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種を蒔こう!

春がやって来ました。
今年の春は寒さが続いて、桜の開花も遅かったり、
時には雹が降ったりと、不安定な気候でしたね。

そのせいか、我が家の庭の動きも
いつもより遅めのスタートとなりました。

それでも春の芽吹きほど、
楽しくワクワクするものはありません。

冬の間は雪も降り、
こんなに殺風景でしたが、

niwa

ほとんど手をかけていないのに、
春になったら、緑でいっぱいに。

niwa

気温が上がるにつれ、
今年もよろしくねと挨拶するように、
小さな芽があちこちから
たくさん顔を出してきてくれました。


●顔を覚えよう

どんな芽でもかわいいものですが、
出て来た芽が何であるかわかったら
もっと楽しくなるものです。

鉢でもプランターでも、
去年のこぼれ種から出てくるものも多いのです。
冬を越え、また会いに来てくれたと思うと、
愛おしくなりますね。

我が家の庭に、勝手に出て来てくれた芽を
観察してみましょう。

niwa

ルバーブ
赤いしわくちゃの葉っぱが、
まさに産まれたての赤ちゃんのようです。

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トマト
去年のトマトが、
今年植えた絹さやの隙間から出て来ました。
光に向かって両手を広げる姿がいじらしいです。

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ヘチマ
こちらも光に向けて葉を伸ばしていますね。
ボケの木の足下から顔を出しました。

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ヤロウ
ゲジゲジの葉っぱはヤロウです。
去年とほとんど変わらない場所に出て来てくれたので、
すぐに見つけることができました。

niwa

ラムズイヤー
こちらは思っても見ないところから顔を出しました。
けれど産まれたときから、
ふわふわの特徴のある葉っぱなので、
すぐに見つけることができました。

niwa

ペパーミント
たくさんの雑草の中から顔を出したミント。
ちりめんのような葉っぱが特徴です。

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フェンネル
雑草の中からと言えば、あまりに他と調和していて
大きくなるまで見落としていました。
真ん中あたりに見える、ふさふさの葉がフェンネルです。
私が何度も踏んだようで、折れています。ごめんなさい。

niwa

向日葵
レンガとレンガの隙間から出て来ました。
なんて健気なんでしょう。

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向日葵
こんな風に種をかぶって出て来てくれると
わかりやすいですね。
ちなみに周りにはのらぼう菜の芽がたくさん。
細っ葉の芽はフェンネルです。


●種から育てれば

植物の生きる力を借りて、
こぼれ種でどんどん増えていってくれるのが、
私の理想ではありますが、
新しい出会いにもどん欲でありたいと思います。

なので毎年、新しい品種にもトライしています。
今年、トライしたものをご紹介します。

niwa

ワイルド・ロケット(セルバチコ)
ルッコラの原種と呼ばれています。
ノーマルなルッコラは庭のあちこちから勝手に育ち、
今は3代目が芽を伸ばしています。
ワイルド・ロケットはさらに野性味溢れるそうなので、
比べるのを楽しみにしているところ。

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カレンデュラ
葉っぱも花も食べられるというハーブです。
ぷりっとした双葉を出してくれました。

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アーティーチョーク
去年、苗を植えたのですが、
うまく育たなくて、今年は種からトライしました。
本葉が背伸びをしているように見えますね。

niwa

エキナセア
免疫力を高めるというハーブです。
かわいいピンク色の花が咲くのだそうです。
アーティーチョークと少し似ていますが、
こちらは見落としてしまうほどの小さな芽です。

niwa

ツタンカーメン
面白い名前に引かれて、栽培してみました。
さや豌豆の一種です。
紫色のさやがなんとも素敵です。
芽は撮り損ねてしまいましたが、
豆科らしい芽で、最初は
絹さやと区別がつきませんでした。


皆さんも、こんな植物を育ててみたい
と気になるものがあったなら、
ぜひ種から育ててみることをおすすめします。

種から育てる一番のメリットは、
芽の顔を知ることができることです。

来年、またこぼれ種が芽を出し、再会するときにも、
すぐにバジルだ!紫蘇だ!ルッコラだ!
とわかるわけです。
これはとても大切なことだと思います。

雑草だと思って抜いてしまうかもしれません。
でもそれは、あなたにもう一度会いに来てくれた
顔なじみかもしれません。


●種まきの準備

種まきはいくつかのポイントを押さえれば、
とても簡単なのです。
説明していきますね。

1)土の準備

よくある培養土で構いません。
ホームセンターなどにたくさん山積みされていますね。

使い古した土があるなら、
それらは事前に古い根や石ころを取り除き、
大きなビニール袋に入れて、
日光消毒をしておきましょう。
新しい土と半々に混ぜ合わせると蘇ります。

広い庭を持っている方は、ビニール袋に入れて消毒
というわけにはいきませんね。

この場合は、これから植えようという場所を
よく掘り返します。
何かが植わっていたところは、
たいていとても固くなっているからです。
古い根や石ころを取り除き、
腐葉土を混ぜておくと良いでしょう。

そして、どんな形で植えるにしても、
種を蒔く直前にもう一度、
植える場所の土をシャベルでよーく、
掘り返してあげましょう。

こうすることで、土に空気が入り、
根が伸びやすくなります。

また、どんな土が良いのかさっぱりわからない、
という方も多いかもしれませんが、
ひとつの目安があります。

自分の手や足を入れてみればわかるんです。
自分が不快に感じないかどうか、
まずは手をつっこんでみてください。

ふかふかとやわらかくクッション性があり、
ぱさぱさでもなく、じとじと、かちかちでもない
ほんのりと湿り気のある土。
そんな土なら、人間にも植物にも気持ちがいいものなんですよ。

植物達は、自分の力では
いくら気に入らない場所でも、
移動することができません。

ぱさぱさやじとじと、かちかちは、
植物にとっても嫌な環境なんです。
(まれに大好きという変わり者もいますが。
これは人間も一緒ですね。)

だから気持ちよく過ごせるような環境を
最初に作ってあげましょうね。

2)種まきのタイミング

種にはそれぞれ発芽に適した温度があります。
それらは種の袋に書いてあります。

蒔き時が3月〜5月とある場合、
どこでも3月で良いかといったら、そうではありません。
日本は南北に長いですから、住んでいる場所によって気温が違うのは当たり前。
蒔き時よりも、発芽気温に着目しましょう。

あまり急いで早めに蒔いてしまうと、
なかなか芽が出なかったり、
保温する必要があったりと面倒なのです。

こぼれ種は、気温が合うようになると
勝手に出てきます。
このタイミングで種まきをしてあげれば
良いということです。

急がず、自分の住んでいる土地でのタイミングを
しっかり待ってみましょう。


●種を蒔こう

ガーデニングのhow to 本には、
育苗用のセルトレイやポットに種を蒔き、
大きくなるにつれ、移植していく方法が
紹介されています。

もちろんこれは素晴らしい方法なのですが、
結構手がかかり、面倒なものです。

なので、前述の、
気温のタイミングがやってきたら、
育てたい場所に、直播きするのが一番簡単な方法です。

気温が合えば、どんな場所でも
たいていは元気に芽を出してくれますよ。


種の蒔き方は、
種の大きさを見て判断します。

1)ばら蒔き

1粒ずつつまめないような小さなものは、ばら蒔きに。
要は、適当にばらまくということです。

例えば、タイム、マジョラム、カモミール、
ミント、ラベンダーなど。

小さな種なので、まずは重ならないように注意します。

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これはタイムを密に蒔いてしまった失敗例です。
とても苦しそうです。ごめんなさいね。

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先ほどの写真よりは、ほどよくばら蒔かれ、
少し伸びたところです。
もう少し間隔があればベストです。

それから、あまり深く植えると、
小さな種ゆえ、出てこれなくなってしまいますので、
土は薄くかけ、軽く押さえる程度にします。

そして、お水をあげるときには、
小さな種が流れ出てしまわぬよう、
勢いのある水でばしゃーっと、ではなく、
優しく、優しくあげることを忘れずに。

2)すじ蒔き

1粒ずつなんとかつまめるほどだったら、
すじ蒔きにします。

バジル、紫蘇、 ルッコラ、 葉もの野菜、
また移植を嫌うディル、フェンネル、人参などにも
向いています。

指で土にすじを作って、並べていきます。
すじをつけて、盛り上がった分の土を戻して、
軽く押さえます。

こちらも種が流れ出てしまわぬよう、
お水は、優しく、優しくあげましょう。

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こちらはパクチーをすじ蒔きして、
しばらくたったところです。

混み合った部分は、徐々に間引きをして、
大きな株を残していきます。
間引きした小さな葉も食べられますよ。

3)点蒔き

1粒ずつしっかりとつまめるような大きさならば、点蒔きに。
豆類、朝顔、向日葵、ヘチマ、ゴーヤ、
アーティーチョークなどがこれに当ります。
また、大きな株になるもの、
例えば夏野菜なら、トマト、茄子、ピーマン、ズッキーニ、オクラなども、
点蒔きが向いています。

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こちらはポットですが、こんなふうに指で穴をあけて、
1〜2粒入れ、土をかぶせます。

こちらは少々のことでは流れ出しませんが、
やっぱりお水は優しくあげましょう。


いずれの場合も、種は蒔きすぎないようにします。
というのも、種はどれも小さいので、
つい蒔きすぎてしまうことと、
種の袋にはかなりの量が入っているので、
全部蒔き、それらが育つとものすごい量になってしまうからです。

広大な敷地を持って、かつ管理できる方以外は、
お友達と分け合うのが丁度良いと思います。
私も自分の分を蒔いたら、
残りはお友達にプレゼントしています。


●観察する

種まきで一番大切なのは、
実は観察することです。

種を蒔いて放ったらかし、ではなく、
できれば毎日、毎日が無理なら数日に1度でいいので、
ちらりと覗いてあげましょう。

土が乾いていたら、お水をあげる以外は、
何もケアすることはいらないのです。
ただ覗くだけで大丈夫です。

そのうちに、どこからかかわいい芽が
出てくるはずです。

いくつか蒔いたなら、
早く芽を出すもの、忘れた頃に芽を出すもの、
いろいろいるでしょう。

見落としそうなくらい小さな芽もあれば、
いきなりどかんとどでかい顔を出すものもいます。

最初の双葉は何かにとても似かよっていたのに、
次の本葉が出たとたん、ああ君はトマトだったんだね!
とわかるような、がらりと違うデザインの
葉を見せてくれたりもします。

そういった違いを観察することが、とても大切です。

気にして観察していると、
植物の日々の動きが見えて来て、
そうか、こういう風に育っていくのかと
わかるようになります。

そう思えるようになったら、
もうあなたは立派なガーデナーなのです。
いつのまにかたくさんの知識を
身につけているからです。

一年草なら、たった半年の間に、
誕生から臨終までの植物の一生に
付き合うことになります。

あなたは蒔いた種の一生の友というわけです。
これってすごいことではないですか?

来年、こぼれ種が芽吹いたとき、
思わぬところから顔を出しても、
きちんと見つけてあげることだってできます。

再会のときには、去年のことを思い出し、
とても懐かしい気持ちでいっぱいになるはずです。

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気温がだんだんと暖かくなっていくこの季節。
誰でも芽吹きを簡単に楽しめます。
むしろ、すっかり暖かくなっている気温のおかげで、
さっさと顔を出してくれます。

夏野菜もハーブも、今からでもまだ間に合います。
収穫が秋までずれ込むものもありますが、
その分、長く楽しめますよ。

特にハーブは雑草のように丈夫で、
手間がかかりません。
まずは簡単なバジルや紫蘇、ルッコラにでも
トライしてみてはどうでしょう?

気になるものがあったなら、
一鉢だけでもトライしてみてください。
植物に慣れ親しむ絶好のチャンスです。

育ちきった大きな木や苗から始めるより、
種から育てると、不思議と
気になってしまうものだからです。

それらが大きく育ってくれたなら、
自信にもつながります。

その上、葉や実を摘んで、
楽しく美味しく頂けるとくれば、
植物を育てる醍醐味を
堪能できますよ。

思い立ったら吉日です。
春の種まき、そして芽吹きを
思い切り楽しんでくださいね。

参考文献:斉藤吉一著『ものぐさガーデニングのススメ』エクスナレッジ 2008年
木村正典著『木村式 ラクラク家庭菜園』家の光協会  2008年

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