第8回 カブトムシ 
~幼虫編~


 先月、最後のカブトムシが亡くなりました。11月まで生きていたので、かなり長生きだったと思います。

 息子がカブトムシを飼うまで、カブトムシの寿命がこんなに短いとは知りませんでした。寿命はおおよそ1年。ほとんどを幼虫で過ごし、成虫でいるのは長くて3ヶ月、短い場合は1ヶ月ほど。誰もが知っている角のついた姿でいるのは、気温の高い夏の短い期間だけなのです。なかなか出会えないからこそ、多くの子どもたちに人気があるのかもしれません。

 物心ついた時から生きもの好きの息子ですが、カブトムシとの出会いはつい最近のことです。庭にチョウをはじめとする生きものがたくさんやってくるので、わざわざどこかに探しに行こう!という状況にならなかったからです。私自身も幼少期に捕まえたことも飼ったこともなく、二人ともカブトムシに関してはまったくの無知。経験者である息子の友達に教えてもらいながら、手探りで付き合っていくことになりました。

今年生まれたカブトムシ

 去年の夏休みのこと。東京農大の子ども講座で、カブトムシの標本作りを体験しました。死んでいるとはいえ、初めて実物に触れ、すっかり心を奪われました。やっぱりビジュアルがいい。スラリとした角はなんとも魅力的です。飼ってみようかなどと話しながら帰路につく途中、通りすがりのお店に「お米5kgを飼ったらカブトムシあげます」と書かれたポスターを発見。こんな運命の出会いがあるでしょうか! 結果、重たいお米を私が担ぎ、息子はケースに入ったツガイのカブトムシを抱えて帰ることになりました。


カブトムシの標本


初めてのカブトムシ


嬉しすぎた息子がケースを色とりどりに装飾

 ツガイのカブトムシを入手したのは8月の頭でした。夏の間、二匹は狭いケースの中でも、とても元気に活動していました。交尾を何度もしているようでした。市販の昆虫ゼリーを与え、大切に見守っていましたが、いずれも9月末に亡くなってしまいました。今思うと、飼うのが初めてだったこともあり、環境作りに改善の余地があったかもしれません。

 2匹が亡くなってしまったので、私達はケースを放置していました。そして10月の終わり頃、何気なくケースを見ると、ムチムチした白い物体がいくつもあることに気づきました。幼虫が産まれ、育っていたのです!

 ツガイが何度も交尾していたことを、すっかり忘れていました。そして幼虫がこんな短期間で大きくなるとも知りませんでした。おそらく8月中には卵が産まれ、9月には二齢になり、私たちが見つけた10月には、既に三齢になっていたのです。無知って恐ろしいですね。驚いて土の中を確認しみると、さらに驚愕の事実が。ひとつのケースになんと幼虫が44匹もいたのです!

 44匹……そんなに産むことも知りませんでした。後から知ったことですが、メスは少なくとも10匹、多い時は60匹も産むのだそう。ああ、どうしましょう。ひとまずこの44匹を死なすわけにはいきません。急いでケースを増やし、近所のカブトムシの幼虫を飼ったことがあるという息子の友達に、どうしたら良いか教えを乞うことに。


去年の秋頃の幼虫


 幼虫はね、土を食べてうんちをどんどんするから、うんちを取りのぞいて、土を変えなきゃダメだよ。この粒々したのがうんちだから。え~うんちだらけだね。ほら、こんなに土が減っちゃってるよ。え~どうしよう、土のストックがないよ。じゃあ、僕のをあげるよ(と言って家に取りに帰って、持ってきてくれました。優しい)

 ああ、やっぱり経験者に教えてもらうのが一番ですね。カブトムシの幼虫は、クヌギ、コナラの腐葉土を食べること。専用の土が昆虫マットという名前で売っているから買うこと(それまでは、お店でいただいた土を使用していました)。土が乾かないように時々霧吹きすること。冬の間は活動がにぶくなるから、そっとしておくこと。冬の部屋は暖かすぎるから、廊下やトイレなどに置くことなど。いやはや勉強になりました。


うんちを取り除くことが息子の仕事に


 おもしろいのは、幼虫のうんちの多くは自然に上に集まるのです。これは幼虫が土の中で移動をするので、細かい土は下に落ち、粒々のうんちは上に上がっていくということだそう。ちなみにうんちは黒い小判状で、カラッと乾いていてちっとも臭くありません。クヌギとコナラの堆肥を食べているので草食ですから、臭くならないのですね。そのため、うんち取りは苦になりませんでした。また、うんちは、カブトムシが土を分解したものですから、植物栽培の素晴らしい肥料になりますね。我が家では庭に戻しましたが、コンテナや鉢などにそのまま混ぜこんでもいいと思います。

 ちょうど今頃の冬の季節は、幼虫たちはのんびりと過ごしています。大きな変化はありません。時々様子を見る程度で問題ないようです。動き出すのは気温が上がるようになってから。実際には3月後半あたりから、気温の高い日に動いているのがよくわかるようになりました。その後は、気温に比例して、幼虫たちの活動が活発になっていきます。もりもりと土を食べ、たくさんのうんちをして、体がムチムチ、パンパンになっていくのです。

ムチムチになった終齢幼虫が土に潜るところ

そして気温が25度以上になると、いよいよサナギになる準備をしはじめます。この頃には体が黄味がかってきます。

色がついてきたらそろそろサナギになる合図

さて、44匹はみんな無事に成虫になれるのでしょうか? 次回は、カブトムシの羽化についてお届けします。


カブトムシ
見つけやすさ★★
飼いやすさ★★★★★
幼虫が勝手に
育っていて驚く度
★★★★★



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プロフィール

良原リエ

音楽家。アコーディオン、トイピアノ、トイ楽器の奏者として、Eテレ「いないいないばあっ!」の音楽をはじめ、映画やテレビ、他アーティストの楽曲などの演奏、制作に関わる。インテリア、庭づくり、ハンドメイド、リメイク、子育てなどライフスタイル全てが活動・表現の場になっており、親子、子ども向けのワークショップ、イベントプロデュースなども行っている。著書に「食べられる庭図鑑」「たのしい手づくり子そだて」「まいにちの子そだてべんとう」(アノニマ・スタジオ)「トイ楽器の本」(DU BOOKS)など多数。
instagram ID : rieaccordion


良原リエさんの本

食べられる庭図鑑

広い庭がなくても大丈夫! 小さな庭やベランダで始められる、家庭菜園や庭作りのアイデアをたっぷり紹介。「野菜」「ハーブ」「果樹」「雑草・野草」など、育てて楽しい、食べて美味しい植物88種と簡単なレシピを掲載。一年を通して自然に親しむ暮らしを提案します。





たのしい手づくり子そだて
―リメイクと遊びのアイデアブック―

子どもになにか手づくりして上げたいおかあさんたちに、もっと手軽に気楽に手づくりを楽しんでほしいという良原リエさんの想いが込められた、実用アイデアブックです。センスが光る古着の形や素材を活かして作る簡単リメイクは、ものを大事に受け継ぐ気持ちと、手づくりの楽しさや自由さを教えてくれます。子どもとのかけがえのない時間を手づくりでいっしょに楽しむ、季節ごとの遊びもご紹介しています。




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