アノニマ・スタジオWeb連載TOP > かぞくのブリコラージュ~自分たちで暮らしを作る、日常の発明記~ もくじ > チャプター2 その5 ブリコラ家族の廊下

かぞくのブリコラージュ~自分たちで暮らしを作る、日常の発明記~かぞくのブリコラージュ~自分たちで暮らしを作る、日常の発明記~

文・写真・題字/中村家


<< チャプター2 はじめに 連載もくじ >>

チャプター2

その5 ブリコラ家族の廊下


 ブリコラで作ったものたちはその後、どうやって使われてきたのか、使われているのか。我が家の現在と共に紹介します。




 前回紹介した玄関から右手にキッチン&リビングの扉、左手に寝室の扉がある我が家。築40年の別荘物件の間取りは玄関も広いけど廊下も広いのです。
 引っ越してきた当初、このムダに広くとられた「廊下」という空間をどう使っていいのかわからず、というか部屋を改装して形にすることで精一杯で、ムダに広い廊下は、各部屋に収まらなかった行き場のない大型家具が置かれている場所になっていました。
 部屋ができても廊下に出る度、投げやりに配置された棚やら椅子やらが目に入り、殺伐とした気分になるのは嫌だなと思いつつも、置かれている棚の中には本やら雑誌やらがずっしり入っていたりもして、気分良く過ごせる廊下にいつかしたい!と思うものの着手するには腰が重すぎる。なので、かぞくのブリコラージュ チャプター1の連載でも手をつけなかった場所でもありました。

 ですが、そんな日々の終わりが突然、やってきました。チャプター1の連載終了から少したった2021年12月。
 思い立ったら即行動。1日だって我慢できない夫・ひょーさんが「廊下全面を天井までのライブラリー空間にする!」と言い出したのです…。「だから、今ある家具は全部解体して庭にだす!」と突然の解体&運搬作業が開始されたのは平日の夕方5時頃だったと記憶しております。



 「え…今?!」とぼやいても、もう一人動き出してしまっている夫を止めることはできないので、子どもたちとわたしが家具や本をエッサエッサと移動させている間、恐るべき速さで板を切り出し、組み立てていくひょーさん…。今日はここまででいいんじゃない?と作業を切り上げ、子どもたちとわたしがベッドに入った後も、ドルルルルルルと廊下からドリル音を響かせるひょーさん…。…。思いついたらできるまで、我慢ができない夫によって翌日には廊下にライブラリー空間が出現していたのでした…。余った板とかつて仕事でつかったランプの傘を使い、本を読むための照明付きベンチまで完成。
 かわりに解体された家具の板やら角材やらが庭の片隅に山となっていましたが。





 さすが、「やるときはやる男、やらないときはやらない男」の称号を持つだけある、と改めて思った出来事でした。
 ちなみに夫に称号を与えたのはわたしです。

 とにかくそんなわけで長く憂鬱な場所だった廊下は、現在ライブラリー&読書スペースとして使われています。
 ライブラリーはチャプター1で作った、「キャンプギアロッカー」につながっているのですが、ギアだけ揃えてろくにキャンプに行かない自分たちに喝をいれるため(?)にこのロッカーを作った後も、やっぱり「キャンプ」にはあんまり行っていない我が家…。





 でも、外で使えるアイテムが色々取り出しやすくなったので、気軽にテラスや庭でごはんを食べたり、お茶をしたりがしやすくはなりました。あえてキャンプにいかなくても、日々ちいさな野外活動を楽しめるようになった、ともいえるかもしれません。

 ちなみにそのギアロッカーには今、釣り用具も並んでいます。息子と釣りをする!とひょーさんが、昨年末から着々と集めているアイテムたちは、春を迎えた現在、まだ一度も使われておりません。
 「やるときはやる男、やらないときはやらない男」のやる、やらない、の境界線は未だに謎。ですが今週末、ついに初めての釣りに行くそうです。




これからしたいこと
 読書空間はできているのに、なかなかなかなかゆっくり本を読む時間がとれていないのが、くやしいところ。これからの季節じわじわ暑くなってくる中、クーラーのない我が家で一番涼しいのはこの廊下でもあるのです。息子も小学生になるこの春〜夏こそ、のんびり読書できる時間を作りたい!そしてわたしが本を読む時間に、ぜひ息子は夫とたくさん釣りに行っておくれよ!と思っています。



<< チャプター2 はじめに 連載もくじ >>

中村俵太(ひょうた(父/夫)

「HYOTA」として空間デザインを生業にしつつ、中村家のあらゆる『家族』活動のディレクター的立ち位置も。決断力と実行力はあるけど計画や段取りは非常に苦手。人見知り。日本生まれ日本育ちなのに日本語がおかしい。極めて楽天的でポジティブ。家族愛は強いがピントがいつもややずれがち。

中村暁野(あきの(母/妻)

家族や生活をテーマに執筆活動を行なっている。理想を追って突っ走りがち。でもその突っ走りによって人生動かしてきたという自負もあるので、引き続き突っ走る気まんまん。ブリコラ生活の果て2021年夏「家族と一年商店」がオープンし小商店主という予想だにしていなかった人生展開もスタート中。

中村花種(かたね(娘)

繊細で敏感な子ども時代を経て、現在爆発的パワーで家族を圧倒する思春期入り口の13歳。極度の内弁慶だったけれど藤野暮らしの中で壁を越え、自分の世界を築こうと成長中。現在両親のやることなすこと、言うことスベテが気に入らない反抗期真っ只中。

中村樹根(じゅね(息子)

マイペースでごきげんな6歳児。人類みな友達的オープンマインド。恐竜がだいすきで1日の半分、心は恐竜の世界へ。甘いもの大好き。虫歯になりがち。姉とはトムとジェリーのような関係。

バター(うさぎ)

花種さんの膝に飛び乗るすきを常に伺っていた、アメリカンファジーロップのオス。2022年の3月、天国へ...。花種さんの部屋の前の、ユスラウメの木の下に眠っている。



家族カレンダー

中村暁野
定価 1760円(本体価格1600円)
ひとつの家族を自身の家族で取材して制作する雑誌『家族と一年誌 家族』編集長である著者による初めての自著。ブログに綴った5年の間には、たくさんの幸せな日とそうでない日とがありました。「家族」を通して自分と社会に向き合い続けた実験の記録。一日々々のかけがえのなさを感じられる一冊です。


アノニマ・スタジオWeb連載TOP > かぞくのブリコラージュ~自分たちで暮らしを作る、日常の発明記~ もくじ > チャプター2 その5 ブリコラ家族の廊下