第14回 カマキリ〜孵化と飼育編〜



 カマキリのかっこよさに惚れ惚れするのは、赤ちゃんの時期を知っているからだと思います。カマキリの赤ちゃんのかわいさと言ったら! 言葉では言い尽くせないほどです。あんなに小さかった赤ちゃんがこんなに立派になるなんて!という、子や孫の成長ぶりに目を細めるような気持ちになってしまうからです。

茶色もかっこいいですね。色は遺伝で決まるそうです

 秋の繁殖期に産みつけられた卵はそのまま越冬し、春が来て、十分にあたたかくなった頃、東京ならゴールディンウィークあたりに孵化します。観察のために、飼育ケースに入れておいたところ、GW初日に卵に変化が。

もう出てきていました!

 よく見ると、たくさん出てきています。しかもどんどん出てきます。後ろから押されるように出てくる子、出てきたけどどうしたらいいかわからなくてその場に止まってとどまる子、え? そこから?という場所から顔を出し、自力で穴をあけながら出てくる子、数分眺めていただけなのに、大渋滞になってしまいました。

次から次から出てきます

あっという間に大渋滞に

 この大渋滞は、卵を飼育ケースの中に置いていたから起こったことだと、後になってわかりました。本来ならオオカマキリの卵は枝や茎などに産みつけられていて、卵から出てきた赤ちゃんは糸を垂らしながらぶら下がり、地上に降りていくのです。それができなかったので、大渋滞を引き起こしてしまったのですね。

このような場所にあれば渋滞にならず、自然に降りて着地します

 赤ちゃんたちには申し訳なかったけれど、どうにかみんな出てきて、思い思いの方向に散らばっていきます。みんな頑張って生きていくのだよ!と声援を送らずにはいられません。
それぞれに旅立って行きました

 さて、次の日、赤ちゃんたちはどうなったかな?と心配になって見に行くと、まだすぐ近くにいました。でもよく見てみると色が変わっています。産まれたばかりでは薄い黄色でしたが、茶色になっています。これは、卵から出た時にぶら下がる糸のようなものが薄い膜で、地上に降り立つ際にこれを脱ぎ捨て、最初の脱皮が完了するからだそう。茶色の赤ちゃんは、無事、脱皮が完了した1齢のカマキリということなんですね。

茶色くなった赤ちゃんたち

 赤ちゃんたちは、おそらく気付かぬうちに脱皮は完了しているものの、産まれたばかりだからか何をどうしていいかまったくわからない様子。動いている子もいますが、多くはただじっとしています。

もうぶら下がっている子たちも!

 動かないので、まるでミニチュアサイズのおもちゃみたいです。私が近づいても逃げようともしません。まだ人間に対してこわいという認識もないのかもしれません。ああ、なんてかわいいんでしょう!

ミニチュアサイズのカマキリたち。めちゃくちゃかわいい

 数日経ってようやく、少しずつ赤ちゃんたちは移動を始めました。旅立っていくのは嬉しいことですが、問題はいつの間にか部屋やテラスにいること。庭を歩く私の服についてきてしまったのかも。思わぬところにいるので、しばらくは注意しながらの生活となりました。

こんなところに

こんなところにも

潰さないように1匹ずつ連れ出しました

 そしてこんなにたくさん産まれた赤ちゃんたちですが、脱皮を繰り返すうちに、あっという間に数が減っていくことに気づきます。200〜300匹は産まれたであろう赤ちゃんは秋には3〜4匹になってしまうのです。一度にたくさん産まれるということは、生き残りが難しいということですね。

少し大きくなったかな。アブラムシを狙っています

かなりスラリとしてきました

成虫になるまで6〜8回脱皮するそう

 ある年、「赤ちゃんいっぱいいるから、成虫になるまで虫籠で飼ってみるのは?」と息子が言ってきました。すぐに死んでしまう赤ちゃんを見て、天敵に襲われにくくなるまで、できるだけ育ててみようということです。

 早速、赤ちゃんカマキリを飼育ケースに入れ、実験開始。カマキリは動くものを餌と認識するので、生きた餌をあげることが必須。毎日、庭に出ては大きな網を振り回し、蚊や蠅などを捕まえて与えることになりました。

この大きさから育て始めました

供給したハエを狙っています

 毎日の餌の確保はそれなりに大変でしたが、何度か脱皮を繰り返し、カマキリは大きくなっていきました。でも、やっぱり餌が足りないのか、庭にいる自然に育ったカマキリに比べるとどう見ても小さい。だから、成虫になるのを待たず、庭に逃がそうと息子と話し合いました。育てていた2匹のうち1匹は、ちょうど脱皮をしているところだから、脱皮が終わったらねと。

 でも、その脱皮がうまく行きませんでした。カマキリの後ろ脚が曲がってしまったのです。なぜだろうと動画を見返してみると、脱皮の際に皮が脚からきれいに抜けていなかったことがわかりました。もしこれが飼育ケースの外だったなら、風に吹かれて外れたかもしれません。

見返すと胸が痛みます

 脚が曲がってしまったのは、飼育ケースに閉じ込めた私たちのせいでした。申し訳ない気持ちでいっぱいになり、もうカマキリを飼うなんてことはしないと息子と誓ったのでした。

 このカマキリは脚が曲がってしまったこともあってかそう遠くにはいかず、テラス近くのアーチの上が定住場所になりました。毎日、探しては声をかけました。2週間ほどは生きていたと思います。短い間だったけれど、外で暮らすこともできたことが唯一の救いでした。

ファイティングポーズを決めてくれました

アーチの上で過ごすカマキリ

息子ともよく遊びました


 カマキリに限らず、どの虫もとても魅力的でかわいくて、手元に置いておきたくなることがありますよね? でもやっぱり飼うのは短い時間に止めておくほうがいいようです。ある程度観察したら、なるべく早く元いた場所に放つことが最善だと感じます。

 カマキリの場合なら、卵の時点からできれば屋外の植物などにくくりつけ、孵化後にきちんとぶら下がれる場所に。幼虫や成虫なら少しの間だけ遊んだり、飼育ケースにいれて観察しても、なるべく早く元にいた場所に放すこと。もし、放したすぐ後に天敵に襲われて短い生涯になったとしても、それが彼らの人生です。小さな飼育ケースの中では、彼らの本来の人生を邪魔するだけだなとつくづく思ったからです。

 それでもカマキリたちと触れ合う時間は本当に宝物。立派に成長していく姿に心打たれますし、翌春に、次の世代に会えればこんなに嬉しいことはありません。

夜の黒目もかわいいです

飼育ケースにいれたカマキリを観察する子ども達

見つけやすさ★★★★★
飼いやすさ★★
赤ちゃんの時期が
かわいすぎる度
★★★★★



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プロフィール

良原リエ

音楽家。アコーディオン、トイピアノ、トイ楽器の奏者として、Eテレ「いないいないばあっ!」の音楽をはじめ、映画やテレビ、他アーティストの楽曲などの演奏、制作に関わる。インテリア、庭づくり、ハンドメイド、リメイク、子育てなどライフスタイル全てが活動・表現の場になっており、親子、子ども向けのワークショップ、イベントプロデュースなども行っている。著書に「食べられる庭図鑑」「たのしい手づくり子そだて」「まいにちの子そだてべんとう」(アノニマ・スタジオ)「トイ楽器の本」(DU BOOKS)など多数。
instagram ID : rieaccordion


良原リエさんの本

もういちど育てる庭図鑑
【シリーズ第二弾!】

育ててたのしい、食べておいしい、88品種のリボベジ(再生栽培)図鑑。豊富な実践例と、育てることが楽しくなるエピソードを交えながら、狭いスペースでも育てる方法や、おいしい食べ方を載せています。『食べられる庭図鑑』の姉妹版としてもオススメです!



食べられる庭図鑑

広い庭がなくても大丈夫! 小さな庭やベランダで始められる、家庭菜園や庭作りのアイデアをたっぷり紹介。「野菜」「ハーブ」「果樹」「雑草・野草」など、育てて楽しい、食べて美味しい植物88種と簡単なレシピを掲載。一年を通して自然に親しむ暮らしを提案します。





たのしい手づくり子そだて
―リメイクと遊びのアイデアブック―

子どもになにか手づくりして上げたいおかあさんたちに、もっと手軽に気楽に手づくりを楽しんでほしいという良原リエさんの想いが込められた、実用アイデアブックです。センスが光る古着の形や素材を活かして作る簡単リメイクは、ものを大事に受け継ぐ気持ちと、手づくりの楽しさや自由さを教えてくれます。子どもとのかけがえのない時間を手づくりでいっしょに楽しむ、季節ごとの遊びもご紹介しています。




まいにちの子そだてべんとう

子どもの心と体と成長を考えた良原リエさんのおべんとうは、彩りとバランスのよさが特徴的です。繊細な舌を持つ子どもには、素材を生かしたシンプルな調理がいちばん。素材や調味料にはこだわるけれど、手間ひまはかけません。写真と日記で綴る毎日のおべんとうのアイデア、食卓にもおべんとうにもぴったりな定番おかずやおやつのレシピを紹介。卵、乳製品、砂糖不使用なのもうれしいポイントです。そして子育ての日々のなかで見つけ、感じたあれこれをコラムに綴っています。




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