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かぞくのブリコラージュ~自分たちで暮らしを作る、日常の発明記~かぞくのブリコラージュ~自分たちで暮らしを作る、日常の発明記~

文・写真・題字/中村家


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チャプター2

番外編 クリスマスツリー


 ブリコラで作ったものたちはその後、どうやって使われてきたのか、使われているのか。我が家の近況と共に紹介しているこの連載。
今回は番外編をお届けします。




 随分と久しぶりとなってしまった、「かぞくのブリコラージュ」。
 予定ではバスルームを紹介するはずが、できないままに早数ヶ月……。
 「いきあたりばったりで、やりなおしだらけで、勢いまかせ。でもだからこそ退屈じゃない。家のつぎはぎが、暮らしの歴史で、家族の歴史。わたしたちは何度だってやり直す再生家族!」
 と、以前書いたのですが、バスルームは我が家のつぎはぎライフを象徴するような場所のひとつです。
 今まで3回改装を行い、にもかかわらず直すべきところが都度発生し、さらに!改装チャレンジしなくては、という状況の現在なのです……。この数ヶ月、着手できぬまま時が過ぎ……いよいよやっと、年末こそ着手しようというところ。

 なかなか改装できないこの数ヶ月、またまた家族は変化の時を迎えていました。
 一番大きな出来事は、わたしが第三子を妊娠したことです。
 膨らんでいくお腹とその中で育っていく命を感じながら、ここからまた家族に新たな展開がたちあがっていくのだなあと期待と喜びもいっぱい。でも、だからこそ仕事のかたちや家族のメンバーそれぞれの関係も、変化を積み重ねていかなくてはいけません。変化の途中の、うまくいかないことや思うようにできないことも両手いっぱい抱えている真っ只中。




 先日、もみの木を庭から掘り返しました。
 藤野に越してきて森にもみの木がたくさん育っているのをみて、クリスマスに本物のもみの木を飾りたいなあと思いました。
 切っていいよ、といってもらえた木を切らせてもらい、部屋に飾った年もありましたが、一度のクリスマスのために切ってしまうより、育てたらいいのでは?と120センチほどの苗木を鉢にいれて飾り、クリスマスの後で庭に植えたのが数年前のこと。またつぎのクリスマスに掘り返してツリーにできるし、とてもいいじゃない!と気軽な気持ちで植えたのです。
 毎年ぐんぐん大きくなっていき「立派になった~」なんて喜んでいたのですが、今年掘り返してみようと思ったらあまりに大きく、根が広がっていて、掘り返せないかも?!掘れても部屋に入らないかも?!という事態が発生……。

 夫と息子が力を合わせ時間をかけて一生懸命掘り返し、なんとかかんとか鉢に移し、部屋に運びいれてみると。
 ほんとうに天井ぎりぎりいっぱいの大きさで、なんとか今年のクリスマスツリーが無事に飾れたのでした。
 ぎりぎりでセーフ、だったツリーはラッキーでしたが、思いついたら即行動してしまいがち、予測したり計画的に動くのが苦手な我が家ではギリギリでアウト……!ということも多々巻き起こり、その都度気力体力時間を費やしやり直したりすることに(なんせバスルームは4回目の改装ですし……)




 失敗することでしか得られないこともたくさんある。
 このブリコラ的あり方こそが、家族のあり方だ!と常々思ってはいるのですが、もしかしていつまでも同じようなところをぐるぐるし続けているだけなのかなあ?こんな感じで本当にこの先大丈夫なんだろうか?と、俯きたいような気分なることも多かった数ヶ月でした(妊娠中で気持ちが揺れやすいのもあると思いますが)
 ですが、うまくいかないことが多発していても
 「もう一回やればいいだけ」
 「希望しかわかない」
 「失敗したから、これができたね」
 等々、つねに前向き肯定的な言葉しか出てこない夫に、彼がそういう人間だとはわかってはいても、改めて驚嘆した数ヶ月でもありました。
 そして、もともと悲観的でネガティブな真逆の性質をもっていたわたしも、以前だったら塞ぎ込んでいただろうことが起きた時、一瞬俯くくらいで、またやっていこう!と思えるようになっていたことにも気付きました。

 ぱっとは目に見えるかたちじゃなくても、小さく、でも確かにひとつひとつ。
 失敗や、やり直しを繰り返しながら、わたしたち家族はちゃんと望む方向に向かって今も変化を重ねている。
 だからこの先、また予想もしない出来事も失敗も、たくさんたくさん起こるとは思うけれど、きっと大丈夫。
 そう改めて思えたのが、この冬の発見です。
 おそれず行こう!来年も何度だってやり直そう!と(すでに失敗が前提のような気持ちで)
 以前にこのブリコラ連載で紹介した時にはなかった、リサイクルで購入して自分達で藍染めしたソファに座って、天井いっぱいに届きそうなツリーを眺めながら、そんなことを思う今年の12月です。




 というわけで次回年明けに、謎にひっぱりにひっぱったバスルーム紹介が満を持してできる……はずです。

みなさん、よいクリスマスを!




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中村俵太(ひょうた(父/夫)

「HYOTA」として空間デザインを生業にしつつ、中村家のあらゆる『家族』活動のディレクター的立ち位置も。決断力と実行力はあるけど計画や段取りは非常に苦手。人見知り。日本生まれ日本育ちなのに日本語がおかしい。極めて楽天的でポジティブ。家族愛は強いがピントがいつもややずれがち。

中村暁野(あきの(母/妻)

家族や生活をテーマに執筆活動を行なっている。理想を追って突っ走りがち。でもその突っ走りによって人生動かしてきたという自負もあるので、引き続き突っ走る気まんまん。ブリコラ生活の果て2021年夏「家族と一年商店」がオープンし小商店主という予想だにしていなかった人生展開もスタート中。

中村花種(かたね(娘)

繊細で敏感な子ども時代を経て、現在爆発的パワーで家族を圧倒する思春期入り口の13歳。極度の内弁慶だったけれど藤野暮らしの中で壁を越え、自分の世界を築こうと成長中。現在両親のやることなすこと、言うことスベテが気に入らない反抗期真っ只中。

中村樹根(じゅね(息子)

マイペースでごきげんな6歳児。人類みな友達的オープンマインド。恐竜がだいすきで1日の半分、心は恐竜の世界へ。甘いもの大好き。虫歯になりがち。姉とはトムとジェリーのような関係。

バター(うさぎ)

花種さんの膝に飛び乗るすきを常に伺っていた、アメリカンファジーロップのオス。2022年の3月、天国へ...。花種さんの部屋の前の、ユスラウメの木の下に眠っている。



家族カレンダー

中村暁野
定価 1760円(本体価格1600円)
ひとつの家族を自身の家族で取材して制作する雑誌『家族と一年誌 家族』編集長である著者による初めての自著。ブログに綴った5年の間には、たくさんの幸せな日とそうでない日とがありました。「家族」を通して自分と社会に向き合い続けた実験の記録。一日々々のかけがえのなさを感じられる一冊です。


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