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かぞくのブリコラージュ~自分たちで暮らしを作る、日常の発明記~かぞくのブリコラージュ~自分たちで暮らしを作る、日常の発明記~

文・写真・題字/中村家


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チャプター2

その4 ブリコラ家族の玄関


 ブリコラで作ったものたちはその後、どうやって使われてきたのか、使われているのか。我が家の現在と共に紹介します。

 この連載で何度も書いているように「築40年近いバブル期に建てられた元別荘」だった我が家。改装が進んだ今でもそれを一番感じられるのが、この玄関。つまり、ブリコラに一番手こずっている場所が玄関と言えます…。

 玄関ホール入ってまず見える木製スケルトンの階段。高い天井から吊るされた大きなバブリー照明。もともとあったものたちがまだまだ残りつつ、試行錯誤の現在です。





 玄関には、かつて「4階建てバターハウス」が置かれていました。
 かぞくのブリコラージュ チャプター1 その3で作った、うさぎの家。

 現在12歳になった娘が8歳の誕生日にばあばからプレゼントしてもらった、オスの耳たれうさぎ、バター。
 家族が家にいる時は部屋の中で自由に過ごしていたバターが、お留守番の時や寝る時も楽しく過ごせるようにと作った、天井まで届く4階建て巨大ハウスでした。
 上り下りしやすいように階段の高さや幅を工夫したり、掃除しやすいように壁は網にしたり、多分チャプター1で作ったものたちの中で一番工夫したものだったのではないでしょうか。
 わたしたちは「ここちょっと使いにくいから直そうよ」と言葉でやりとりできるけれど、モノ言えぬバターが過ごす家。快適であるように、みんなで考え作ったお家でした。

 バターは2022年の3月、ほんとうに突然、天国へと旅立ちました。バターハウスの1階で、夜の9時半に最後の鳴き声をあげて。うさぎは鳴かない生き物なので、最初で最後に聴いたバターの声でした。

 その後にすぐ、バターハウスを解体しました。4階建てハウスはあまりにも存在感がデカすぎて、からっぽになったことを玄関を出入りするたび痛感するのが辛かったから(そして目にしないようにすることは不可能な場所であり大きさだったから…)

 そしてバターがいなくなってしまって9ヶ月後に、保護犬の子犬「コグマ」が我が家にやってきました。



 子熊、の意ではなく韓国語で「さつまいも」という意味です(娘命名)
 現在我が家の玄関ホールの壁には、リードやハーネスや犬のマナーバッグ、はたまた懐中電灯などのお散歩グッズ一式がすぐに取り出せるフック付きのスペースができています。



 フックにはコグマグッズだけじゃなく、家族分のマイバッグ、マイカップ、マイストローなどのエシカルグッズもかけています。
 玄関に置いてあると出かける時の持ち忘れを防げて良いのです。



 そしてかつてバターハウスが建っていた、まさにその場所にはなぜかストーブが置かれています。 先日庭で使うアウトドア薪ストーブを買ったのですが、置き場所がない…。で玄関に置いてみたら、なんだか不思議と意外と場所にしっくりきている。そして玄関に置いておいたら庭で使いたい!という時にさっと出せるのがいいです。
「外に配管したら玄関でもストーブ使えるよ?」と夫は言ったりもしますが。玄関で薪ストーブは…とくに使いたくはないです。置いておくだけでいいです。


 うさぎと犬では、必要なモノや暮らしやすい動線も変わるものだな、と当たり前ですが感じる毎日です。

 バターは娘の部屋の窓から一番近い庭の土に埋めました。好物だったりんごや、みんなからの手紙、大好きだった娘の枕カバーと一緒に、ふかふかの草でいっぱいにした穴の中に寝かせて、土をかけた場所にはユスラウメの苗を植えました。
 苗が木へと成長して、きっともう数年したら花が娘の部屋から見えると思います。

 部屋を歩くコグマのカシャカシャという足音が今では毎日聞こえています。なんとも愛しい音です。
 でもふっと、聴こうとしたらいつでも、バターの足音も聞こえてきます。
 朝起きて一番に、バターハウスの扉をあげると、4階から大急ぎで駆け降りてくる、あの軽快な足音が(バターは寝る時は4階にいました)
 身体はなくなっても、あの音はいつでも、聴きたいと思った時に聴こえています。

 4階建てバターハウスを作って、ほんとうによかったです。





これからしたいこと
 今の玄関扉をとっぱらって、土間にしたい!そして今は扉の外となっている場所まで壁をつくり、サンルームのような玄関にできたら…と夢は広がっております。



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中村俵太(ひょうた(父/夫)

「HYOTA」として空間デザインを生業にしつつ、中村家のあらゆる『家族』活動のディレクター的立ち位置も。決断力と実行力はあるけど計画や段取りは非常に苦手。人見知り。日本生まれ日本育ちなのに日本語がおかしい。極めて楽天的でポジティブ。家族愛は強いがピントがいつもややずれがち。

中村暁野(あきの(母/妻)

家族や生活をテーマに執筆活動を行なっている。理想を追って突っ走りがち。でもその突っ走りによって人生動かしてきたという自負もあるので、引き続き突っ走る気まんまん。ブリコラ生活の果て2021年夏「家族と一年商店」がオープンし小商店主という予想だにしていなかった人生展開もスタート中。

中村花種(かたね(娘)

繊細で敏感な子ども時代を経て、現在爆発的パワーで家族を圧倒する思春期入り口の13歳。極度の内弁慶だったけれど藤野暮らしの中で壁を越え、自分の世界を築こうと成長中。現在両親のやることなすこと、言うことスベテが気に入らない反抗期真っ只中。

中村樹根(じゅね(息子)

マイペースでごきげんな6歳児。人類みな友達的オープンマインド。恐竜がだいすきで1日の半分、心は恐竜の世界へ。甘いもの大好き。虫歯になりがち。姉とはトムとジェリーのような関係。

バター(うさぎ)

花種さんの膝に飛び乗るすきを常に伺っていた、アメリカンファジーロップのオス。2022年の3月、天国へ...。花種さんの部屋の前の、ユスラウメの木の下に眠っている。



家族カレンダー

中村暁野
定価 1760円(本体価格1600円)
ひとつの家族を自身の家族で取材して制作する雑誌『家族と一年誌 家族』編集長である著者による初めての自著。ブログに綴った5年の間には、たくさんの幸せな日とそうでない日とがありました。「家族」を通して自分と社会に向き合い続けた実験の記録。一日々々のかけがえのなさを感じられる一冊です。


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