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かぞくのブリコラージュ~自分たちで暮らしを作る、日常の発明記~かぞくのブリコラージュ~自分たちで暮らしを作る、日常の発明記~

文・写真・題字/中村家


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その18
たねちゃんハウスⅡ for 娘 後編





思春期入り口が見え隠れする10歳の娘の部屋を作ろう!と庭の一角ではじまった小屋作り。仕事やリフォームの際に出た板や窓枠といっや廃材で小屋も家具も作ろう!と意気込む父母と「フツウの新しい部屋がいい!!」と主張する娘(間で空気を読む息子)。家族みんなで喧々諤諤ぶつかり合いながら、真夏の最中に汗水たらし、ご近所さんまで巻き込んだ一大建設。いよいよたねちゃんハウスⅡ、完成です。










たねちゃんハウスⅡまでの日々 後編
(2021年8月25日~9月21日まで)




8月25日

暑いし、川不足(この夏まだ1回しか行っていないんだもの!)だし、「朝ごはん、サクっと川に持って行ってで食べない?」と誘ったところ「仕事あるし」「宿題あるし」とツレない家族のみなさん…。1人だけノリノリでノってくれた樹根と2人で行くことに。パンやら果物やら川辺で食べて、冷たい水でちょっと泳いで。2人でも楽しかったよ。




8月26日

毎日のようにアイス食べちゃう。こんなにアイスばかり食べてるのはさすがにね…と手作りしてみたり。手作りアイスは甘酒を凍らせるのが好きなんだけど、久々に絹豆腐で作ったアイス食べたら、うん。非常に美味しかった。




8月27日

春にアメリカから越してきて友達になった家族と、近所の友人家族と、3家族で夕方ごはんを持ち寄って川集合。花種さんはアボカドの春巻きをもらって、苦手だったアボカドが好きになった模様。一緒にごはんを食べながら自分とはちがう食文化とか、その人が大切にしていることを知れるのって、ありがたいことよね。




8月28日

ブリコラ農園のトマトがタワワ。花種さんの学校の保護者が行う大掃除。暑くて暑くて、マスクがつらい…。学校は始まるんだろうか?




8月29日

たねちゃんハウスⅡの制作日。小屋の大枠は建ったけど、屋根と壁の間が15センチくらい空いてるところがあったり、ドアのパーツもないし、まだまだここから(夏休み中に完成はとても無理だった…)。室内は白!がいいっていうので、ペンキを混ぜて「いい感じの白」で塗り塗り。




8月30日

あと2日で学校だっていうのに、朝まったく起きれない家族のみなさん。あと2日は休みだから、いいのか。早起きは新学期からで。




8月31日

休み最終日の夜、宿題の追い込みを行う花種さんよ…。しかも地理で担当する県の歴史を調べ、その上で感じたことを書く、みたいな大モノ残していたとは…。花種さんの担当は福島と岡山。本に書いてあった2005年の人口と2021年の人口を比べると福島は大幅に減っていた。22時すぎ、ようやく宿題終了!




9月1日

子どもたちは久々の学校&保育園。でも11時すぎにはもう帰ってきた…。お昼は庭のトマトのパスタ。トマトも枝豆もまだまだとれる。そろそろ秋野菜の準備をしたほうがいいんだろうけど、夏野菜がまだまだとれる。どうしたものかな。




9月2日

8月にオープンした我が家のちいさ~~なお店、「家族と一年商店」。発送やサイト更新、撮影などなど、慣れないことギャーギャーやっています。
藤野の竹おじさん作の竹籠は、ものすごい人気商品でサイトにアップした瞬間に売れてしまうので、ひょーさんと「おおお…」とドヨメイテます。必死に商品集め、写真とり、アップした!やったぞ!と思って改めてサイトみてみると「商品数、少な!!この店やる気あるのって感じだよ、コレ」って、ひょーさんとドヨメイテいます。はい。一歩一歩がんばりましょう。



9月3日

朝、たんぼの見回りに行ったら一部の稲が風でなぎ倒されてた。田んぼメンバーに連絡。急遽みんなで稲を立てる作業。無事立ち上がってよかったよかった。




9月4日

ご近所のアキト、6歳バースデーということで、花種さんと樹根がプレゼント用にきなこクッキーを作っていたら、ご近所のウタちゃんとジャスミンが「あそぼーー」と来たのでみんなでクッキー作り。我が家はきなこクッキー製造所と化し、大量のきなこクッキー焼けました。


9月5日

先月大好評だったお隣に住むVIKAのかき氷やさんin我が家。コロナでお店ができなくなったVIKAが自家製かき氷シロップをいっぱい持ってきて、かき氷を振る舞ってくれるという会。第2回が開催されて、今回はチャリティーのドネーション式で、売り上げは犬や猫の保護団体に寄付するそう。VIKAはリトアニア出身で、リトアニア後と英語とロシア語と日本語がちょっぴり、できる。わたしはカタコト英語しかできないので、カタコトの会話なんだけど、VIKAと話するのはなんだか楽しいのよね。みんなでまた、かき氷を食べた。



9月6日

なんだか急に寒かったり変な天気。樹根に靴下を履かせたら「そんなつめたい手でやめてよン」と言われた。そう、わたしの手が冷えるほどになんだか寒いのよ。



9月7日

「家族と一年商店」の発送に追われる中、ひょーさん「のんちゃん、今日晴れるっていってたのに~!雨じゃん!」と嘆いており、そんなことわたしに言われましても。わたしも天気予報を見ていただけですし。



9月8日

「あつぼったい気分だから音楽かけて」と花種さん。厚ぼったい気分を変えるにはBTSしかないね!そう、家族でBTSに魅了されている我が家。家族で。全員で。BTSはすごい…と世界中の人が胸高ぶらせているように、我が家も胸高ぶらせております。グッズがほしいらしい花種さん。手作りでバッジ作ってくれました。



9月9日

樹根をお迎えしたらライ麦のネックレスと、ちいさな花束を持っていた。先生の誕生日だったそうで、先生から「お裾分け」のプレゼントだったんだって。園の庭で育てたライ麦と花で作った素朴なプレゼントを見て、なんだかにハッとする。ささやかで、素朴で、あたたかい。過剰で情報過多で刺激的な、そんなものが溢れすぎてる自分の暮らしに気づかされて、ハッとする。ささやかな音や、ささやかなものにも、耳をすまし目を凝らしたい。



9月10日

韮崎にある量り売りのお店「仲沢商店」へ、ひょーさんと車で行く。「家族と一年商店」は量り売りの買い物推奨したく、オリジナルの瓶も作った(販売もしてます)。可愛い瓶があると、量り売りもより楽しくなるし食材ストックも楽しいし。と自店舗の製品で量り売りの買い物してみました。そして、ブリコラージュで作ったフィロソフィーストッカーに並べてみました。可愛いじゃない。楽しいじゃない。と、このように自分で暮らしを盛り上げるの、大事よね。



9月11日

晴れたし、たねちゃんハウスⅡ追い込み追い込み~。と、花種さんとひょーさんは室内、わたしと樹根は室外の壁を塗って塗って、とにかく塗るよ~。



9月12日

「作るのはいやだ」と言い続けた花種さんに、「まあまあ、見なさいって」と、ひょーさんなだめたり説得したりして、なんとか部屋の壁に沿ってぴったりサイズの机を作ることに。しかし作業の間も「こんな汚い板ほんとやだ」などなど納得がいかない花種さん。家族に漂う険悪度はピークを迎え、一発触発どうなるどうなる…というところで、ご近所のみづだんが「手伝いたーい」と来てくれて、、誰も噴火することなく無事に作業終了…!



9月13日

金木犀の香りがする。夜なんだか眠れなくって眠くて仕方ない月曜日。



9月14日

6月7月と我が家に居候して音楽制作していたちぇるさんが遊びに来て、週末まで泊まっていく予定。藤野で作ったレコードがもうすぐ刷り上がる。なんと、「花の種」と「JUNE」という曲も収録されている!



9月15日

アノニマ・スタジオさんから出版される、わたしの初めての本作りが今8合目というところ。制作の終わりが見えてきて涙ぐみそうになったりする。今涙ぐんでいる場合ではないので、あとちょっとウンショウンショとのぼる。



9月16日

花種さんはBTSをきっかけにして韓国に非常に興味高まり、韓国語を勉強しだしている。そして学校ごっこ風に樹根にも教えたりしている。自分もまだ少ししかわかっていることがないと思われるのに、なんだか「教える」という行為が上手な花種さん。



9月17日

アノニマ・スタジオの村上さんと打ち合わせ。本の帯のことで色々悩んでいたのだけど、わたしの希望に対して向き合ってくれる出版社さんの姿勢に心震える。誰かとものをつくることの喜びに心震えてる。あ、涙ぐんでる場合ではないない。



9月18日

土曜日なので(?)花種さんがご近所のみづたんと「みづたねカフェ」をしてくれるというじゃない。こういう時は2時間くらい待たされるんだよなーと思ってたら、予想通り2時間後部屋に案内されました。カスタードクリームで飾ったココアケーキ、コーヒー、温めたミルク、テーブルセッティングまでしてくれて、ちぇるさんは感動しきりだった。



9月19日

残暑厳しい中、たねちゃんハウスⅡの制作もクライマックス。屋根部分をインパクトで止めたりなど細かな仕上げにも入りつつ室内のテーブルのサイズで揉めに揉め、こちらも壁にぴったりサイズで作ろうという棚のサイズでも揉めに揉め…。提案のスベテに一旦「そんなのヤダ」で返してくる花種さんに、ひょーさんも「もう!いいよ。いつかパパが死ぬ時に、パパはたねちゃんのために家のこと一生懸命考えてくれたなって思ってくれたら、それでいいよ!!」と叫んでおり、現場は壮絶。



9月20日

ついについに…スベテの家具も作り終え、室内に入れ、ドアもつき、電気も開通(?)し!たねちゃんハウスⅡが完成…!日曜日に完成できず、週のしょっぱなの月曜日から帰宅後に仕上げ作業で寝る時間は大幅に遅れているけども、2ヶ月越しの完成。あんなにヤダヤダ言っていた花種さんも、鼻の穴膨らませて嬉しそうじゃない。引越し(荷物などを部屋に運び入れる)は、明日!



9月21日

そして、わたしの本『家族カレンダー』の制作も、いよいよクライマックスを迎えております。ずっと向かい続けてきたものが遂にできそうというこの時に、作ることは、ずっとわたしを支えてくれているんだって思う。
どーしようもないような、どうにもできないことも毎日たくさんあるけども、何かを作ることが、いつだってわたしの世界をいつだって少しだけ良い方に変えてくれてる。
無事荷物運び入れも終え、たねちゃんハウスⅡで過ごしている花種さんを覗き見してみた。彼女らしい部屋ができたんじゃないかしらって嬉しくなって、机に向かう花種さんに「たねちゃん、めちゃくちゃいい部屋だね!」と声をかけてみた。「うん。」って、弾む返事が返ってきて、嬉しいな。嬉しいね。





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中村俵太(ひょうた(父/夫)

「HYOTA」として空間デザインを生業にしつつ、中村家のあらゆる『家族』活動のディレクター的立ち位置も。決断力と実行力はあるけど計画や段取りは非常に苦手。人見知り。日本生まれ日本育ちなのに日本語がおかしい。極めて楽天的でポジティブ。家族愛は強いがピントがいつもややずれがち。

中村暁野(あきの(母/妻)

家族や生活をテーマに執筆活動を行なっている。理想を追って突っ走りがち。でもその突っ走りによって人生動かしてきたという自負もあるので、引き続き突っ走る気まんまん。ブリコラ生活の果て2021年夏「家族と一年商店」がオープンし小商店主という予想だにしていなかった人生展開もスタート中。

中村花種(かたね(娘)

繊細で敏感な子ども時代を経て、現在爆発的パワーで家族を圧倒する思春期入り口の13歳。極度の内弁慶だったけれど藤野暮らしの中で壁を越え、自分の世界を築こうと成長中。現在両親のやることなすこと、言うことスベテが気に入らない反抗期真っ只中。

中村樹根(じゅね(息子)

マイペースでごきげんな6歳児。人類みな友達的オープンマインド。恐竜がだいすきで1日の半分、心は恐竜の世界へ。甘いもの大好き。虫歯になりがち。姉とはトムとジェリーのような関係。

バター(うさぎ)

花種さんの膝に飛び乗るすきを常に伺っていた、アメリカンファジーロップのオス。2022年の3月、天国へ...。花種さんの部屋の前の、ユスラウメの木の下に眠っている。



家族カレンダー

中村暁野
定価 1760円(本体価格1600円)
ひとつの家族を自身の家族で取材して制作する雑誌『家族と一年誌 家族』編集長である著者による初めての自著。ブログに綴った5年の間には、たくさんの幸せな日とそうでない日とがありました。「家族」を通して自分と社会に向き合い続けた実験の記録。一日々々のかけがえのなさを感じられる一冊です。


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