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現地に行くのが叶わないなら、妄想旅行へ! いまのうちに、ベトナム愛をたっぷりと育んでおきましょう。20年来ベトナムに通い続けている『ホーチミンのおいしい!がとまらない ベトナムの食べ歩きガイド』著者3人が、同書に収録しきれなかったあれこれを綴ります。ディープすぎて、ごめんなさい。

タイトルデザイン:岩淵まどか(fairground)
イラスト:阿部伸二(karera)


こぼれ話4

嗚呼、愛しのヌックマム

写真・文/鈴木珠美


ベトナム料理に欠かせない調味料といえば、ヌックマム。和食でいうところの醤油と同じように、ベトナム料理において圧倒的な存在感を放っています。ベトナム人は、おかずがないときには白いごはんにヌックマムをかけて食べるくらい。そんなところもまた醤油的なんですよね。



こちらは輸入されている商品として日本で手に入る、フーコック島産のヌックマム。


どんな魚でも(イカでも!)素材になり得るのですが、ヌックマムはカーコム(Ca Com)というカタクチイワシでつくられるのが一般的。朝どりの新鮮なカーコムとミネラルたっぷりの天然塩をカメに入れ、半年から1年間ほど寝かせて自然発酵させれば完成。日本のしょっつる、タイのナンプラー、イタリアのガルムなど、各国の魚醤と基本的な製法は同じです。

加熱処理されていない一番搾り、いわゆる“生”ヌックマムは、クリアで美しい琥珀色。つけダレなどとして、そのまま食します。生醤油やエキストラバージンオイルみたいな扱いですね。そこから二番搾り、三番搾りとグレードが落ちていき、こちらは炒め物や煮物などの加熱する料理に使われます。四番搾りは、肥料として。最後まで無駄なく使いきります。



貝専門店「オック ダオ」(『おいしい!がとまらない』P.103)で供されるニョクチャム。
ニョクチャムとは、ヌックマムに酢や唐辛子を混ぜた万能だれのこと。
こうやって生でヌックマムを食す場合は一番搾りであってほしい。


ところで、ベトナムは精進料理やベジタリアン料理が盛んなのですが、ヌックマムは魚由来のため、これらの料理には使うことができません。しかし冒頭に書いたとおり、ヌックマムはベトナム料理の命ともいうべき調味料。では、どうするのかというと……なんと、パイナップルを発酵させた、ベジタリアン用のヌックマムがあるのです! これが案外、再現性が高くて、味もイケるんです。私の店(kitchen.)でも重宝しています。




意外に知られていませんが、ヌックマムは万が一漏れたり割れたりしたら大惨事(魚の発酵臭は強烈!)になるので、基本、国外持ち出し禁止の食品。くさややドリアンがダメなのと同じ理由ですね。最近はどうやら受託手荷物などで預かってくれるLCCもあるようですが、やはり基本的には機内持ち込みはできないと考えておいたほうがよさそう。特産地として名高いフーコック島産のヌックマムのなんて、ベトナム土産として最適なのですが。そういうわけで、土産選びの際にはご注意を!




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鈴木 珠美(すずき・ますみ)

東京・西麻布のベトナム料理店「kitchen.」オーナーシェフ。料理留学のためベトナムに滞在した2年間を糧に、帰国後「kitchen.」をオープン。野菜やハーブをたっぷり使ったベトナミーズを提供している。出産後もベトナム通いはとまらず、双子の子どもたちとの「子連れベトナム旅」の知識と経験を順調に蓄積中。著書に『越南勉強帖』(ピエブックス)、『ベトナムおうちごはん』(扶桑社)など。著者3人をバレーボールチームにたとえると、エースアタッカー。新進気鋭のもの、センスのいいものへの鼻が利く。
www.instagram.com/kitchen.nishiazabu


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