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niwa


夏も終わり、ジャングルと化していた我が家の庭は、
少しずつ落ち着きを取り戻しています。

夏まっさかりの頃は、こんな風に緑が溢れかえって
足の踏み場もない状態でした。

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けれど秋に入り、そろそろ終わりと察したようで、
自主的に枯れたものも多く、
自然にボリューム感が減ってきています。

ところで枯れてしまうと、
どうにもみすぼらしく見えてしまいますよね。
特にグリーンカーテンなどは、
まるでお化け屋敷のような雰囲気になってしまうので、
枯れ始めた途端にすぐに抜いて、
処分してしまう方も多いのでないかと思います。

我が家はそのまんま放置派です。
枯れたら枯れっぱなしにさせます。
見た目は本当にひどいものです。
近所から文句が出やしないかとひやひやするほどの汚さです。

へちまは今、こんな有様です。

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それでもそのまんまにします。
理由は、命を最後まで全うして欲しいこと、
そして土から生まれた緑は、土に戻って欲しいからです。

茶色になり、水分もしっかりなくなってしわしわになった頃、
たいていどこかに種ができています。
彼らは種を残すために、花や実を作ります。
だからその種が土に帰るまでを看取ってあげたいと思うのです。
親心のようなものでしょうか。


私達がいただいている野菜や果物は、
彼らが種を残したくて作る実の、
成長途中の中途半端なものを野菜として、
熟したものを果物として勝手に食べています。
おーい!まだ取っちゃだめだよぅ!
そんな声がいつも聞こえてきます。

野菜も収穫せずに放っておけば、
肥大し、熟し、崩れ、種が土に落ちます。
果物が熟して美味しくなるのは、
野生の動物や鳥に食べてもらいたいからです。
そうすれば種が彼らの糞に混ざり、離れた場所に落としてもらえます。
食べられなかった果物は、熟し、崩れてゆきます。
種を外に出したいからです。
そんな自然の行為を大切にしてあげたいのです。

もちろん野菜も果物も美味しいですから、
私もとことこん楽しませてもらいます。
但し、最後の1個と思われる実は収穫しません。

スイカは今年、2個しかならなかったのですが、
ぐっと我慢して、2個目は放置しました。
丸く膨らんでいた実は、すこしずつしわが出始め、
萎み、茶色くぺったんこになり、
茎から自ら離れ、土の上に着地しました。

スイカは一生を全うしました。
これを見届けてはじめて、
私の任務も終了となるわけです。

それだけではありません。
放置しておくて、この後とってもいいことがあるんです。
勝手に芽が出てくれるのです!
こぼれ種と言われるものです。

種は気温が合わない秋、冬の間はじっと耐えて待っています。
その間に落ち葉や土がかぶさります。
たまに暖かすぎる秋に、間違って芽を出してしまうこともありますが、
気温が合わなくなると枯れてしまいます。

春になり、気温が合ってくれば、あちこちから顔を出します。

これはとってもラクな栽培方法だと思います。
なんといっても勝手に出てきてくれるのですから!
とても合理的な、そしてとても自然な方法と思っています。


今年、我が家に勝手に出てきた緑を紹介します。

去年の9月に今の庭に越してきました。
夏野菜のほとんどは友達にあげてしまいました。
30鉢ほどに分けた木々やハーブを前の家から運び、
いくつかは鉢のまま、大半は地植えに植え替えています。

庭が変わってしまったので、
今年はこぼれ種を全く期待していませんでした。

ところがどうでしょう!
びっくりするくらい勝手に出てくるではないですか!

● トマト

トマトは野菜苗を買って植えるのが一般的と思われていますが、
勝手に出てくるものなのですよ。

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今年は、ラベンダーの鉢の中から出てきました。
気づくのが遅く、そのまま育ってしまいました。
やや見にくいと思いますが、中央にそびえているのがトマトです。

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しっかり実もなりました。

● トレニア

味はあんまりありませんが、食べられる花です。
この花は、前の家では隣接する大家さんの庭の花でした。
時期になると紫色の花が庭一面に広がり、それはそれは見事でした。
どこにまぎれ来んでいたのか、隣の家の花が、
ここ東京でも花を咲かせてくれました。感慨深いです。

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ひとつだけかと思ったら、気づけばこんなにたくさん。

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● ポーチュラカ

多肉植物の仲間です。
まだトライしていませんが、食べられるんだそうですよ。

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この花は、前の家の玄関先に咲いていました。
そのあたりの土を持って来たつもりはないのですが、
ブルーベリーの鉢から勝手に出てきましたよ。

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とても小さな可愛らしい花をつけます。

● メドウセージ

とても丈夫なハーブで、かれこれ10年以上のつきあいです。
引っ越しの度、一緒に連れてきています。
丈夫さに頼って、適当に上部を刈り取り、
根っこ部分だけを持ってきました。
それでもしっかり出てくるんです!

しかもなぜか、庭の3カ所から出てきました。
いつの間に分かれたのでしょう。
ひとつは適当に持ってきた根っこが根付き、
ひとつはレモングラスの間から、
もうひとつはパイナップルセージの間から顔を出しました。

私がメドウセージを適当に扱うからか、
なんとしてでも生き延びてやる!という執念が感じられます。

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ススキのように見えるのがレモングラス。
その間からメドウセージが顔を出しています。

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せつない色の花を咲かせます。


● 向日葵

オータムビューティーという品種です。
色合いが深くてきれいなんです。
こちらも前の家で大きく育っていました。
今年は種まきしなかったのに、やっぱり出てきてくれました。

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たくさんの緑をなんとかかき分け、
斜めに飛び出すように咲いていました。


● ルッコラ

こちらは引っ越してから冬の間に種まきし、
春に葉を食べ、初夏には花をつけ、夏の前に枯れました。
もちろんそのまんま放置しました。
10月にはもう2代目が出てきました。

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小さい葉ながら、すでにとっても美味しそう。


● ボリジ

こちらも引っ越してから種をまき、
春に花を楽しませてくれました。
夏の暑さには弱いので、初夏にはうなだれ、枯れてしまいました。
つい先日、育っていた鉢のすぐ隣に、
地面からにょきにょきと生えてきて、
今年2回目の花を見せてくれました。

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星形の花の形がユニークです。


と、ざっとあげても、
これだけのものが勝手に出てきてくれたのです。
きっと見落としているものもまだあると思います。
この勢いがあれば、来年の春には、
相当数が勝手に出てきてれるはずです。


では勝手に育ってもらうためにはどうしたらいいでしょうか。

1)枯れるまで看取る。

前述したように、人生を全うさせてあげることです。
これにつきます。

枯れたら、そのまま放置するか、
見た目が悪かったら、しっかり枯れたことを確認してから引き抜き、
小さく折ったりして土の上に放置するか、土の中にすきこみましょう。
いい肥料にもなりますし、種も自然に土へ帰ります。

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これは今年のルッコラです。
他の元気な緑の中で、枯れたまま放置している状態です。
全ての株を放置するとあまりにもみすぼらしかったので、
いくつかは引き抜き、いくつかはこうして残しました。

2)実がなるものは最後にいくつか残す。

種が作られ、自然に土に帰ります。
次の時期に勝手に出てきます。

3)種から蒔くときは、在来種、固定種の種を求める。

世の中に出回っているのは、より良い収穫のために作られた
F1という品種の種がほとんどで、これらは一代で終わってしまいます。
二代目となると、芽は出るのですがしっかり育たない、
または実がつきにくいことがほとんどです。
特に野菜はそれが顕著です。

種ができ、それらを採取し、また蒔くという
古くからのやり方ができるのは、
在来種、固定種と呼ばれる種です。


そうして勝手に出て来た緑たちは、
買ってきた苗よりも、ずっと力強く見えます。
緑は芽吹く場所を選べませんから、
芽が出たその場所に適応して、なんとか育とうと努力します。
だからか、少々のことではへこたれない強い子となるのです。

しかもとっても美味しい。
これは苗の力強さのおかげだと思っています。
勝手に出てきたトマトを育てていたら、
前年よりもずっと甘くなった!という経験があります。
これは種が自力で出ることにより、その土地に馴染んだからではないかと
勝手に予測しています。


ところでトマトを育てたことのある方なら、
連作障害という言葉をきいたことがあるかもしれません。
トマトなどのナス科の植物は、同じ場所に連続して植えると、
育ちが悪くなるというものです。

そういった心配もご無用です。
植物とは本当によくできていて、
たいてい種はとても軽く、自分が育ったところから
少し離れたところに飛ばされて着地、そこで芽吹きます。
だから、全く同じ場所からまた出てくるということは
まれなのです。

もし鉢で育てていたら、
同じ鉢から出てくることもあるかもしれません。
その場合は土を変えたり、他の鉢に植え替えてあげましょう。
それで解決です。


まだトマトが実をつけている方もいるかもしれません。
我が家の庭ではまだまだ元気です。
今年はぜひ実をいくつか残してあげてください。
最後の1つの実がひからびて、地面に落ちるまで、
完全に朽ち果てるまで、そのまま放置してみてください

枯れてしまった葉や茎はゴミとして捨てるのではなく、
土に戻してあげてください。

もちろん、種を採取して取って置き、
春になったら自分で蒔く、というのもとても真っ当なやり方です。
本当はそれが一番ですが、なかなかたいへんな仕事です。
私は几帳面ではないので、こぼれ種頼みというわけです。


ともあれ看取ってあげると、
来年きっといいことがあります。
必ず芽を出して、勝手に育ってくれますよ。
庭の思わぬところから! 鉢の思わぬところから!


在来種、固定種の種が買えるところ:
たねの森 http://www.tanenomori.org
野口種苗 http://noguchiseed.com
高木農園 http://takaginouen.com
土苗種の店 畑懐 http://hafuu.hamazo.tv


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