。vikaがコロナでかき氷さんオープンデーが中止になってシロップが大量にあるから食べに来て、と誘ってくれた。娘のうたちゃんお手製のかき氷チケットはvikaの故郷のリトアニア語で書いてあった。ホーリーバジルのかき氷、ものすご~~~~く美味しい。



8月11日

「こんなにもちもちほっぺは、今だけですよ~」と、樹根。ほんとに売り込み上手なんだから。



8月12日

田んぼの見回りに行くと、大きなバッタがぴょんぴょん。稲もぐんぐん伸び、跳ね回る虫たちが楽しそうだった。



8月13日

なかなか花種さんの体調が全快しない。しつこい夏風邪って感じだ。「風邪もコロナも、もー引退でいいよ」と花種さん。まったくね~。



8月14日

京都にいるちぇるさんから「坂田焼き菓子店」の夢のお菓子オールスターズが届いた。仕事は切羽詰まり、子どもたちは体調不良でイライラし…という危機的状況の我が家の救世主。



8月15日

大雨警報鳴り響く、終戦記念日。8月とは思えない寒さで花種さんにホットコーヒー淹れてもらった。子どもたちの体調は回復したことが希望の兆し。だけど、こんなにも心暗い終戦記念日。



8月16日

「家族と一年商店」オープンの日。小さく小さく始まった。始まったからといって、大きく何かが変わるわけじゃない。ひょーさんの仕事は激減したままだし、あったからといってコロナ前みたいな気分でガンガンやりますよ、とも思えない。自分たちの小ささや矛盾を思えば思うほど苦しくなる。でも、だから矛盾のない何かを自分たちで始めてみたい、と願ったことがこの小さな小さなお店として形になったのは、いいことだ。昨日はなかった、いいことが、今日小さくわたしたちの中に生まれたっていうことだから。



8月17日

そういえば昨日は近所に住む小さな女の子の誕生日会があって、花種さんも樹根も呼んでもらった。パーティーのクライマックスの宝探しの宝をうちの庭に隠させてほしいってことで、小さな人たちが探し出した宝をあけたら、中には「魔法のスプーン」が入ってた。このスプーンを使うといいことがあるんだって!と話す子どもたちに、うんうん。あなたたちにはいいことがあるにちがいないよ。と思ったのです。



8月18日

「家族と一年商店」の発送などしながら、いよいよ花種さんの部屋作りをしなくてはいけない。帰郷できないとなった時の代案(?)には、花種さんの部屋を作る!というのも含まれていたので。どこに作ろう、と悩みに悩んで結局ブリコラ農園の奥、循環型野外キッチンのあるテラスに小屋を建てることになった。んだけど、もう大変。なにが大変ってさ~…(書くのも疲れる)。



8月19日

自分の部屋を作るにあたって「廃材で作るなんて嫌だ!」「〇〇ちゃん家みたいな、きれいな部屋がいいの!」部屋に合わせてテーブルや棚も作ろう、と言うと「棚は買いたいの!なんでなんでも作る作るって…」と花種さん怒り狂って言ってくるもんだから。「作れるものは作るよ」「塗り直したら廃材もきれいにできるから」と話し合うも涙目。ブリコラージュのテーマを根源を覆す「ふつーの家みたいに買いたい」という10歳の主張。と向き合いつつ、わたしたちも譲らず。フジロックに参加表明するアーティストの文章を読む(行く予定はないけど)。



8月20日

アノニマ・スタジオの村上さんと打ち合わせで吉祥寺へ。本作りをしているこの数ヶ月の間、「あ。この言葉をずっと大切に文章を書いていこう」って思うことを村上さんは言ってくれた。今日も「一生大事にします」って言葉をくれた。一生大事にする!家に帰ると、テラスに花種さんの小屋がたっていた。



8月21日

嫌だ嫌だ言っていた花種さんも実際にできてくると「…いいじゃん」とニンマリ。頑張って汗だくで作業してる。大きな板など組む大枠の組み立ては危ないし力勝負なのでひょーさんと花種さんが担当中。そして交渉で室内のフローリング板は新しく「買う」ことに。夜は近所の友達家族と庭でバーベキュー。



8月22日

コロナでかき氷やさんの営業ができなくなってしまったvikaが我が家で近所の人たちにかき氷を振る舞ってくれた。かき氷パーティー。みんな2杯3杯と食べて、楽しくておいしかった。



8月23日

なかなかタイミングや天気が合わず、なんとこの夏初の川。仕事の合間に2時間くらい。いつも行っていた最高の川は閉鎖されてしまったけど、もっと近い近所の川でも子どもたちは楽しそうだった。



8月24日

花種さんの部屋は野外に作るので「たねちゃんハウスⅡ」と呼ぶことに。三鷹時代にも庭に小さな小屋を作って「たねちゃんハウス」と呼んでいたので、今回作っているのはⅡなのです。でも前のよりも本格派。広さもあるし、窓もある(窓は家族と一年商店用に改装した2階の一部屋にもともとついていた窓を取り付け)。暑い日の作業には梅ジュースが効く。思うようにはいかないこともいっぱいあるけど、できたことも、楽しいことも、この家の中にもあるよね。そんな夏休みがあと少しで終わる(たねちゃんハウスⅡは夏休み中には終わらなさそうだけど)。




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中村俵太(ひょうた(父/夫)

「HYOTA」として空間デザインを生業に活動しつつ、家族と一年誌『家族』のクリエティブディレクターも担当。決断力と実行力はあるけど計画や段取りは非常に苦手。人見知り。日本生まれ日本育ちなのに日本語がおかしい。極めて楽天的でポジティブ。

中村暁野(あきの(母/妻)

家族と一年誌『家族』編集長。家族や生活をテーマに執筆活動も行なっている。ズボラでめんどくさがりな反面、理想を追って突っ走りがち。でもその突っ走りによって人生動かしてきたという自負もあるので、引き続き突っ走る気まんまん。

中村花種(かたね(娘)

繊細で敏感、パワー溢れる9歳児。両親への巧みな口答えのバリエーションは一休さんのとんちさながら。大人をまじまじと観察して急所を突く発言をするのも得意。極度の内弁慶だったけれど藤野暮らしの中で日々日々壁を越え、自分を伝える力を身につけ中。

中村樹根(じゅね(息子)

マイペースでごきげんな3歳児。道行く人に誰彼構わず話しかけては何かをもらってきたりする。ここぞという時に病気になりがち。今のところ3回の誕生日のうち2回は寝込んで迎えている。食べるの大好き。姉とはトムとジェリーのような関係。

バター(うさぎ)

花種さんの膝に飛び乗るすきを常に伺っている、アメリカンファジーロップのオス。愛故に、毎日花種さんにおしっこをひっかけるのが家族の悩み。



家族カレンダー

中村暁野
定価 1760円(本体価格1600円)
ひとつの家族を自身の家族で取材して制作する雑誌『家族と一年誌 家族』編集長である著者による初めての自著。ブログに綴った5年の間には、たくさんの幸せな日とそうでない日とがありました。「家族」を通して自分と社会に向き合い続けた実験の記録。一日々々のかけがえのなさを感じられる一冊です。


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