アノニマ・スタジオWebサイトTOP > 京都暮らし ケときどきハレ日記 もくじ > 02 京都を歩けば、祭りにあたる。

02 京都を歩けば、祭りにあたる。


葵祭。京都御苑から下鴨神社、上賀茂神社まで巡行
一年中、どこかでなにかしら行事をやっている。
そんな京都ですが、5月はことさら
祭りが多いように感じます。
京都三大祭、葵祭があるのも5月。
町を歩けば、祭りにあたる。
と、言いたくなるほどです。


藤の花で飾られた、葵祭の牛車
京都にいるとあんがい観光しないもので、
京都三大祭も同じく、
「人でいっぱいやから」「毎年やっているし」
……と、あえて避けて通っていました。
けれども、年を重ね、「見ていないのもなあ」と、
ひょいと葵祭へ行ったのが、気持ちの変わり目でした。




こうしてみんなの手で!
藤の花で飾られた牛車。
美しい伝統色の衣装。
色とりどりの花を飾った風流傘。
ひとりひとり、牛車までも、
ご神紋でもある、葵を身につけて、
巡行が神事であることを、静かに伝えます。
目の前で見て、感じるさまざま、
知りたくなるあれこれ。
若いときとは違う、心の高鳴りがありました。



人出はもちろん多いですが、
巡行はとても長いので道中、どこかで出会えればいい。
人ごみも、じっと待つのも苦手な性分だけれど、
そう思ったらすっかり楽になり、
ゆるやかに、できるときに、
いろんなお祭りを追っかけるようになりました。


八大神社の神幸祭。
五色の色紙を結い付けたサンヨウレホウキを持って練り歩く
5月は、
神社の神幸祭しんこうさい還幸祭かんこうさいがつづく、祭りどき。
ご祭神のご分霊をお神輿にのせて巡行し、
氏子が神様をお迎えします。
氏神様が
「やあやあ、元気にしていますか?」
と町をめぐり、
「神様、いつもおおきに、ありがとうございます。
この一年もよろしくお願いいたします」
と、氏子たちがお迎えする。
神様と氏子を結ぶ、地域の大切なお祭りです。


八大神社の神幸祭、剣鉾巡行
昨年、初めて観た八大神社の神幸祭は、
神輿巡行の先頭を「剣鉾けんほこ」が務め、
沿道を清めていきます。
剣鉾の長さは6〜7m。
腰に付けた差し袋に差して立て、
前後左右に揺らしながら歩くのですが、
一筋縄でいかないことが、
実際に見るとよくわかります。
交代しながら、一歩一歩。
霊魂を鎮めるという鈴の音を
鳴らしながらいく姿に、じんとしました。



巡行中の、のどかな休憩時間
新日吉神宮の神幸祭では、
子どもの武者さんから思いがけず
厄除のちまきをもらって、うきうきとうれしく、
松尾大社の還幸祭では巡行の休憩で
神輿の担ぎ手さんたちがお弁当を食べたり、
昼寝をしたりする姿にほのぼのとして……。
情報がなんでも手に入る世の中ですが、
行ってみて、はじめてわかることが
お祭りにはまだまだあって、
だから追っかけたくなるのかもしれません。

お祭りの日のごちそうと言えば、鯖寿司
そして、
あらためて大事に思う、自分の町の氏神さん。
うちの氏神さんは古くからの神社で、
電車に乗らなあかんほど離れているのですが、
やっぱり5月にお祭りがあって、
遠くともなんのその、お神輿がやって来ます。
お祭りはハレの日、
うちは大げさなことはしませんが、
ハレのごちそうに鯖寿司を楽しみます。
「今でも、この日はようけ注文をいただきます」
と、祇園のお寿司屋さんが
そういえば言うてはりました。

ケ=いつもの毎日が平穏無事につづいていくように
願いを込めた、感謝と祈りの日。
一年に一度、京都が隅々まで、清められているのだと思うと、
ただただありがたくて、ほっと安堵します。
京都へお越しのタイミングと合ったなら、
暮らしを垣間見に、ぜひ。


藤森神社の駈馬神事
開催の日にちは年によって違うこともありますが、
2018年の予定をいくつかご案内しておきます。

2018年

松尾大社


4月22日(日)神幸祭(おいで)
5月13日(日)還幸祭(おかえり)

藤森神社


5月5日(祝)藤森祭 神幸祭、駈馬神事

八大神社


5月5日(祝)神幸祭(氏神祭)

今宮神社


5月5日(祝)今宮祭 神幸祭
5月13日(日)還幸祭(毎年5月第2または第3日曜)

新日吉新宮


5月13日(日) 新日吉祭 神幸祭

上賀茂神社

下鴨神社


5月15日(火)葵祭(雨天順延)

京のおやつ


愛しの、門前名物
寺社参拝の楽しみが、門前名物。下鴨神社ならみたらしだんご、今宮神社のあぶり餅、北野天満宮は粟餅……。いずれもシンプルで、これでないと、というおいしさ。中でも家族代々ファンなのが、上賀茂神社そばの神馬堂のやきもち。もっちりやわらかく、粒あんとなじむ。素朴やけど、その塩梅が絶妙で、ほかにない。これぞ職人さんの加減やなあと思います。かたくなったら炙ると、香ばしくて、あんもほくほく。昼前に完売するほど愛されるお店、ここはお参りより先に行ってしまいます。

著者プロフィール

宮下亜紀(みやした・あき)

京都に暮らす、編集者、ライター。
出版社にて女性誌や情報誌を編集したのち、生まれ育った京都を拠点に活動。「はじめまして京都」(共著)のほか、「イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由」(イノダコーヒ三条店初代店長 猪田彰郎著)、「絵本といっしょにまっすぐまっすぐ」(メリーゴーランド京都店長 鈴木潤著、共にアノニマ・スタジオ)、「雑貨店おやつへようこそ 小さなお店のつくり方つづけ方」(トノイケミキ著、西日本出版社)など、京都の暮らしから芽生えた書籍や雑誌の編集を手がける。
www.instagram.com/miyanlife/


アノニマ・スタジオWebサイトTOP > 京都暮らし ケときどきハレ日記 もくじ > 02 京都を歩けば、祭りにあたる。