雑草野草

19 ユキノシタ


越してきた庭で、新しい植物に出会うことほど嬉しいものはありません。思ってもみない偶然の出会いがあるからです。葉っぱがあんまりかわいらしいので調べてみたら、なんと食べられる雑草だったということがありました。それがユキノシタです。

丸い葉っぱがかわいい
ユキノシタは、半日陰の湿った場所に生えます。庭先でもよく見かけます。

実家は一般的な住宅地にありながら、風通しと日当たりが抜群で、庭もカラカラに乾いていました。湿気とも無縁で、一人暮らしして初めて物がカビることを知ったぐらいです。そんな環境下ではユキノシタは育たなかったのか、出会ったことがなかったのです。

私は、この初めて出会ったかわいらしい葉っぱに心を奪われました。肉厚で、触るとふにゃっと柔らかい。まるで赤ちゃんが手を広げたような 感触とルックスです。触って、眺めて、かわいいねえと何度、声をかけたことでしょう。

赤ちゃんの手のひらのよう

ユキノシタの面白いところは、ランナー(地上近くを這って伸びる茎のこと。匍匐枝(ほふくし)走出枝(そうしゅつし)とも)を伸ばして増えていくことです。葉っぱの側から伸びる、赤い糸のようなものがランナーです。ランナーで増えていく仲間で、皆さんが目にすることが多いものにイチゴがあります。このランナーを自由に伸ばせる環境があれば、勝手にどんどん増えていきます。

2本の赤いランナーが見えます

ランナーの先にはたいてい別の株が育っています。もしユキノシタを育てたいなと思ったら、お友達の庭などから新しい株をもらってきて植え付けるのがおすすめです。簡単に根付き、しばらくするとまた次のランナーを伸ばすことでしょう。

30㎝先に赤ちゃんが生まれていました!

初夏には可憐な花を咲かせます。ちょうどドクダミが花をつける頃と同時期です。日本の家庭の庭にはほぼ間違いなくドクダミが生えているのではと思います。ドクダミの白い花に紛れて目立たないのですが、よく見ると一生懸命に背を伸ばしている白い小さな花があります。これがユキノシタの花です。小さく細く薄い花びら。密やかに咲く姿が、とてもいじらしい存在です。

花びらのつき方も美しい

さて、ユキノシタを美味しく食べるなら、なんといっても天ぷらです。おひたし、和え物などにもできますが、肉厚な葉を存分に楽しむことができる天ぷらが、ダントツの美味しさでした。

葉っぱを収穫する際には、根がとても浅く、簡単に株ごと抜けてしまうので、葉の茎を折って摘むことがポイントです。

その美味しさに開眼してからは、いそいそと庭に出てはユキノシタを収穫するようになりました。いえ、ユキノシタだけでなく、他にもまだ知らない美味しいものが生えているのでは?という期待もありました。

私と暮らし始める前までは、いたって普通の食生活をしていた夫が、また得体の知れない草を食べさせられるのかと、背後から心配そうに覗いていたことを思い出します。

その姿にちらりと目をやりながらも気づかぬふりをして、私はせっせと庭の草を採取しては、天ぷらにして出し続けたのでした。

私が庭を楽しんで来られたのは、不信感を抱きつつも、謎の食卓につきあってきてくれた夫のおかげでもあるかもしれません。これからも時々、得体の知れない草をともに囲んで、夫婦円満にやっていけたらと思います。

ユキノシタの天ぷら
ユキノシタの天ぷら
【材料】(作りやすい分量)
ユキノシタ 10枚
薄力粉と冷水 同量
揚げ油(米油など) 適量


1)ユキノシタは水でよく洗う。ザルにあげて水分を切る。
2)薄力粉と冷水をさっと混ぜ、衣を作る(粉っぽさが残っても良い。)
3)ユキノシタの葉の裏側に衣をつけ、170度に熱した油で揚げる。


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良原リエ

音楽家。アコーディオニスト、トイピアニスト、トイ楽器奏者として、映画「ターシャ・テューダー 静かな水の物語」、NAOTのショートムービー「ナオトのリズム」をはじめ、TV、アニメ、CM、ミュージカルなどの演奏、制作に関わる。トイ楽器を用いたライブやコンサート、子ども、親子向けの音楽会、ワークショップなども多数行っている。著書に『まいにちの子そだてべんとう』『たのしい手づくり子そだて』(アノニマ・スタジオ)『トイ楽器の本』(DU BOOKS)など。
instagram ID : rieaccordion
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