第12回 ザリガニ~ザリガニを飼ってみよう編~



 ザリガニ釣りが楽しいシーズンになりました。暑すぎず、寒すぎの心地の良いこの気候が、ザリガニ釣りにピッタリなのです。何も予定のないお休みには、幼い息子と近所の公園の池へよく出かけたことを思い出します。簡単な道具があれば誰でも楽しめますから、親子でぜひチャレンジして欲しいと思います。詳しいhow to はこちらを参考にしてくださいね。

 ザリガニ釣りで釣れるザリガニは、外来種であるアメリカザリガニがほとんどです。特定外来生物に指定されているので、釣ったり、その場でリリースするのは問題ないものの、持ち帰った場合はそのザリガニが死ぬまで責任を持って飼わなくてはなりません。飼った後で、釣ったその場所に戻すことも禁じられています。

 そうなると、ザリガニ釣りを楽しんだ後は、その場でリリースするのが一番です。でも、子ども達が理解してくれないこともありますよね。小さなお子さんが「おうちにもってかえる!」と号泣する場面を何度見たことか。

 でも、ザリガニを飼うのはそんなに大変ではありません。なんといっても、ザリガニ自身が丈夫だからです。息子の興味に付き合っていろいろ飼ってきましたが、最も飼いやすい生きもののひとつです。やむにやまれぬ状態で連れて帰ることになってしまったザリガニは、ご縁だと思って飼ってしまいましょう!

●用意するもの

  • 水槽、または飼育ケースなど
  • 底に敷く砂や小石
  • ザリガニが隠れられる場所(素焼きの鉢、石や貝など)

 生きもの好きのお子さんなら、カブトムシなどを飼った飼育ケースがあるかと思います。そこに砂や小石などを薄く敷き、水道水を5cmほど入れれば完成です。ひとまずであれば、砂や小石がなくても問題ないので、ケースに水を薄く入るだけでもOK。ザリガニは触角の根元に砂を入れることで、体のバランス感覚を調節するそうなので、のちのち用意しましょう。また、物陰に隠れる習性があるので、隠れる場所は必須です。水に入れておいても問題ないものを何か探してみてください。

 水は水道水で問題ありません。メダカや金魚などを飼う場合は、水道水に含まれる消毒用の塩素(カルキ)を抜く必要があります。汲み置きしたり、日光に当てたり、塩素中和剤を使用します。もちろんそうした方がザリガニにとっては優しいのでおすすめしますが、結論から言ってしまうと、水道水で特に問題はありませんでした。これだけでも飼うハードルが低くなるのでは? 我が家の場合は、水道水をそのまま使って飼育していましたが、なんと丸々3年間も生きました。カルキ抜きよりも、水質が悪化する前にきれいな水に替える方が大切なのかもしれません。

飼っていたザリガニのザリー

 水を深くする場合は、酸素を送るために水槽ポンプが必要です。ですが、水を浅くするなら必要ありません。水が浅ければ、ザリガニは自分で呼吸をしに水面に上がります。水を頻繁に替える必要はありますが、ポンプなどを用意することなく、手持ちのものですぐに飼い始めることができますよ。

 ただし、小さな飼育ケースには1匹が原則。共食いをしてしまうので、数匹の場合には、大きな水槽にポンプを付けて飼うようにします。

●ザリガニの呼吸法

 ザリガニにはザリーと命名しました。ザリーを観察してもっとも面白かったのは、水が浅い場合の呼吸法です。ザリガニは、水に濡れていれば陸でも呼吸ができる、特殊なエラを持っているのだそう。ポンプなしで飼うと水中の酸素が不足するので、エラから空気を取り込むために、横向きに水面に浮かぶのです。

呼吸するザリー


 初めてこの光景を見た時、ザリーが死んだ!と息子とともに大騒ぎしてしまいました。金魚のように、死んで水面に浮かびあがったのだと思ったのです。でもしばらくすると、またいつも通りのザリーの様子に。この時、二人で調べて呼吸するために浮かぶということを知ったのでした。

こんな感じで浮いています

●脱皮

 実は、ザリガニが死んだ!と大騒ぎしたことがもう一度ありました。それは脱皮後の抜け殻を初めて見た時です。抜け殻が水中にふわふわと漂っていて、またしても死んだ!と慌ててしまったのです。ザリガニは昆虫、エビやカニなどは節足動物(体の外側に骨格と関節を持つ生き物)で、体の表面を覆う硬い組織を、ひとまわり成長するために脱ぎ捨てるのです。

触覚も見える抜け殻

 脱皮したあとの抜け殻をよく見てみると、触覚の先まできれいに抜けているのがわかります。こんなにきれいに抜けるなんて驚くしかありません。きれいに脱皮できないとこの後に生きていくことも難しくなりますから、ザリガニにとっては命懸け。もし、脱皮をしている最中に見かけたら、そっと観察するだけにとどめましょう。

 そして脱皮後の殻は、そのまま置いておきます。餌として食べます。

脱皮した後は色に変化が

●ザリガニの色

 ところで、ザリーの色が薄いことにお気づきかと思います。ザリーは東京農大の子ども向け講座でいただいたザリガニなのです。アメリカザリガニの色は赤と思われていますが、これはザリガニが食べる獲物に含まれる赤色の色素によるものなのだそう。だから赤色色素が含まれていない餌を与え続けると、赤からだんだんと薄くなり、最終的には白色になるそうです。

 私たちはこの講座で白色のザリガニを貰いました。そして、黄色の色素を餌に加え、与えてみることに。するとこんな風に黄色のザリガニになったのです。

餌を食べる白いザリー


黄色くなったザリー

 その後、ある程度大きくなったところで、市販のザリガニの餌を与えることに。すると黄色はだんだんと薄れていきました。

 選ぶ色素によっては、青色やピンクなどどんな色のザリガニも作ることができるそうです。これは自由研究の題材としても面白そうですね。

●餌

 餌もあまり苦労しません。煮干しや貝、菜っ葉など台所にあるもので賄うことができます。ザリーはシラスや桜海老をよく食べました。市販のザリガニの餌も容易に手に入るかと思います。いずれにせよ、餌で水が汚れてしまうので、食べ残しがないように多くは与えないようにします。水はだいたい1週間に1度、真夏は数日に1度は変えるようにしていました。

 餌を食べている時は観察のチャンスです。物陰から出てきてくれますし、餌に夢中で無防備になるからです。ザリガニは大きなハサミが印象的ですが、他にも小さなハサミがたくさんあることを知っていましたか? それらを器用に動かし、食べていきます。掴み損ねて手放したシラスも、難なく取り戻しました。

一度落としたシラスを取り戻し、美味しそうに食べるザリー

小さなハサミはとても重要

 環境が合えば、ザリガニは長生きします。脱皮を繰り返し、大きくなっていく様子はとても楽しい観察になります。餌を食べる姿はかわいいですし、脱皮がうまくいくとこちらもほっとします。お世話の手間はさほどかからず、スペースも取らないので何か飼いたいという子どもの願いを叶えるのには、ちょうど良いのではと思います。

 繰り返しになりますが、アメリカザリガニは条件付特定外来生物ですので、一度飼うことに決めたら、死ぬまで飼いましょう。

●ザリガニ釣りはOK

●釣ったザリガニをその場でリリースはOK

●釣ったザリガニをペットとして飼うために持ち帰るのもOK

●持ち帰ったザリガニをやっぱり飼うのをやめた!とリリースするのはNG


 詳しくは環境庁のwebで確認をお願いします。

 どんな生きものでもそうですが、命を預かるのですから、最後まで快適に暮らせるようにお世話をしましょう。アメリカザリガニの場合、夏の暑さ、冬の寒さはあまり得意ではないので、エアコンをつけている部屋で飼ってあげるのが良いかなと思います。元気そうかどうか必ず毎日、ご機嫌を伺ってくださいね。それが日課になれば、まるで死んでいるかのようなエラ呼吸や、神秘的な脱皮の世界を楽しめますよ。

つぶらな瞳がかわいいザリー

レッツエンジョイザリガニライフ



見つけやすさ★★★★
飼いやすさ★★★★★
つぶらな瞳が
かわいい度
★★★★★



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プロフィール

良原リエ

音楽家。アコーディオン、トイピアノ、トイ楽器の奏者として、Eテレ「いないいないばあっ!」の音楽をはじめ、映画やテレビ、他アーティストの楽曲などの演奏、制作に関わる。インテリア、庭づくり、ハンドメイド、リメイク、子育てなどライフスタイル全てが活動・表現の場になっており、親子、子ども向けのワークショップ、イベントプロデュースなども行っている。著書に「食べられる庭図鑑」「たのしい手づくり子そだて」「まいにちの子そだてべんとう」(アノニマ・スタジオ)「トイ楽器の本」(DU BOOKS)など多数。
instagram ID : rieaccordion


良原リエさんの本

もういちど育てる庭図鑑
【シリーズ第二弾!】

育ててたのしい、食べておいしい、88品種のリボベジ(再生栽培)図鑑。豊富な実践例と、育てることが楽しくなるエピソードを交えながら、狭いスペースでも育てる方法や、おいしい食べ方を載せています。『食べられる庭図鑑』の姉妹版としてもオススメです!



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広い庭がなくても大丈夫! 小さな庭やベランダで始められる、家庭菜園や庭作りのアイデアをたっぷり紹介。「野菜」「ハーブ」「果樹」「雑草・野草」など、育てて楽しい、食べて美味しい植物88種と簡単なレシピを掲載。一年を通して自然に親しむ暮らしを提案します。





たのしい手づくり子そだて
―リメイクと遊びのアイデアブック―

子どもになにか手づくりして上げたいおかあさんたちに、もっと手軽に気楽に手づくりを楽しんでほしいという良原リエさんの想いが込められた、実用アイデアブックです。センスが光る古着の形や素材を活かして作る簡単リメイクは、ものを大事に受け継ぐ気持ちと、手づくりの楽しさや自由さを教えてくれます。子どもとのかけがえのない時間を手づくりでいっしょに楽しむ、季節ごとの遊びもご紹介しています。




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