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虫と仲良く!

前回の「種を蒔こう!」から、
夏が過ぎ、秋になりました。

皆さんのお庭やベランダの緑は、
どんな夏を過ごしましたか?

私は新しい命を授かり、
真夏のとても暑い日に息子が産まれ、
ここ数ヶ月はほとんど庭に出ることもなく
眺めるだけで終わってしまいました。

それでも緑の生きる力はとても強く、
私が手をいれなくとも元気に実り、
楽しい様子を見せてくれました。

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ミニトマトのポモドーロは
10月に入ってもまだ実をつけています。

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酢漬けにして楽しんでいます。

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沖縄野菜の四角豆は秋に入っても勢いが止まらず、
二階の窓際で花を咲かせ、新しい実をつけています。

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こちらは庭の入り口に作ったゴーヤのトンネル。
一番の最盛期はちょうど出産の時期で、
いくつも収穫を逃してしまったのが残念です。

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ハーブも元気です。
特に、夏には他の緑の勢いに負けて
存在感のなかったタイバジルが、
秋に入ってからきれいに咲いたことが印象的でした。

けれど、いつもと違う様子の部分もあります。
それは虫に食われた葉が、例年に比べて
とても多かったということです。

何故か。理由は簡単です。
私があまり庭に出られなかったから。

虫って人間に比べてとても小さいですよね。
つまり虫から見たら、私達人間は、
とても巨大で、怖い存在なのです。
だから、人が頻繁に出入りしている場所には
あまり虫がつかないものなのです。
これは長年、実体験して感じて来たことです。

ガーデニングや庭作りを楽しみたいけれど、
虫が苦手!という方も多いと思います。

けれど虫との付き合い方は
そんなに怖くて、大変なものではありません。
怖がっているのは、きっと虫のほうですよ!

今回はそんな苦手な方が、少しでも気が楽になるように
虫との付き合い方についてお話したいと思います。

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●虫の定義

例え小さな庭であっても、ベランダ菜園であっても、
緑があれば、どこから虫がやって来るのが普通です。
それが自然で健康的な姿だからです。

虫が嫌いな人はついつい
虫にばかり目が行ってしまいますが、
彼らは生態系のごく一部であり、また
彼ら無しでは生態系が崩れてしまう、
自然界の大切なメンバーです。

土を分解する微生物がいて、
そこに根を張り、育つ植物がいます。
植物を食べる虫がやって来て、さらに
その虫を食べる肉食の小動物がやって来ます。
さらにはその小動物を食べる大きな動物が存在します。
動物達が排泄をすると、それらは分解されて
また土に戻っていきます。

そんなサイクルの中で、虫もきちんと役割を果たし、
立派な活動をしているということなのです。

害虫、そして益虫という言葉がありますが、
これは人間から見て、悪さをする(役に立たない)、
いい事をしてくれる(役に立つ)と
勝手に判断して分けてしまっただけのこと。
本来は皆、同じ立場にいます。
害虫だって好きで悪さをしているわけではありません。
その害虫を好んで食す虫や小動物もいるわけで、
決して役に立っていないわけではないのです。


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●虫を寄せ付けない方法


理屈ではわかるが、
できれば虫の少ない庭にしたいと
思う方が多いことと思います。

しかし前述の通り、
全く虫を寄せ付けない方法というのは存在しません。
虫がいないことのほうが不自然だからです。

けれど、虫の大発生を予防したり、
人にも虫にも快適な庭にすることはできます。


1)植物の見回りをする

今年の我が家の庭は、
虫に食べられてしまった葉っぱをよく見かけました。
私が出産の前後、ほとんど庭に
出られなかったからです。

虫だって、自分が生き伸びるために、
きちんと頭を働かせています。
人の手がよく入るところには、
寄り付かないものです。

毎日、お水をあげるときに、
植物の葉っぱや茎を触ったり、話しかけたり、
植物の調子をよく観察してみてください。

しっかり見回りすることで、
不思議と虫が集まらなくなってきます。

以前、小さなアパートのテラスで
虫の付きやすい紫蘇を育てたときのこと。
プランターを二つに分け、
一方はお水をあげるときにきちんとチェックし、
一方はお水はあげるけれど、ほったらかしにしていました。

するとどうでしょう。
見事に虫はほったらかしの紫蘇に集中し、
葉っぱをもりもりと平らげ、穴だらけとなりました。
ところが、きちんとチェックしていた紫蘇には寄り付かず、
全くの無農薬でとてもきれいな葉を収穫することができました。


2)ゆとりを持って植える

緑が好きな人は、
限られたスペースとわかっていながらも、
ついついいろんな種類に手を出し、
増やしてしまうものですよね。

かく言う私もそうなので耳の痛い話なのですが、
虫を大発生させたくなかったら、
ゆとりを持って植えることです。

いろいろな植物がひしめきあっていると、
風通しが悪くなり、蒸れます。
それだけでも虫が活動しやすい空間となるのですが、
そういった場所ほど、手入れが面倒になり
ほったらかしにしてしまうのも事実。
結果、虫が大発生という事態を招きます。

植えるときから、風が通るよう、
そして手入れしやすいよう導線を考え、
ゆとりを持って植えてみましょう。

また、植物はどんどん大きくなりますから、
その都度、剪定をすることも効果があります。

特に梅雨時には、雨を受けてぐんぐんと成長するので、
梅雨の晴れ間には剪定を心がけています。


3)いろんな種類の植物を植える

同じ種類の植物ばかりを植えていると、
その植物を好きな虫ばかりがやって来ます。
大好物なのですから、彼らを止めることはできません。

天敵がいないので、彼らはどんどん増えていきます。
大発生となり、植物もやられることがあります。

けれど、違う品種の植物が近くにあれば、
その違う品種を好きな違う虫がやって来ます。

その虫が天敵であることも多々あり、
お互い捕食しあってくれることになります。

自然界のサイクルのごく一部だけを抜き取って、
虫も寄せ付けず育てたいというのは無理な話です。
ならば意識していろんな種類を植えたり、寄せ植えも利用して、
バラエティーに富んだ内容になるよう努力してみましょう。

また雑草を抜いてしまわず、育てることでも種類が増えます。
雑草というのも、人間が勝手に定義しただけのことなので、
彼らも立派な植物。使わない手はありません。
(詳しくは第3回の雑草と仲良く!を参照してください。)

小さいながらもそこに自然なサイクルが生まれると、
不思議なくらい虫の大発生が少なくなります。
私はこれを一番大切にしています。

4)コンパニオンプランツ

植物の中には、特定の虫を寄せ付けないという
作用を持つ植物があります。
代表的なものとして、マリーゴールドがあります。
センチュウを駆除する他、その他の虫にも効果があります。

また、植物の組み合わせによっては、
虫の害を予防するうえ、成長を促し、
野菜などの味を良くしてしまうという
素晴らしい組み合わせもあります。

例えば、バジル×トマト、
ナスタチウム×キュウリ、タイム×キャベツなど。
これらはコンパニオンプランツと呼ばれています。

コンパニオンプランツについて詳しくは割愛しますが、
自然のサイクルを乱すことがないので、
試してみる価値は多いにあります。

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5)鳥を呼ぶ

鳥は虫を好んで食べます。
鳥を呼び寄せるというのも効果的です。

我が家の庭にも、自然な虫退治の為に鳥を呼ぶべく、
餌の少ない冬場にひまわりの種などを置き、
定期的に訪れてもらうようにしていました。

結果、毎年春にはネキリムシの被害に
頭を悩ませていたのですが、今年は皆無。
鳥が食べてくれたようです。

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●それでも発生してしまったら


虫には虫の事情があるので、
こちらがいろいろと頑張っても
発生してしまうことはもちろんあります。

そんなときは焦らず、
ここまでならできるという自分の範囲内で
対処してみることにしましょう。


1)手で取る

抵抗がある方も多いと思いますし、
私自身もほとんどやらないのですが
一番手っ取り早い方法です。

虫の中には、毒刺毛という
ドクガを持っているものもいますので、
素手ではなく、ゴム手袋をしたり、
枝ごと鋏で切ったり、割り箸でつまんだりしてください。
虫はビニール袋やペットボトルの口を近づけて
その場で入れてしまうと処理がラクです。


2)ナチュラルなスプレーを使う

酢、木酢酢、石鹸、コーヒー、
ニンニクや唐辛子を漬け込んだものなどは、
それらの匂いなどにより、虫を退治する効果があります。

但し、天敵である虫をも退治してしまうので、
使い過ぎには注意します。またスプレー後に日光に当ると
葉が焼けてしまうことがあるので、夕方に使います。

簡単に作れるものを紹介します。
石鹸スプレー:水 2.5リットル、食器洗い洗剤 大さじ1
→アブラムシなどやわらかい体の虫の退治に効果があります。

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こちらはアケビの新芽についたアブラムシです。
これぐらいなら手で取り除いても。

ニンニクと唐辛子のスプレー:水 1.25リットル、ニンニク 1個、
唐辛子 8本、食器洗い洗剤 少々
→ニンニクと唐辛子を粗みじん切りにして水に一晩浸し、
茶こしなどで漉します。虫が植物を食べないようにする
効果があります。


3)見守る

虫が大発生してしまって、
葉っぱをもりもりと食べられてしまっても、
その植物が枯れてしまうことは稀です。

もし見つけてしまったら、見守るというのも一つの手です。

理由の一つは、大発生しているなら
その虫を食べたい別の虫がやって来る可能性があるからです。
気づけば、自然消滅しているかもしれません。

もう一つの理由は、虫は常に天敵に狙われていて、
その多くが短命であるからです。

虫を見てしまったときには、
嫌な気分になるかもしれませんが、
それは一年の内、わずか数日のことかもしれません。
それなら、見守る、いや、見過ごしてあげても
いいのではないでしょうか。

我が家の庭のフェンネルには、毎年、
たくさんの青虫君がやってきます。
アゲハの幼虫です。

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ひとつのフェンネルに、気づけば
20匹もついていたことがあります。
よっぽど美味しいのでしょう。
もりもりとフェンネルの葉や実を食べていきます。

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金柑や山椒の木にも他の種類のアゲハの幼虫が住み着きます。
よく見てみると皆かわいい顔をしているのですよ。
立派なアゲハになっておくれよ!といつも応援しているのですが、
未だかつて、我が家から羽化してアゲハになった者はいません。
朝見かけても、夕方には全ていなくなっていることもあります。

つまり、天敵に食べられてしまっているのです。
幼虫が成虫になれるのは1%もいないと言います。
100匹見かけたところで1匹も
大人になれないかもしれないのです。

そんな短命の虫達を、わざわざ人間が手を加え、
さらに短命にする必要はないと思うのです。
そっと見守る、見過ごす、でいいのではないでしょうか。

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自然界のサイクルを
好き放題乱してきたのは人間だけです。
せめて小さな庭のほんの少しの虫ぐらい、
好きにさせてあげましょうよ。

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虫退治をしたい方には、
あまり解決にはならなかったかもしれません。

けれど虫は虫なりに、その人生を生きています。

葉を食べられているのを見つけてしまうと、
大切に育てた側としては、悔しい気持ちになりますが、
自分だって大好物を目の前にしたら、
ついつい手を伸ばしてしまいますよね。

少しぐらい分けてあげてもいいではないですか。
といった気持ちで付き合ってもらえたらと思うのです。

もちろん植物も、育てる側の人間も快適なように、
出来る手は打っておくこともおすすめします。
虫と仲良く、そして楽しく庭を作れますように。

参考文献:
ひきちガーデンサービス著『虫といっしょに庭づくり』築地書館 2008年
ローレル・ヴコヴィック著『1001の自然生活術』産調出版 2004年

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