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05 京都の夏、祇園祭へようこそ。



祇園祭の山鉾巡行。「動く美術館」とも言われる
コンコンチキチンが聴こえたら
京都の夏、

祇園祭

です。
7月になったとたん、
街中に祇園囃子が流れて、浮き足立ちます。
山鉾巡行(やまほこじゅんこう)で知られますが、
祭りはその日のみならず。
ひと月にわたって、さまざまな行事がつづき、
7月いっぱいまるっと、祇園祭! 
毎年見たいものもあれば、新しい気づきもあって
見れば見るほど奥深く、いっぺんには見きれない……
というわけで、隙あれば追っかけ、
7月は勝手に忙しい私です。

*祇園祭
祇園祭は八坂神社の祭礼。 平安時代、疫病を鎮めるため、「祗園社」(現在の八坂神社)で当時の国の数66カ国にちなんで66本の鉾を立て、疫病退散を祈願したのが始まり。祇園祭に登場する「山鉾」は、それぞれにご神体が祀られ、ご利益があると言われます。鉾先に大長刀をつけ、疫病邪悪をはらうとされる、長刀鉾をはじめ、いずれも絢爛豪華。3日間にわたる宵山では山鉾町にて懸想品が展示され、間近で鑑賞できる。ハイライトの山鉾巡行では、京都の中心街を山鉾が巡り、無病息災が祈願される。


7月7日、祭りの無事を祈願する「吉符入(きっぷいり)」に始まり、
7月31日、

八坂神社

の摂社「

疫神社

夏越祭(えきじんじゃなごしさい)
」まで
非公開の行事もありますが、見物できたり、参加できたり。
1966(昭和41)年より同じ日にいっぺんに行われてきた山鉾巡行ですが
2014年、千年以上にわたって継承されてきた慣わしに戻し、
前祭(7月17日巡行)山鉾23基と、後祭(7月24日巡行)10基にわかれて
行われるようになって、さらに見物できるチャンスが広がりました。


山鉾の組み立ては通りで行われ、思わず見入る
山鉾巡行に向けて、山鉾町では
山建(やまた)て、鉾建(ほこた)てがはじまり、
山鉾が組み立てられます。
釘を使わずに職人たちが縄だけで組み立てる。
その様子を通りすがりに、
日常の中で見ることができます。

小学生のとき、長刀鉾(なぎなたほこ)が建てられていくのを見て、
母がほろりと涙したことがあります。
なんで泣いたのかわからず、
弟とふたりして笑っていたのですが
大人になった今はよくわかります。

人の手でつくりだされるうつくしさ、
受け継ぐ人たちのゆるぎなさ、
時代が変わっても変わらない美意識、祈り……
言葉やウンチクでなく、
まっすぐ心に届くものがある。
本物ってこういうことかと思います。

宵山は提灯が灯ってきれい。山鉾をめぐってそぞろ歩く
山鉾が建つと、()()めがあります。
本番に向けたいわばリハーサルで、
巡行以外で山鉾が動くのはこのときのみ、
しかも、だれでも参加できるのです!

実際に、

長刀鉾(なぎなたほこ)


菊水鉾(きくすいほこ)

の曳き初めに参加したのですが、
みんなで引っ張る綱はぐっと重く
自分の力が加わって、鉾が動くと、もう感無量です。
電線が張られた細い通りを進むのが
いかにたいへんか、
スケール感も身をもって感じられます。
曳き初めに参加すると1年間、
無病息災でいられるとも言われます。
山鉾によって日程は異なるので、都合が合えばぜひ参加してみてください。

お迎え提灯は、神輿洗の神輿を迎える提灯行列。
鷺踊や小町踊のみなさんが練り歩く。
そして、数多い見どころの中でも
私が愛してやまないのが、鷺踊(さぎおどり)

鴨川

の水で清める「神輿洗(みこしあらい)」の神輿を迎える
7月10日の「お迎え提灯」、
7月24日の「花傘行列」で出会えます。

お迎え提灯では、八坂神社で鷺踊を奉納。
鷺に扮した女の子たちが羽根を広げて踊る姿が
たまらなく愛らしくて、
毎年見に行かずにいられません。
毎年見たいものがあると、
ぐんと祭りが身近になります。


保昌山は、命がけで紫宸殿の梅を届け
和泉式部との恋を実らせた、平井保昌が祀られ
縁結びのご利益があるとされる
山鉾巡行前の3日間にわたる、
宵山ももちろん楽しい。
山鉾では厄除の(ちまき)が授与され、

保昌山(ほしょうやま)

は縁結び、

太子山(たいしやま)

は学問成就……と、
ご利益もさまざま。
搭乗できる山鉾があったり、
お囃子がお披露目されたり、
界隈の人気店も屋台を出したり、
人出は多くとも繰り出してしまいます。



御朱印をいただくのも楽しみのひとつ
私が祇園祭にはまるきっかけになった、
御朱印集めも宵山のおすすめです。
志納料は100〜300円ほどで、
山鉾ひとつひとつめぐって押印していきます。
すべてまわるには体力と根性がいりますが、
コンプリートしたときの達成感たるや!
お目当てがあるとめぐるのもおもしろくなります。


祇園祭はハレの日。
そのひと月ほど前、晩ごはん帰りに山鉾町を歩いていると、
練習するお囃子が聞こえてきて、足がとまります。
お祭りを支える人たちがあって、この日がある。
毎日の積み重ねの先に、お祭りがあって、無事に夏を迎えたありがたみを感じる。
夏の京都はこたえる暑さですが、ぜひいらしてください。




京のおやつ


祇園祭のお菓子
祇園祭にちなんだお菓子があって、これまた楽しみです。菊水鉾は宵山に茶席が楽しめ、亀廣永の「したたり」がいただけます。黒砂糖の甘味がすっきりと品良く、涼やかな琥珀色の寒天菓子。通年ありますが、やはり夏に食べたくなります。1年に1度、7/16だけ販売されるお菓子もあります。後祭に登場する、役行者山(えんのぎょうじゃやま)にちなんだ、柏屋光貞の「行者餅」。白味噌餡と求肥がクレープのような薄皮で包まれ、ピリッと山椒が香ります。当日は行列ができるので手に入ったときはうれしく、ありがたく、無病息災を願いながら家族と大事に味わいます。

著者プロフィール

宮下亜紀(みやした・あき)

京都に暮らす、編集者、ライター。
出版社にて女性誌や情報誌を編集したのち、生まれ育った京都を拠点に活動。「はじめまして京都」(共著)のほか、「イノダアキオさんのコーヒーがおいしい理由」(イノダコーヒ三条店初代店長 猪田彰郎著)、「絵本といっしょにまっすぐまっすぐ」(メリーゴーランド京都店長 鈴木潤著、共にアノニマ・スタジオ)、「雑貨店おやつへようこそ 小さなお店のつくり方つづけ方」(トノイケミキ著、西日本出版社)など、京都の暮らしから芽生えた書籍や雑誌の編集を手がける。
www.instagram.com/miyanlife/


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