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かぞくのブリコラージュ~自分たちで暮らしを作る、日常の発明記~かぞくのブリコラージュ~自分たちで暮らしを作る、日常の発明記~

文・写真・題字/中村家


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チャプター2

その6 ブリコラ家族の子供部屋




 ブリコラで作ったものたちはその後、どうやって使われてきたのか、使われているのか。我が家の現在と共に紹介します。


 6月は、我が家に一大事件というか、記念というか、とにかく忘れられない出来事があった月でした。
 何かといいますと、息子が髪を切ったのです。小さい頃「ぼくママくらいまで伸ばす」と言ったのがきっかけとなり、髪を伸ばしていた彼。親のわたしたちも周囲の人もすっかり息子=ロン毛。というのが大定着していたのですが6歳になり、ついに本人から「切りたい」と申し立てが。そうかそうか…この日が来たのか…!と、知り合いの美容師さんの元へ、カットに行ったのです。赤ちゃんの時からの髪の毛。ですからもう家族総出で押しかけ、全員で見守りました。いつでもどこでも誰にでもベラベラ喋りまくる息子も、神妙に押し黙ったまま、鏡の中の髪が切られていく自分を見つめていました。
 髪を切ったら不思議と、顔がしゅっとして身体もしゅっとして、一気に「少年!」となった息子。息子の初めての自分の選択、自分の決断。そんな大きな出来事でした。
 子どもが本気で決めたことは、親はだまって見守るのみなのよ、と子育て13年目の今、よくよくわかっているつもりだけど、やってきたその瞬間にはやっぱり重く、熱いものが胸に込み上げます。
 子どもである娘や息子と過ごせる時間は限られているんだな、今という時はなんて大切でなんて眩しいんだろう、と思うのです。




 さて、かぞくのブリコラージュ チャプター1の最終回で娘の部屋(小屋)通称「たねちゃんハウスⅡ」を作った時、娘は10歳でした。思春期入口だった娘は2年後の現在中学生・思春期真っ只中となり「たねちゃんハウスⅡ」にはポップスターのポスターや、ティーン向けのメイク用品やらワラワラと並んでおります。ちょっと覗こうものなら「勝手に入るのやめてくれる?!」と鋭く厳しく注意を受けるのですが、なんせ小屋があるのは庭の正面であり、玄関のドアの真隣り。そしてカーテンなし。なので、いろいろ隠したいだろう娘の気持ちとは相反して、今もとってもオープンです。








 中学生になった娘は一人で寝てもらいたいところですが「たねちゃんハウスⅡ」にベッドはさすがに入りそうになく、そして娘も「ねえねえ、高校生になるまでずっとあの小屋にいるわけにはいかないよ?」と、オープンじゃない空間を求めだしている現在…。
 いずれ、遠くないうちに、息子に「たねちゃんハウスⅡ」を引き継ぎ、思春期娘さんのクローズスペースを家の中のどこかに、新たに作り出さねばならなくなりそうです(しかもベッドも入るスペースを…)

 実は、かぞくのブリコラージュ チャプター1を書いた後、たねちゃんハウスⅡの隣に「じゅねくんハウス」を作っていました。
 じゅねくんハウスは、下がガレージで子どもの自転車やキックバイクを収納し、梯子で登っていける中2階があり、アクリルをはめ込んだ透明の天井をつけ、床に寝転がると空が見えるという、なかなか素敵な小屋となる予定でした。





 ですが我が家のブリコラあるあるで、8割方できたね!というところで長らく作業がストップし、でも完成していない「じゅねくんハウス」のちゃんとついてない梯子を子どもたちはよじ登り、大人の想定を越えて天井の上にも登り、天井や窓をつたって隣の木々に飛び移り…。
 ほんとうにたくさんの子どもたちが過ごし遊んでくれた「じゅねくんハウス(未完)」。




 気づけば未完のまま2年たち、大きくなった子どもたちが何人も登って遊ぶにはやや手狭となりました。
 この6月、大枠を残し、床板や梯子を外し、解体された「じゅねくんハウス(ついに未完のままに解体!!)」。
 もと「じゅねくんハウス(未完)」は新たなあるモノに生まれ変わる予定で作業進行中です。




 そして小学生になった少年たちのダイナミックな遊びを受け止められる「新・じゅねくんハウス」も、今度は湖側の庭に作りたいね、と話しているところです。

 子どもたちの「今」が止まることなく、ズンズンと進んでいきます。
 そりゃもう、こわいくらいのスピードで。そのスピードに食らいつくように、わたしたちは「今」の子どもたちに必要なもの、大切なものをブリコラージュし続けます。時に、成長に置いてかれて未完のままのものができようとも、子どもの成長と共に続くブリコラージュは、我が家のもうひとつの子育て記録です。


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中村俵太(ひょうた(父/夫)

「HYOTA」として空間デザインを生業にしつつ、中村家のあらゆる『家族』活動のディレクター的立ち位置も。決断力と実行力はあるけど計画や段取りは非常に苦手。人見知り。日本生まれ日本育ちなのに日本語がおかしい。極めて楽天的でポジティブ。家族愛は強いがピントがいつもややずれがち。

中村暁野(あきの(母/妻)

家族や生活をテーマに執筆活動を行なっている。理想を追って突っ走りがち。でもその突っ走りによって人生動かしてきたという自負もあるので、引き続き突っ走る気まんまん。ブリコラ生活の果て2021年夏「家族と一年商店」がオープンし小商店主という予想だにしていなかった人生展開もスタート中。

中村花種(かたね(娘)

繊細で敏感な子ども時代を経て、現在爆発的パワーで家族を圧倒する思春期入り口の13歳。極度の内弁慶だったけれど藤野暮らしの中で壁を越え、自分の世界を築こうと成長中。現在両親のやることなすこと、言うことスベテが気に入らない反抗期真っ只中。

中村樹根(じゅね(息子)

マイペースでごきげんな6歳児。人類みな友達的オープンマインド。恐竜がだいすきで1日の半分、心は恐竜の世界へ。甘いもの大好き。虫歯になりがち。姉とはトムとジェリーのような関係。

バター(うさぎ)

花種さんの膝に飛び乗るすきを常に伺っていた、アメリカンファジーロップのオス。2022年の3月、天国へ...。花種さんの部屋の前の、ユスラウメの木の下に眠っている。



家族カレンダー

中村暁野
定価 1760円(本体価格1600円)
ひとつの家族を自身の家族で取材して制作する雑誌『家族と一年誌 家族』編集長である著者による初めての自著。ブログに綴った5年の間には、たくさんの幸せな日とそうでない日とがありました。「家族」を通して自分と社会に向き合い続けた実験の記録。一日々々のかけがえのなさを感じられる一冊です。


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