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かぞくのブリコラージュ~自分たちで暮らしを作る、日常の発明記~かぞくのブリコラージュ~自分たちで暮らしを作る、日常の発明記~

文・写真・題字/中村家


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その2
 「循環型野外キッチン」for 娘





7歳の時から「サンデーカタネコーヒー」として日曜の朝にコーヒーを淹れている娘専用の野外キッチンを制作。とあるCMで使ったコンロやパイプなどを材料に、野外に作るからには雨水タンクに貯めた水を植物とゼオライトを通して濾過する循環型キッチンに挑戦。これは濾過できて…いるのか?!最後にはシャワーヘッドから植物の水やりもできます。










循環型野外キッチンへの日々(4月16日〜5月6日まで)


4月16日

今日は集中したいとひょーさん朝からアトリエへ。わたしはマスクをして、花種さんと樹根くんと歩いて20分のいつものパン屋さんへ向かう。途中座り込んだり逆走したりの樹根くん…。そして子供はマスクすぐとっちゃうね。とはいえ、行きも帰りもほとんど人に会うことはないんだけれど。店主さんが1人で焼いてるパンは、コロナ以来、事前予約で完売してしまうので、毎週予約。ヨモギを摘んで、夜はヨモギの天ぷらとチヂミ。ジムニーのつぎに家族で作るものを相談。「つぎはぜったいたねちゃんのをつくる!」と花種さん。取手がハート型で壁にリボンがついたクローゼットのデザイン画を描き上げてきた…。9歳のファンシー感。なかなかに受け入れがたい…。何を作るか相談熟考の必要があります。


4月17日

数日かけて作っていた樹根のパンツが完成。多分できる人が作ったら30分くらいで作れる簡単なパンツ。縫い物や編み物は苦手で遠ざけてきたけど、今は時間もあるし、作れそうなものは自分で作ってみようと始めてみた。つぎは花種さんのシャツを縫う約束。花種さんにデザイン画を渡され、リボンが全面についててこれまたファンシー…。作れるかなあ。明日は記録的な大雨の恐れというニュース。土砂災害が怖い。ここ数年、藤野では台風のたびに土砂崩れが起きて甚大な被害が出ている。世界は大変なことになりつつあると、気候変動の脅威を身をもって感じる。全部はわたしたちと繋がっている。だから、縫い目がガタガタのパンツを縫うことにも、意味はきっとある。何かを自分の手で生み出そうと試みていくことは、わたしが今できる、するべきことだと思う。

4月18日

確かに一瞬すごい雨だったけど、予想より激しくなかった雨。午後は空が明るくなった。以前引き受けたちょっとイレギュラーな仕事の作業をヒイヒイわたしがする横で、ひょーさんが昼も夜も食事作りと子供の相手をしてくれた。夕方から樹根くんがヒューヒュー呼吸。風邪の始まりだ…。回復に必要なのはとにかく寝ることだとわかっているので早めに寝かせる。寝るのだ!そして朝には治っている!と信じるのだ。


4月19日

たくさん寝た樹根、体調回復。一安心。さて、ブリコラージュ第二弾で何を作るか揉めています。自分の本棚が欲しいというのは家族全員の希望なのですが、次は絶対自分のものを作りたい、と譲らぬ花種さん。そういえばこの家のリビングには、もともと赤いベルベットのバーカウンターが付いていて、引っ越してきたと同時に解体したそのカウンターの棚部分が家の裏に放ってあったよな、と思いだしたひょーさん。改めて見に行ってみると、本棚に使えそう。なので、このカウンターとアトリエにあるベニヤを使って本棚を作ろう!となったのですが。汚れたカウンターに「…これ、たねちゃんの本棚じゃなくていいや」と花種さんが怯むのを見て、「絶対『やっぱたねちゃんのにするう〜〜!』っていうものにする!」と息巻くひょーさん。まずは洗うところからね。
近くの見晴らしのいい丘にお弁当をもっていってお昼を食べ、またヨモギを大量に摘んで帰る。帰宅後、カウンターを洗い、古い釘を抜く作業をひょーさんと樹根が進める。わたしは摘んできたヨモギを煮詰めてヨモギオイルを作った。

4月20日

夜は子どもたちと一緒に20時には寝る(はずが最近20時半とか21時とかになってしまっている…)のですが、0時半くらいに目が覚めて、そこから眠れなくなってしまった。コロナが収束した世界で新しい仕事をはじめる計画だけど、それがいつなのかはまったく予想がつかないし(5月だとは到底思えないし)それまでうちは持ちこたえられるかな、とか、新しい仕事をはじめたとしてどれくらいで収支のバランスや運営方法などがつかめていくかな、とか。眠れないから原稿を書いて、一本上げられた。朝起きてきたひょーさんに「なんか不安で眠れなくなっちゃった」と話すと「え?そういう不安ぜんぜんない。希望しかない」と言われた。強がりでもなんでもなく、ひょーさんはこういうタイプ。おかげでふうと一息ついて1日を始められることができた。庭にまいた人参の種から芽がたくさん出てきた。

4月21日

解体したカウンターをきれいに掃除してオイルを塗ったら、フツウに立派な本棚になった。これブリコラージュするまでもないね、ということで家の廊下に設置。本棚できた。ひょーさんの今後はじめる新しい仕事、やりたいことの根本はぶれないんだけど、そのアウトプットはどういう形がベストなのか迷いがある、という話を夫婦でする。やりたい!と思うことが世の中に必要とされていることなのか、という部分も考えなくちゃいけないし。「やりたいことを考えるより、絶対にやりたくないことをあげていくことから、もう一度考えてみようと思う」とひょーさん。やりたくないことはたくさんあるけど、本当に「やらない」選択をするのはとてもとても難しい。だからこそ、なにを「やらない」かを明確に決めることはすごく大切なことだと確かに思う。そしてつぎにつくるのは花種さんのコーヒースタンドに決定。7歳の時から日曜日の朝は花種さんがコーヒーを淹れてくれていいて「サンデーカタネコーヒー」と呼んでいる。せっかくだから庭に野外キッチンを作ろうという計画。庭でコーヒー飲むの気持ちいい季節だしね。


4月22日

いつものパン屋さんに向かっていたら、樹根くんの保育園の先生にばったりと会う。「ちょうど樹根くんにあげるもの持っているよ」と庭で摘んだというパンジーをくれた。園児12人の小さな園で、保育者の先生方はみんな第2第3第4…の母のような存在。樹根が大事にパンジーを家まで持ち帰る姿に胸がぎゅっとなった。園の保護者仲間には医療従事者の方がいる。現場の状況や、そんな中での家族のあり方を想像すると胸がぎゅっとなる。また、みんなで笑いあいたい。今日はひょーさん38歳の誕生日。花種さんは粘土細工を作ったり、樹根にも手紙の書き方を熱血指導したりとお祝いの準備。「食べたいものある?」と聞くと「唐揚げ」というので、唐揚げをしこたま揚げ、ケーキはバスク風チーズケーキなるものを焼いた。菜の花を摘んできて飾り付け。想像もしてなかったような38歳の始まりだけど、想像もしてなかったような現実が後押しとなって、追い風となって、きっと新しい世界に着地!できるかもしれない。そんな年にしよう。

4月23日

お隣のレイコさんが「名前がわからないんだけど、ピンクの花が咲く苗」を持ってきてくれた。庭に増えてきたのでよかったら植えない?って。もらった苗を植えた後、ヨモギを練りこんでスコーンを焼いた。レイコさんにもおすそ分けをもっていったら夕方、今度はスコーンを渡したお皿にセリの炊き込み御飯をいれてレイコさんが持ってきてくれた。


4月24日

野外キッチンに雨水タンクを設置する、という話が浮上。雨水は果たして飲料できるくらい濾過できるのか…。スタンドの近くにコーヒーのむ場所も欲しいよねって、デッキも作ることに。CMのセットデザインで使ったコンロを塗装。午前中スタンド作り作業をして、お昼はひょーさんが豚キムチを作った。ひょーさんお手製初代キムチ、全く発酵しないままなんだけど「これはこれで美味しいじゃん」と薄辛甘い白菜を家族で食べている。薄辛甘い白菜を使った豚キムチは、普通においしかった。


4月25日

デッキ制作。板に防腐剤を塗って乾かしてたら、雨が降ってきてしまった。晴れ予報だったのに!すぐあがったけれどなかなか乾かない。母から山胡桃をたくさんもらった。山胡桃の殻はとてもとても固いのだけど、何時間も乾煎りして割りやすくしてくれたので、樹根が隙間にスプーンを入れ、割る。こういう作業が樹根くんは大好き。すごい集中力で全部割ってくれた。花種さんは最近学校の課題をやった後、午後は自転車を乗りまわしていて、全然家にいない。


4月26日

朝4時半に家を出て朝日を見に行った。山の上から朝日をみた後、持って行った簡単なあさごはんを食べた。パンに葉野菜、果物など。樹根のジムニーも積んでいって、丘の上を走らせて遊んだ。ハードに走らせすぎて、タイヤのネジがとれた…。家に帰ってきても8時とかで、早起きは三文の徳!!と言い続ける家族のみなさん。やっとテラスの塗装が乾いたので、昨日割った胡桃を使ったケーキを焼いて、テラスで食べる。山胡桃はえぐみがなくて、香ばしい。おやつを食べていたらレイコさんが蒔きで茹であげたという大きな筍を持ってきてくれた。すばらしいおすそ分けをいただいたので夕飯は片栗粉をつけて揚げたのと、そのまま醤油をつけるのとで筍三昧。

4月27日

また樹根がゴホゴホヒューヒュー。お昼からダウン。昨夜布団からはみ出し寝てて体が冷えた模様。樹根はとにかく体調を崩しやすい…。こんな時期だし、どうにも不安。天気もどんより寒いし気分が落ち込むのも仕方ない。こんな日もある。花種さんは中島デコさんのお菓子の本を棚からひっぱりだしてきて、イチゴのショートケーキを作りたいって。豆腐クリームのやつ。明日作ろうか、といっているんだけど、樹根は無事回復してるかな…。


4月28日

樹根復活。ふう。ということで豆腐クリームを使ったイチゴのショートケーキを作る。いつも使う甜菜糖もメープルシロップもなくて、黒糖をつかって作ったから茶色い豆腐クリームになった。久々に食べた豆腐クリームを塗ったケーキ、美味しかった。花種さんに担任の先生からきゅうりの種が届いたので植えないと。あと会社(ひょーさんの)の今月の経理をつけないと。なんだか全てが手につかない。テラスをつくった場所の庭の土を運んで、雑草を抜いて。あっというまに夜になってしまう。


4月29日

花種さんは毎日野山を駆け回っている。今日は土手を降りて行って蔓草でターザンして、秘密基地を作って、おやつのクラッカーを食べていたら亀をみつけたそう。基地の中に亀の小屋もつくったらしい。子供時代を謳歌している!って感じの姿が眩しい。存分に全うしてくれよー。



4月30日

今度は近所のともちゃんに筍をもらった。花種さんがコーヒーカスタードを塗ったケーキをつくった。ぷく〜と膨らませたかったからベーキングパウダーを多めにいれた、とのことで、どことなく膨らし粉のにおい強めのケーキとなっておった…。会社の振り込みなどをすませる。緊急事態宣言はもう1ヶ月伸びる見込みと言われてるけど、6月に収まっているとは思えないなあ。わたしたちの今、この先の生き方で未来が変わっていく。そんな時代の局面に生きてるんだな、思う。


5月1日

『パーマカルチャー菜園入門』という本を買ったままなかなか読めていないわたしに変わって、読み進めているひょーさん。本の内容を野外キッチンの設計の参考にしつつ作業。気づけば5月が始まってた。庭のモッコウバラが咲き、トマトの花も咲きだした。

5月2日

朝から花種さんとけんか。バターの散歩紐を買いたいと言い張る花種さん。バターは室内放し飼いだし、庭に解き放ってもいるし、散歩紐必要ありません、とわたしも負けじと言い張り、結果午後まで険悪さを持ち越すことに。企業と個人事業主が申請できる持続化給付金の申請をしようとしたら書類のひとつが税理士さんに作ってもらわないといけなくて、結局連休明けまでできないね…ということに。野外キッチンの雨水濾過を植物の植木鉢を通してやってみることに。雨樋から水を流してみたら、とてもとても汚い水が出てきた…。ほんと濾過できるのかしら。

5月3日

ひょーさんと会話中「こういう言い方したらトゲがたつかな?」と聞かれたので「トゲはたたないかな。たつのはカドかな」と答えておいた。野外キッチンの周りのペンキを塗り直し、カウンター下に置く棚なども制作。樹根は浄化システムとなる植木鉢に石を入れる作業に熱中。砂場遊び的楽しさがあったようです。隣のレイコさんから、掘りたての大きな筍を3本ももらった。茹でたんだけど、前にもらった筍ほどうまく茹でられなかった。筍茹での奥深さ。

5月4日

花種さんが家族を登場人物にした漫画を描きはじめておもしろい。「ひょーたときえたハリボーのなぞ」の一巻ができたというので読ませてもらって爆笑してしまった。夏になるといつものパン屋さんは休業してしまう。ので、それまでにパンを焼けるようになりたい、ということでレーズンで酵母起こし。野外キッチンが完成!したんだけど、実際水を通してみるとあらゆるところから漏水…。「インフラの偉大さがわかる… 」とひょーさん。微調整に次ぐ微調整が続きます。

5月5日

こどもの日。樹根の飾りは兜ではなく、一刀彫で作られた桃太郎。なんだかすっかり飾るのを忘れてて、当日に飾るっていうね。モッコウバラを少し切って一緒に飾った。野外キッチンの微調整は続く。ご近所さんに掘りたての里芋と八頭をいっぱいもらい、種芋にもなるというので何個か植えてみようと思う。こどもの日のお祝いは大和家さん(近所の無添加中華料理屋さん)の総菜豪華盛り合わせとお赤飯!!あとは桑の葉の粉末があったのでそれを使ってケーキを焼いた。ほんのり抹茶的味わい。夕ご飯の後、樹根のジムニーに乗って夜散歩。どうか、健やかに育ってね。


5月6日

漏水ポイントを調整して、今度こそ野外キッチン完成!うまい具合に雨も降り、タンクもパンパンに。ということで、野外キッチンでカタネコーヒー、そしてキッチンに合わせて作ったテラスで朝ごはんをしよう!と張り切るも、いざ使ってみたら、水の勢いが良すぎて跳ねたり飛び散ったりとトラブル続出。なんとかごはんにありついたのはお昼も近くなってから。そして濾過力には疑問が残るので、結局コーヒーの水は家のものを使ったけれど、野菜を洗ったり、手を洗ったり、植物に水をあげたり、飲用以外にも存分に役立つ雨水タンク。てんやわんやしたのも含めて、とてもたのしい朝昼ごはんだった。


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中村俵太(ひょうた(父/夫)

「HYOTA」として空間デザインを生業に活動しつつ、家族と一年誌『家族』のクリエティブディレクターも担当。決断力と実行力はあるけど計画や段取りは非常に苦手。人見知り。日本生まれ日本育ちなのに日本語がおかしい。極めて楽天的でポジティブ。

中村暁野(あきの(母/妻)

家族と一年誌『家族』編集長。家族や生活をテーマに執筆活動も行なっている。ズボラでめんどくさがりな反面、理想を追って突っ走りがち。でもその突っ走りによって人生動かしてきたという自負もあるので、引き続き突っ走る気まんまん。

中村花種(かたね(娘)

繊細で敏感、パワー溢れる9歳児。両親への巧みな口答えのバリエーションは一休さんのとんちさながら。大人をまじまじと観察して急所を突く発言をするのも得意。極度の内弁慶だったけれど藤野暮らしの中で日々日々壁を越え、自分を伝える力を身につけ中。

中村樹根(じゅね(息子)

マイペースでごきげんな3歳児。道行く人に誰彼構わず話しかけては何かをもらってきたりする。ここぞという時に病気になりがち。今のところ3回の誕生日のうち2回は寝込んで迎えている。食べるの大好き。姉とはトムとジェリーのような関係。

バター(うさぎ)

花種さんの膝に飛び乗るすきを常に伺っている、アメリカンファジーロップのオス。愛故に、毎日花種さんにおしっこをひっかけるのが家族の悩み。


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